「えこひいき」と感じるとき、「平等」と「公平」を混同していないか疑え!
「えこひいき」と感じるとき、「平等」と「公平」を混同していないか疑え!
「えこひいき」と感じるのは、「分配の原理」を理解していないから?
先生に対して、生徒が「えこひいき」と感じる。
会社員が上司に対して「えこひいき」されていると思う
これらは、資源(仕事、食べ物、金、時間など)の分配に対して生じる不満を起点にしていることが多いものです。「自分ばっかり叱られる」「自分ばっかり嫌な仕事を押し付けれる」などと感じ、これが「えこひいき」感に発展します。親や教師、会社の上司が、好き嫌いの感情で分配に差をつけているとすれば、それは本当の「えこひいき」です。
しかし、多くの場合、分配する人が意図をもって分配していることを、分配される側が理解できず「えこひいき」と感じてしまいます。これは、互いに不幸なことです。特に分配の際、「平等」と「公平」を混同していることが多いようです。
資源を分配するには、3つの原理があります。
1)必要としている人に多く分配する「必要原理」
2)均等に分配する「平等原理」
3)その人の貢献度に応じて分配する「公平原理」
資源を分配のするとき、この3つの原理のどれかが、選ばれます。(組み合わせることもあり)そのとき分配される側が、どんな原理で分配されたかを理解していないと「えこひいき」感が生まれます。
例えば、年齢が12歳、9歳、6歳の子供がいたとします。分配される食事の量は、年齢に応じて違います。これを「えこひいき」とは感じません。親も子も「必要原理」を理解しているからです。ところが、おやつにチョコボールが出てきて、上から3個、2個、1個と分けたら「自分は、お兄ちゃんより少ない」と末の子が文句を言い出します。末っ子は、チョコボールに対しては「平等原理」を持っていて「お兄ちゃんが多い」という「えこひいき」感が生まれたのです。
学校や会社において教師や上司は、生徒や部下の成長を期待して「平等」ではなく、与える課題の量を意図的に増やしたり、減らしたりすることがあります。この記事では、好き嫌い感情で分配する「本当のえこひいき」ではなく、分配原理を理解していないことによる「えこひいき」感の原因と対策を紹介します。
参考:平等と公平の違い(Wikipedia)から
必要としている人に多く分配する「必要原理」
先の3人兄弟例では、年齢により必要なカロリーは異なります。親は、3人の身体差を考え兄弟で異なる量の食事を出しました。これが「必要原理」です。
通勤費の支給は、典型的な「必要原理」による分配です。住居が遠い人ほど、高額の交通費を出します。ただし、これは日本での話。米国では、通勤費の支給がないところが大半です。自分の都合で職場から遠くに住んで、通勤費をもらうのは、「えこひいき」ではないかと言われます。実際に米国では、通勤費は所得とみなされ課税されます。ましてや単身赴任手当など日本独特です。
「必要原理」といっても「必要」かどうかのコンセンサスが必要です。交際費の必要性なども、今や社内コンセンサスが重要です。
均等に分配する「平等原理」
結果や貢献度に関わらず資源を均等に分配する方法が、「平等原理」です。分配する側に主体性がないと、「平等原理」で処理されがちです。特に嫌なことを分配する際は、相手の都合に関係なく分配する「平等原理」の適用が楽です。また、分配するものが少ないときは、「くじ引き」も多く使われます。プロ野球のドラフト会議は、典型です。
先ほどの3人兄弟の例では、おやつのチョコボールは、カロリーをとるためではなく、し好品の一種と考えられます。だから、年齢に関係なく平等に2個ずつ分配する「平等原理」を適用した方が、不満の出にくい方法だったといえます。
軍事施設、廃棄物処理施設などの建設は、必要性を認めても、いざ候補地になると地元は反対します。国は、設置場所を「その建設に適した選定理由がある」と主張します。つまり、「必要原理」です。しかし、反対をする候補地は、負担の「平等」をひたすら訴えます。施設の拡大増強が議論されると「えこひいき」という言葉は使いませんが、その地域が長い間、国から冷遇されてきたと国に対して「えこひいき」的な感情を抱いた主張をします。
今世間一般では、「平等原理」の意識が極めて高く、コロナワクチンを早く打った企業の社長や地方自治体の首長が批判されました。「えこひいき」と言われたとき、「えこひいき」と主張する多くの人が、強い「平等原理」を持っていることに注意する必要があります。逆に「えこひいき」と感じたとき、「均等割がベストの選択か」と振り返ることです。
その人の貢献度に応じて分配する「公平原理」
「結果を出した」「会社発展に貢献した」など「頑張った人」に多く分配するのが、「公平原理」です。株主総会の持ち株数に比例した議決権は、「公平原理」に従っています。持ち株数は、客観的な評価です。一方で、数値的に表せない貢献が多くあります。会社の給料やボーナスは、その代表例です。ただし、給与やボーナスは必ずしも対象の期間の貢献度ではなく、これまでの貢献、将来への期待値などが入っています。
数値化できないような「公平原理」に従う分配は、「公平」と「平等」の違いが誤解され、「えこひいき」と感じることがあります。上司は、各社員のレベル、成長を期待して仕事を分配します。「平等」に仕事を割り振ってはいません。しかし、「公平」です。つまり、各社員が今そして将来にわたり能力を高め、会社に貢献してくれることを等しく期待しています。そう考えるのが、「公平原理」です。しかし、仕事を受ける側は、「自分ばかり嫌な仕事が来る」と「平等」の視点で考えてしまします。
会社に実績評価制度が導入され、実績のあった人の早期昇格や給与アップを認めた会社がありました。ところが、運用する上司や人事が、他の社員の「平等」意識が怖くて、あまり適用できないでいる例があります。「公平原理」を適用するには、その内容を事前によく知らせておく必要があります。分配した後、理由として後から「公平原理」を言い出すと強い「えこひいき」感が生まれます。政治家や有名人のスキャンダルを思い浮かべていただければわかります。合法でも分配原理が事前に説明されていないと一般大衆の「平等」意識から「炎上」するはめになります。
まとめ
人が「えこひいき」と感じるのは、分配に対して「平等」と「公平」を混同していることが多いものです。(好き嫌いの感情で分配する本当の「えこひいき」は別)
資源を分配するには、3つの原理があります。
1)必要としている人に多く分配する「必要原理」
2)均等に分配する「平等原理」
3)その人の貢献度に応じて分配する「公平原理」
資源を分配するとき、この3つの原理のどれで(組み合わせることもあり)分配方されたかを理解していないと「えこひいき」感が生まれます。