同じ失敗を繰り返す人や組織の「経験しても成長しない」という共通点
同じ失敗を繰り返す人や組織の「経験しても成長しない」という共通点
「経験で成長する人」「経験しても成長しない人」を分ける2つのポイント
・ 同じような失敗を繰り返す人
・「想定外」と同じ言い訳を繰り返す、失敗続きの組織
「いい加減にせい!」「少しは、学習しろよ!」
と思わず言いたくなります。経験から学ぶことの下手な個人、組織、そして国まで「成長しない」ことにイラつきます。(少々、個人的な感想が入っていますが。)同じ失敗を繰り返す人や組織は、「経験しても成長しない」という共通点があります。これは、経験したことを客観的に深く分析できず、次に活かされないことに尽きます。失敗の結果を反省したようで、失敗や成功の真の原因追及が不十分なのです。
経験によって成長するには、2つのポイントがあります。
1)経験を活かす学習サイクルを身に付けること
2)経験に対する自分の意味付けの癖を知ること
経験を通して、「成長する人」と「成長しない人」の差は、ここにあります。様々な経験を基に地位を上げ成功を収める人や困難を乗り越えて成長する会社は、この2つのポイントを実践しています。具体的な経験を分析し、「持論」や「知恵」として定着させています。更にこの「知恵」を使って実践し、「知恵」を更に高めています。
この記事では、失敗を繰り返す人や組織において、経験を活かして成長するポイントを紹介します。
「経験で成長する」には、経験を活かす学習サイクルを身に付けること
人が成長するには、知識を得ることと経験を積むことが必要です。両方がそろって「知恵」となります。知識を得ることは、学校や個人の勉強といった形で行われます。一方、経験を積むとは、具体的な体験によって学ぶことであり、個人や組織によって「知恵」になるかどうかに大きな差があります。
コルブの「経験学習モデル」とは
人が経験を通して成長するのは、うまくいった事であれ、うまくいかなかった事であれ、自分が具体的に体験したことから「知恵」を得るからです。米国の組織行動学者デービット・コルブは、この過程を「経験学習モデル」として体系化しています。
① Concrete Experience:具体的体験
② Reflective Observation:体験の観察
③ Abstract Conceptualization:持論化(知恵)
④ Active Experimentation:実践
研修として、これを教えている企業もあります。改めて学ばずとも「成長する人」は、無意識にこのサイクルを会得しています。具体的な経験を分析することで「持論」言いかえれば「知恵」を習得しています。これは、個人の知恵もあれば、組織の知恵もあります。トヨタの現場は、組織として経験を通して知恵を得るサイクルを持っています。ところが、成長しない失敗を繰り返す人は、このサイクルがうまく働いていないのです。
コルブの「経験学習モデル」に関する参考:経験学習の理論的系譜と研究動向(中原淳)
「経験しても成長できない人」の特徴
何か経験しても成長ができない人は、経験を活かしきれていません。経験しても「知恵」を得ることができないのです。コルブの「経験学習モデル」でいうところの「体験の観察」が不十分なのです。経験したことの結果を喜んだり、嘆いたりするのですが、「なぜ、その結果になったか」のツッコミがありません。単に、「心地良い経験」であったり、「苦い経験」であったりとして記憶されるだけです。
「なぜうまくいったか」「なぜ失敗したか」の分析が不十分では、次のステップの持論化、つまり知恵になりません。例えば失敗した結果だけを重く受け止め「この手の投資は失敗するもの。二度と投資はしない」といった消極的な持論化になってしまいます。そして、その後実践しない、実践しないので新たな経験が積めず、知恵も生まれないという悪循環が生れます。
成長する人は、いろいろな「持論」(知恵)を持っています。「こうすればうまくいく」「こうなると失敗する」という持論を持ち、それを実践しています。
将棋や囲碁のプロが、対局の棋譜を覚えていて反省し、次の対局に活かします。優れた野球選手は、実戦の配球を細かく覚えています。そして、持論化しています。故野村克也氏は、多くの著書で選手時代から彼なりの持論を経験から得て実践し、成果を上げたことがでてきます。今年(21年)から野球解説をしている元阪神の藤川球児氏が、自分の実戦経験から打者の心理読み、配球ごとにバッターが振るか振らないかを2球先、3球先まで言い当てていたのには驚きました。彼の現役時代の活躍は、単に「火の玉ストレート」だけではなく、実戦経験に基づくバッター心理の読みにあったことに改めて感心しました。
持論化(知恵)とは、自分なりのルールです。職場で、後輩が入ってきたり、リーダーになったりした後、大きく成長する人がいます。後輩や部下に対して、仕事を教えるのに、自分の仕事経験を分析し持論化が迫られます。つまり、知恵を伝授する必要があります。例えば、
「こんな客に当たったら、こう対応するとうまくいく」
などといった持論(知恵)を後輩や部下に伝授します。人に教えることは、「経験学習モデル」における、持論化(知恵)が強化され、自分自身の成長にも繋がります。
経験に対する自分の意味付けの癖を知ること
具体的な体験を分析するとき、客観的に分析することが重要です。人は、何か体験をするとその結果を喜んだり、苦しんだりといった感情が伴います。「良かった」「悪かった」といった判断を自らの意味付けによってやろうとします。
結果は客観的に判断できても、そこに至る過程は、主観的に評価しがちになります。
「彼は、よく失敗する。今度もまた失敗した。今後、この手の仕事は、彼に任せられない」
この例では、「なぜ、失敗したか」の原因追及をせず、「彼は、よく失敗する」といった自分自身の意味付けから原因を判断してしまっています。主観の入った分析からは、知恵は生まれません。
オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーは、
「人は、主観的に意味づけられた世界に住んでいる」
と言っています。人は、どうしても、物事に対して自分で意味付けをしてしまいます。
「自分は、何をやってもうまくいかないから」「会社のやることは、いつも遅い」
といったネガティブな意味付けをしたがる人と、
「自分は、できる能力があるのになぜ」「これは、次の練習みたいなもの」
というポジティブな意味付けをする人では、成長に差が生れます。自分の物事に対する意味付けをポジティブにするように意識することです。
自分の意味付けを変えることは、性格を変えるようなもので、なかなか変えることは難しいものです。せめて、自分の意味付けの癖を知り意識することが、知恵の獲得に有効に働きます。
まとめ
同じ失敗を繰り返す人や組織には、「経験しても成長しない」という共通点があります。個人や組織が、経験によって成長するには、2つのポイントがあります。
1)経験を活かす学習サイクルを身に付けること
2)経験に対する自分の意味付けの癖を知ること
経験を通して、「成長する人」と「成長しない人」の差は、ここにあります。数々の経験を基に地位を上げていく人、困難を乗り越えて成長する会社は、経験により「持論」や「知恵」を発見し定着させています。更に「知恵」を実践することで、「知恵」を更に高めています。また、知恵を得るには、経験に対して客観的に分析することが重要です。
参考記事:その会社の過去(歴史)を振り返れば分かる、失敗を繰り返す業務改革・改善の理由
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