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業務効率化を妨げる日本語、「反省」に含まれる道徳的意味

2021/09/18
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

業務効率化を妨げる日本語、「反省」に含まれる道徳的意味

 

業務効率化を妨げる日本語、「反省」に含まれる道徳的意味

「君は、このことを反省しているのか!」

仕事のミスをした部下のAさんに対して、こう言って失敗したことがあります。私は、Aさんに対して、
「起きたことを分析して、次回のための対策を考えていますか」
と伝えたかったのですが、Aさんは、
「失敗した責任をどうとるか、考えているのか!」
と受け取りました。

「私を担当から外してください」
Aさんが、思い詰めて発した言葉です。この時、「反省」と言う言葉が、極めて危険であると気づきました。
「反省」には、単純に出来事を振り返ることに加え、日本特有の意味が含まれています。

Wikipediaには、「自分の過ちを認め改善を誓約する意味、文化。道徳的な意味を含んで使われることが多い。省(かえり)みる、という文字自体が道徳的意味を含む。」
とあります。反省の道徳的な意味が、Aさんを追い詰め「担当から外して欲しい」と言わせてしまいました。
職場にトラブルや失敗はつきものです。日本的な「反省」は、トラブルの対応や復旧より、原因追及に力点があり、道徳的見地から個人責任を押し付ける傾向があります。

日本語の「反省」をしても意味がない!

これが、私の結論です。ただし、「反省」の道徳的な部分を除いた「振り返り」は、業務効率化、生産性向上に有効です。PDCAサイクルのC(チェック)に当たる部分です。PDCAのCが道徳的な意味を含む「反省」になると、PDCAサイクルが回らなくなります。

以下、「反省」を正しく「反省」する記事です。

英語に「反省」にあたる言葉はない

そもそも英語にも、ドイツ語にも「反省」にあたる言葉がありません。和英辞書、Wikipediaで、「反省」を引くと“Reflection”もしくは“self-reflection”と出てきます。しかし、逆に“reflection”と入力しても、「反省」は出力されず「反射」と出力されます。試しにGoogle翻訳で、日本語に「反省」と入力し、出て来た英単語を逆に日本語にしてみてください。全く「反省」が現れなくなります。

「反省」という言葉は、日本特有です。そこには、「道徳的」な意味が含まれています。道徳的」とは、儒教的倫理観や年功序列などの慣習が含まれます。Aさんのように、反省というと、「事実としてなにがおきたか」より、「何が原因で、誰の責任だ!」と言うことに重点が行きがちです。会社で「反省」と言う言葉を使う時、責任の追及ではないことを明確にしておくことです。「反省」の代わりに「振り返り」や「リフレクト」「レビュー」などの言葉を使っているコンサルや職場があります。

業務効率化には、「反省」より米国式の「失敗したら、まず復旧する」が有効

かつて私は、米国オハイオ州の鉄板工場で操業責任者をしていました。工場では、トラブルがつきものです。トラブルに対する従業員の行動は、日米で大きな差があります。

ある日、工場建屋に入った整備班のトラックが、生産設備に突っ込み運転手が怪我をし、工場は操業を停止しました。事故の原因は、複雑でした。床が油で滑り易かった、スピードが出ていた。工場の従業員が、生産設備ぎりぎりまでくるようトラックに指示した等々です。日本人スタッフは、半日、へたをすれば1の日操業停止を覚悟しました。ところが、米国人達は、40分で操業を再開しました。

運転者を救出する。警察に連絡する。救急車を呼ぶ。写真を撮る。車をどかす。設備を点検する。設備を修理する。操業を再開する。これを米国人達は、40分で終わらせました。

これが、日本だと各作業の間に上司への連絡や指示待ちが生れます。各作業の間に「反省」が入ります。たぶん日本だと、運転者の救出後は、従業員が集まりトラックを動かす前に
「なぜ、トラックが突っ込んだんだ」
こんな会話が始まっています。運転手も指示者も「反省」しているはずです。日本人スタッフの中には、
「事故の原因をはっきりさせないと事故は再発する。トラックは、使用禁止だ」
と警告を発する者がいました。しかし、米国人リーダーは、
「起きたことの処置、復旧が先。トラックの運転には、気を付けるよ」
と米国式で動きました。

日本だと、
「トラックは危険なので、トラックの工場内建屋に入ることを禁ずる。それでも入らざるを得なければ、課長の許可をもらうこと」
なんてルールが、反省の結果生まれそうです。(事実、日本の工場では、こんなルールがあります。)

こんな規則が、事故の「反省」から生まれるのは、事故原因を客観的に分析した結果ではありません。当事者が、事故の責任を逃れたいからです。トラックを設備に近づけて作業する方が、効率的であることは、皆分かっています。しかし、事故があった時、責任を追及されるのがいやなのです。

事故やトラブルが起きるたびに「反省」して
① 復旧が遅れる
② 責任逃れの新しいルールができる
ことで、業務効率化が遠のいていきます。典型的な対策が、多数の項目が入ったチェックリストや複数の人に承認ハンコもしくは、承認クリックを求めることです。

日本的な「反省」は、業務効率化を妨げる要因になります。「反省」ではなく、

「では、どうするんだ」

と再発防止対策に重点を置くことです。合わせて、事故が起きてしまったらどうするか対策も考えることです。米国人は、反省しません。そんな概念がないからです。しかし、再発防止リスクミニマム化や事故が起きたらどうするかの対策をしっかり行っていました。合理的というか、効率的な考え方です。事故にたいする責任より、事故が起きた時の処置が良かったかどかの責任の方が重いのではと感じました。

「事故が起きないように対策をする。でも、また事故が起きた時の対処法は、今回より良くしルール化しておく」

これが、米国流です。事故を起こした人を責めることは、まずありません。


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まとめ:「反省」するほど、効率が落ちる。トラブル対策は、再発リスクミニマム化で

英語には、「反省」にあたる言葉がありません。日本語の「反省」には、事実を振り返ることと、自分過ちの責任を取るといった道徳的意味があります。「反省」に道徳的な意味が含まれているため、対策が再発防止対策に重点が置かれるべきなのに、責任逃れの対策になる弊害が見られます。トラブル復旧が遅れ、責任逃れの新ルールが生れ、業務効率化を妨げます。トラブルの正しい「反省」は、事実に基づき再発リスクミニマム化対策を作ることです。

参考記事:個人の業務効率、労働生産性を向上させるための5つのヒント

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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