労働生産性を確実に向上させる5つのステップ(製造編)

労働生産性を確実に向上させる5つのステップ(製造編)
労働生産性を確実に向上させる方法(製造編)
・忙しい製造現場の労働生産性を上げたい
・残業時間を減らしたい
・いつも納期に追われている
こんな製造現場の課題に答えます。今回の記事は、自動化の進んだ大規模な化学や鉄鋼プラントが動く現場ではなく、工程内に人が介入する加工機械が並んでいる工場や大小組み立て作業などを行う現場における労働生産性の向上方法についてです。
人の介入する現場での労働生産性を向上させるには、以下の5つのステップを押さえておくことです。
1.労働生産性が向上する3S(=整理、整頓、清掃)をする
2.労働生産性の指標を決め、記録する
3.労働生産性の目標を設定する
4.職場のムダを見つける
5.ムダを改善し、労働生産性の向上を確認する
長らく特殊金属の製造工場で溶解から圧延、フライス盤や旋盤での機械加工、部品組み立てなどの労働生産性向上に取り組んだ経験から、これらを説明します。
労働生産性は、仕事量と大きな関係があります。人手不足を感じているような職場において、大きな投資なしでも1年で20%を超える労働生産性向上の例があります。
労働生産性が向上する3S(=整理、整頓、清掃)をする
基本は、現場の3Sです。(5S活動でも同じ)目標は、きれいにすることではなく、労働生産性の向上です。4つのポイントを上げます。
① 不要なもの、すぐ使わないものは、排除する。(整理)
② 作業スペース、保管スペース、準備スペースを分ける
③ モノは、すぐ出せる。すぐしまえる状態にする。各2分以内など目標を決める(整頓)
④ 良い状態を維持するルールを決める
これだけでも、「探すムダ」や「スペースの確保」により、労働生産性が向上します。また、3S活動の中で、ムダの発見ができます。
整理を始めると、ある時点から勢いが付きます。捨てられなかった製作品、部品、サンプルなど思い切りが良くなります。また、整頓の段階になると、作業現場にあった棚、搬送用台車、用具入れなど欲しくなります。現場のリーダーや女性が楽しそうに分厚いカタログやネット情報を調べました。ネットに整理整頓道具情報の多いことに驚きます。
労働生産性の指標を決め、記録する。
記録できないものは、改善できません。職場の労働生産性を向上させると決めたらすぐにでも、指標を決め記録を始めてください。改善前と改善後の差が見えることが大切です。
労働生産性指標の決め方
マクロ的な定義:
労働生産性=付加価値(アウトプット)/労働時間(インプット)
で表されます。しかし職場毎の付加価値を測定することは、困難です。そこで、職場毎のミクロ的な定義を決めるます。
ミクロ的な定期:
① 生産量で定義する例
職場の総合労働生産性=生産量/総労働時間
職場の生産能率=生産量/生産に掛かった労働時間
② 生産時間で定義する例
職場の総合労働生産性=標準生産時間/総労働時間
職場の生産能率=標準作業時間/作業に掛かった労働時間
モノ作り職場は、生産量が個数や重さで測定できますので、①で定義できます。しかし、試作や工事では、量として測定できませんので、その作業にかかる標準作業時間を使います。総労働時間は、会社にいる時間(在宅では、拘束された時間)で、作業以外の会議や休憩などすべての時間を含みます。
労働生産性の記録を毎日つける
生産量、生産時間のいずれ使ってもいいのですが、毎日記録します。一日中同じ仕事をしていれば、容易に記録できます。ところが、一日の内で、異なる製品を生産したり、異なる作業をしたりします。異なる製品、作業ごとに換算係数を設定しておく必要があります。あまり細かく設定すると記録や集計が面倒になりますので、大まかな区別で始めることを勧めます。
記録を付けるとすぐにわかりますが、総合労働生産性は、毎日大きく変化します。仕事の少ない時や長い会議のあった日は、下がります。一方、生産能率は、それほど変化ありません。
記録を付けるのは、習慣化するまで、大きな負荷に感じます。Excelなどで簡単な集計プログラムを作るか、既成のアプリを使う方法も検討できます。
労働生産性の目標を決める
活動目標は、総合労働生産性でたてることをお勧めします。会社の収益をもたらすのは、総合労働生産性を高めるだからです。ただし、個別の課題解決に注力するなら生産能率でも構いません。
2か月も総合生産性を記録するとその職場の実態が見えてきます。この平均値に対して、6か月後や1年後に10%アップ、15%アップと決めます。上司の気合で目標を決めるか、事業計画から決めるか、その職場の方針で決めてください。
職場のムダを見つける
いよいよ職場のムダを見つけて、総合労働生産性を向上させます。職場により、個別の事情があるので、着眼点の例を上げます。
① 作業以外の時間を削減(会議、移動時間、手待ち等)
② 担当者間の作業負荷の平準化(能率の良い人をまねる)
③ 時間帯による作業負荷の平準化
④ 作業ミスによるやり直し等のロス時間削減
⑤ 作業の重複を避ける
⑥ 個別作業時間の短縮(効率化)
⑦ まとめ生産の実施
⑧ 平行作業の実施
⑨ 多能工化
その職場毎に着目点は異なります。数多くの具体的な改善事例集が出されていますので、良い事例を積極的にパクることが早道です。また、職場毎にアプローチが異なる故、多くのコンサル会社やコンサルタントが活躍しています。
ムダを改善し、労働生産性の向上を確認する
ムダを見つけ、改善したら結果を確認します。職場の仕事を改善しても総合労働生産性は、仕事量により変化します。仕事が増えれば、上がり、仕事がすくなければ下がります。図に示すように生産量と総合労働生産性の関係グラフを見て、改善後が改善前の上にあることで評価できます。

Relationship between production and labor productivity
まとめ:労働生産性の向上は、記録すること
労働生産性を向上させる方法は、様々ありますが、まず指標を決めて記録することです。指標があって、はじめて評価できます。この記事で取り上げた、手介入を多く含む製造職場は、労働生産性を向上させるには、仕事量の高位安定化が重要になります。高位安定した仕事量を得るビジネスモデルの確立と職場の活動とが平行して実施されることを期待します。
参考記事:仕事量と労働生産性の2つの関係