労働生産性を上げる4つの要素と労働生産性の3つの表現方法
労働生産性を上げる4つの要素と労働生産性の3つの表現方法
労働生産性を上げる4つの要素と3つの表現方法
日本の労働生産性が低いことは、世界でも常識化しています。2019年の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟37か国中21位、一人当たりでは26位です。(日本労働生産性本部「労働生産性の国際比較」から)
前述の労働生産性は、GDPを国民の総労働時間で割ったり、就労人口で割ったりして作られています。つまり生み出した付加価値を金額で表しており、労働生産性が低いとは、労働によって稼ぐ力が弱いことを表しています。
労働生産性が上がらなければ、長時間労働、低賃金から解放されることはありません。本当の働き方改革を実現させるには、労働生産性を上げることが必要です。
ところで、日本の生産性の低い理由について「日本人がダラダラ仕事をするから」といった精神論や「中小企業が多過ぎるから」といった指標分析による議論があります。会社や職場における労働生産性向上方法は、「各種ムダ時間を省く」「システム化する」「分業する」等々の対策事例集に沢山載っていいます。しかし、体系的な方法論は、あまり普及していないようです。そこで、労働生産性を決める4つの要素。労働生産性の3つの表現方法を紹介します。労働生産性向上のために、どの要素にフォーカスするか、どの表現方法を使うか適切に選択することが重要です。
労働生産性を上げるには、4つの要素があります。
1)仕事量を増やす
2)能率を上げる
3)効率を上げる
4)提供するモノやサービスの価格を上げる
また、生産した「成果」(アウトプット)に何を使うかにより、労働生産性には3つの表現方法があります。
1)モノの個数や重量で表す
2)金額で表す
3)時間に換算して表す
仕事がないのに労働生産性向上を議論しても意味がありません。仕事がなければ、常に労働生産性はゼロです。モノで表現する生産性が変わらなくても、提供するモノやサービスの価格を上げると金銭ベースの労働生産性表現では上がります。
各企業や職場の労働生産性向上活動をするには、労働生産性を測定する必要があります。「測定できないものを向上させることはできない」からです。ところが、労働生産性を表現することは、容易ではありません。目に見える形の「成果」(アウトプット)がモノとして職場と、間接部門のように目に見えるモノがない職場では、生産性の表現方法を変える必要に迫れます。この記事は、長年労働生産性向上活動の経験をまとめたものです。
労働生産性とは、「能率」と「効率」の掛け算
世間一般に使われている「能率」と「効率」の言葉としての定義は、次のようなものです。
(一般的な能率)=(成果)/(時間)
(一般的な効率)=(成果)/(投入資源)
(例えば、「3分で解決!『能率』と『効率』の意味の違いと使い分け例」)
この定義は、一般的な言葉としてのものです。労働生産性を管理する上での「能率」と「効率」の定義を次に示します。
(能率)=(その仕事の成果)/(その仕事に使った時間)
(効率)=(その仕事に使った時間)/(総労働時間)
ここで使う「総労働時間」とは、会社や役所に拘束されている残業などを含む時間のことです。「効率」100%は、会社にいる時間すべてを「その仕事」に使うことです。現実には、休憩や会議などあり100%を超えることはありません。
この定義の「能率」と「効率」を使うと「労働生産性」は、以下のようになります。
(労働生産性)=(能率)x(効率)= (成果)/(総労働時間)
簡単に言えば、「能率」は仕事の速さ、「能率」は仕事の集中度です。生産性を上げるとは、「仕事を速く、集中してやる」ということになります。
労働生産性を表現する3つの方法
労働生産性の定義は簡単ですが、実際に職場で使うとなると困難にぶつかります。それは、「成果」(アウトプット)をどう表現するかの問題があるからです。
生産するモノの個数や重量が明確な製造業では、成果を比較的容易に測定できます。ところが、1つの仕事が1日で終わらない建設業などでは、日々の成果がわかりにくくなります。目に見えて工事が進むこともあれば、コンクリートが固まるの待っているときもあります。事務職においては、仕事の種類が多様であり、そもそも何が成果なのかも曖昧です。
「成果」として何を使うかは、労働生産性を測定し改善する上で重要です。「成果」(アウトプット)を表すには、3つの方法があります。
成果にモノの個数や重量を使う
最も直接的な成果の表現です。毎日何千個、何トンもの規格製品を作っている工場などではわかり易い成果の表現です。ただし、製品が複数あると、A製品1個は、B製品の1.5個分といった換算が必要になります。事務部門で、伝票処理数なども製品個数に準じて使えます。この場合の労働生産性は、○○個/1人日と表現されます。
成果を金額に換算する
生産量などの成果をすべて金額に置き換える方法です。ただし、金額は「その仕事」によって増加する付加価値である必要があります。また、モノやサービスの価格に変動があると生産性が見た目に増減しますので、標準価格にしておく必要があります。この場合の労働生産性は、○○千円/1人日と表現されます。問題は、事務処理などは成果の金額換算が難しいことです。
成果を時間に換算する
生産したモノやサービスとすべて時間に換算する方法です。すべてのモノやサービスに対して、それをするのに必要な「標準時間」決めます。例えば、A製品を1個作る標準時間は、60分。B製品は、90分といった具合です。標準時間は、ベテランが普通にそのモノをつくる時間です。論理的には、工場であろうと事務処理であろうと、すべての仕事は標準時間を作ることが可能で、複数の仕事を一緒にして評価できます。この場合の労働生産性は、
(成果物の合計標準時間)/(総労働時間)
となり、「○○%」と表現します。この労働生産性は、相対値になり、労働生産性が向上するとは、「いつもより○○%速く仕事ができた」ということになります。「標準時間」による表現は、すべての成果を時間で表すことができますが、「標準時間」の設定に手間がかかる欠点を持っています。
労働生産性を表現する方法は、「成果」として何を使うかにより、上記3つの表現方法があります。各職場によって、これを使い分けることをお勧めします。鉄、セメント、部品工場などは、モノで成果を表現することが最も管理しやすいでしょう。営業では、受注したモノの粗利益もしくは受注金額が管理しやすいでしょう。工事現場などでは、工事の工程毎に「標準時間」を決めて、それより速い遅いが管理し易いものです。
ある分析会社で、分析の種類毎に「標準時間」を決めて、多種多様な分析が混ざっても生産性を評価できる仕組みを構築した例があります。
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まとめ
労働生産性は、「能率」と「効率」により定義できます。
(労働生産性)=(能率)x(効率)= (成果)/(総労働時間)
(能率)=(その仕事の成果)/(その仕事に使った時間)
(効率)=(その仕事に使った時間)/(総労働時間)
簡単に言えば、「能率」は仕事の速さ、「能率」は仕事の集中度。生産性を上げるとは、「仕事を速く、集中してやる」ということになります。
また、労働生産性を表現するには、「成果」(アウトプット)を
1)モノの個数や重量を使う
2)金額に換算する
3)時間に換算する
という3つの表現方法があり一長一短があります。各企業や職場によって、これらを使い分けることで効果的な労働生産性管理ができます。
参考記事:労働生産性は、能率と効率とで決まる。日本は、効率が課題