「落ち着け!」と言われて、本当に「落ち着く」3つのヒント
「落ち着け!」と言われて、本当に「落ち着く」3つのヒント
「落ち着け!」と言われて、平常心になる3つのヒント
2アウト満塁、ボールが2つ続きコーチが、投手に近づき、
「落ち着け!」
と声をかける。よくあるシーンです。「落ち着け!」と言われた投手は、本当に落ち着くのでしょうか。いい結果で終わった時は、
「『落ち着け』と言われて、我に返って落ち着いた」
といったコメントが出ます。ところが、打たれたり、四球押し出しだったりの時は、コメントがありませんので、コーチの「落ち着け」と言ったことが効果があったのか、本当のところは分かりません。
スポーツに限らず、実際思わぬピンチに陥ったとき、誰かに
「落ち着け」
と言われて、平常心に戻ることができるのでしょうか。ことによったら、落ち着けと言われて、かえって「ただならぬ事態」と感じて、パニックの度合いが深まることさえあります。
「落ち着け」と言われたとき、平常心になる3つのヒントを紹介します。
1)自分の平常を思い出す
2)1つに集中して行動する
3)「開き直る」
もし、自分がコーチやリーダーであり、メンバーが浮足だったとき、
「落ち着け!」
と言っても、皆が落ち着けるわけではありません。落ち着く「コツ」をメンバーが知っていなければ、効果がでません。また、リーダーが、
「落ち着け。打つタイミングだけ気を付けろ」
「落ち着け。結果は、気にするな」
「落ち着け」の後に、こんな一言を付け加えたら、効果があります。スポーツ、職場、採用面接等々、緊張しパニックに陥りそうな場面で、「落ち着くコツ」、「落ち着かせるコツ」を心得ておくことが、いい結果に繋がる可能性を高めます。
自分の平常を思い出す
動揺している時、
「落ち着つけ」
と誰かに言われても、自分で「落ち着け」と心の中で言っても、「落ち着く」ことは容易ではありません。何度、「落ち着け!」とひたすら呪文のように唱えてもだめです。「落ち着け!」の呪文が効かないのは、「落ち着く」とは、どんな状態かを分かっていないからです。「落ち着く」とは、安定した状態になること、つまり「平常」状態になることです。
「平常」とは、普段の姿です。例えば、野球の投手であれば、狙ったとことに自分のいつもの確率でボールがいくことです。普段狙ったところに60%投げられるのであれば、それが「平常」です。「落ち着いた」からといって、この確率以上を期待しても無理です。逆に言えば、その確率でならば投げることが、出来るはずです。「平均への回帰」という法則があります。沢山やれば、必ず平均に近づくというもので、サイコロを振り続けたら、どの目も1/6の確率で出ます。
「落ち着く」とは、普段の自分の姿をイメージし、普段通りに行動すれば、平均の結果が期待できると思うことです。
例えば、ゴルフで90センチのパット、ボールはカップをかすめて下りの斜面を同じ距離だけ転がったとします。90センチのパットが入る確率は、世界のトッププロでは96%です。つまり、4%しか外さないのに、外したら動揺してもおかしくありません。しかし、次に入る確率も96%ですので、慌てることもなく、大抵入れます。アマチュアだって、プロに比べれば、入る確率は低いですが、次は大抵入るのです。
ちなみに、プロが1.8メートルのパットを入れる確率は66%、3メートルで40%。プロでも、2メートルを超えたら、入らないことが「平常」です。アマチュアが、「パットが入らない」と嘆いたり、動揺したりする必要がないことが分かります。(参考記事:「PGAツアーのパットが入る確率」によれば、60cm 99%、1.2m 88%、1.8m 66%、3m 40%、6m 15%)
1つに集中して行動する
「動揺」して落ち着かないとは、状況に対してどう行動するか混乱し、迷っている状態です。あれも、これもやろうとすると益々混乱が増大します。1つの「やること」に集中することです。スポーツにおいては、その選手が普段気を付けているポイント1つに集中してプレーすることです。
元ヤクルトの古田敦也氏は、少年野球選手の
「緊張して、うまく打てない時は、どうすればいいのですか?」
との質問に
「9回2アウトなどの緊張した場面で打席が回ってきた時、あれこれ考えずピッチャーに打ち返すことだけに集中していました。」
と答えています。
職場においても「落ち着く」ことを求められる場面が沢山あります。例えば、工場で事故が発生したとき、当事者が「落ち着くこと」、「落ち着かせる」ことが、極めて重要です。チーム員もリーダーも動揺して何をすべきかわからず、うろたえることを防ぐ必要があります。一番簡単な「落ち着かせる」方法は、リーダーが各メンバーにやることを1つずつ与えることです。けが人の確認、けが人の搬送、設備の停止、設備の確認等々です。
お客様からクレームの申し立てがあれば、まず先方に事情を聴くことから始まります。
普段から、定常業務以外の状況を想定し、対応策を作っておけば、「落ち着いて対処できます。しかし、想定外が起きるから動揺し、まずは「落ち着く」ことが重要になります。優先順1位のことに集中して行動することで、あとは「落ち着いて」処理できるものです。
「開き直る」と相手が見えてくる
動揺するのは、今の状況に加え、今後の状況に恐怖感を抱くからです。「結果を恐れる」ことが、更なる動揺を誘発しています。「落ち着く」とは、「結果を恐れず、受け入れる覚悟」をもつこと。言い換えれば、「開き直る」ことです。
「この案件を失注したからといって、他がすべてダメになることもないだろう」
「落ち着け。これでクビになるわけでもないだろう」
これは、仕事でうまくいかず、バタバタと動いている私に上司が言った言葉です。開き直ることで、妙に「落ち着いた」経験があります。「落ち着いた」とたん、周りが見えてきます。相手の心の裏まで考えることができました。
動揺しているとき、つまり「落ち着き」を失っているときは、自分しか意識にありません。将棋で言えば、自分が打つ番になっている状況です。「勝つためにどうすべきか」を考え、迷っている状況です。下手な打ち手は、自分の都合で差し手を考えてしまいます。相手は、自分の予想に従って打ってくると決めつけています。そこで、予想外の手を打たれると動揺するのです。そんな局面で、「開き直る」ということは、結果を受け入れる覚悟ができるということです。「負けを覚悟」すると、相手が自分をどう追い詰めようとしているかを考えるようになるものです。(自分の経験で恐縮ですが。)
投手に対して、古田敦也捕手は、
「打たせろ!あとは、野手に任せろ!」
こんな言葉をよくかけたそうです。動揺している投手は、自分のことしか頭にないので、そんな言葉をかけて、落ち着かせたとのことです。
リーダーが、メンバーに「落ち着け」という時、
「結果を気にするな!」
「後は、仲間に任せろ!」
などと、開き直りの為の一言を付けてあげれば、いつもの力を発揮する可能性が高まります。
まとめ
ピンチに陥り浮足立っているとき、「落ち着け」と言われても、皆が落ち着けるわけではありません。落ち着くには、コツがあります。そのヒントが、
1)自分の平常を思い出す
2)1つに集中して行動する
3)「開き直る」
です。リーダーが、「落ち着け」と言うとき、この3つのポイントに関する一言を付け加えることで、いい結果に繋がる可能性が高まります。