3種類の「責任」とは?「自己責任」は、「責任」ではない!
3種類の「責任」とは?「自己責任」は、「責任」ではない!
3種類の「責任」とは?「自己責任」は、「責任」ではない!
「責任をもってやります」
「誰が、責任をとるのだ!」
「俺が責任を取るから、思い切ってやってくれ!」
「それは、自己責任だろう!」
世の中には、「責任」が溢れています。よく使われる「責任」と言う言葉ですが、物事がうまく行かなかった時に使われることが多く、圧迫感の強い言葉です。大辞林によれば、「責任」とは、以下のような説明がされています。
1)自分が引き受けて行わなければならない任務。義務。「―を果たす」
2)自分がかかわった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い。「―をとって辞職する」「だれの―でもない」「―の所在」「―転嫁」
3) 法律上の不利益または制裁を負わされること。狭義では,違法な行為をした者に対する法的な制裁。
これらを英語と対比してみるとわかり易くなります。英語で対比すると「責任」は、以下の3種類です。
1)遂行責任:Responsibility(レスポンシビリティ)
2)説明責任:Accountability(アカウンタビリティ)
3)賠償責任:Liability(ライアビリティ)
いずれの場合においても、相手があっての「責任」です。他者とのコミュニケーションにおいて成り立つ概念です。
ちなみに、「自己責任」という言葉がありますが、英語にすると「own risk」になります。すなわち「危険性(リスク)の負担」であって、「責任」の概念とは違うものです。広辞苑には、「自己責任」という言葉は、載っていません。
職場においては、「責任」を常に意識させられます。「責任」という概念が、他者との間で成立するものであると理解したうえで、対応することが、うまく「責任を果たす」ことになります。
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遂行責任:Responsibility
そもそも仕事をするということは、「遂行責任」を伴います。担当者には、仕事を成し遂げる責任、つまり遂行責任があります。上司であれば、部下に仕事を遂行させる責任があります。様々な困難や変化を乗り越え、当初の目標を達成することが遂行責任です。A案を進めて、だめならB案。それでもだめならC案と達成するまでの行為です。とりあえずやってみる、ではなく達成するまで遂行するのです。
説明責任:Accountability
全ての遂行責任が果たせれば、何の問題も起きません。しかし、うまく遂行できない時に求められるのが「説明責任」です。
遂行責任が、どちらかというと担当者レベルでの「責任の果たし方」であるのに対して、説明責任は、管理監督義務を怠った、あるいは間違った判断・命令を下したという事実への、管理職レベルでの「責任の果たし方」を指していることが多くなります。
説明責任は文字通り、説明する責任です。「なぜ失敗したのか」そして、「再発防止策」などの説明です。
組織が不祥事を起こした時の記者会見は、この説明責任の典型です。担当者が上司への報告もこの説明責任になります。政府や企業が問題を起こしたとき、「責任」が問題になるのは、この「説明責任」のことです。
難しいのは、説明責任を果たしたかの判断は、「相手が納得したかどうか」でするしかない点です。どんなに、論理的に原因と対策を説明しても、相手の感情がこれを受け入れなければ、説明責任を果たしたとは言えません。説明責任を果たすには、3つのポイントがあります。
1)失敗を認める
2)相手の知りたいことを知らせる
3)原因と対策を説明する
失敗を認める
「失敗の会見」でありながら、「失敗を素直に認めていない」と思える会見をマスコミなどで目にすることがあります。いきなり、頭を下げて謝罪し、失敗の原因を述べ、
「二度と同じ失敗を繰りかえすことがないようにします」
と結ぶような会見です。
冷静に聞いていると、失敗を認めず、「言い訳」になっていることがよくあります。
失敗を認めないのは、「非難されることを恐れる気持ち」や「今までの時間や努力が無駄に感じる」などからです。また、原因や対策をその時点で、持っていないと失敗を認めにくいものです。
失敗を認めるとは、処分・批判を甘受し、場合によっては地位や体面を失うことも含まれていますが、失敗を認めることが遅れることで、より説明責任を果たすことが難しくなります。
相手の知りたいことを知らせる
説明責任を果たす相手は、報告する内容によって興味の対象が異なります。5W1Hに従った理路整然とした説明より前に、知りたいことがあります。例えば、事故の場合は、「安否確認」であり、犯罪であれば「犯人」「被害」です。仕事の失敗なら、「迷惑をかけた人」「被害状況」でしょうか。時には、感情的になって
「責任者の社長はいないのか!」
と相手から問い詰められることもあります。この時、どんな事情で社長がいないのか、社長も責任を感じていることを伝えることが重要です。相手が感情的になっているところで、感情的に対応したり、妙に淡々と話をしていては、説明責任を果たすことができません。相手が感情的になっている対象や理由を見極め、対応することが説明責任を果たすことになります。
原因と対策の説明
ことが起きたいきさつなど、原因と対策を説明することが、最終的な説明責任です。しかし、原因と対策は、すぐにできるものではありません。調査や検討する時間が必要です。素直に
「原因と対策は、後日報告します」
でいいのですが、相手に対して「やっている」ことを示すことが説明責任では大事です。
賠償責任:Liability
「賠償責任」とは、法的な賠償等の「責任の果たし方」です。会社は、お客様や従業員に対して、法律や個別の契約に従い、損害賠償などの義務を果たす必要があります。
基本的に仕事によって生じた賠償責任は、個人に対して課すことはありません。あくまでも仕事は会社など組織の活動によるものです。
個人に賠償責任を負わせない代わりに、会社は指揮命令権を持っています。失敗しても個人的に賠償責任を負わせることはないので、社員は落ち着いて仕事ができるのです。原則は、失敗した場合の賠償責任は会社が負う。ただし、説明責任は社員がするということです。
まとめ
「責任」には、3つの種類があります。
1)遂行責任:Responsibility(レスポンシビリティ)
2)説明責任:Accountability(アカウンタビリティ)
3)賠償責任:Liability(ライアビリティ)
いずれの場合においても、相手があっての「責任」です。他者とのコミュニケーションにおいて成り立つ概念です。