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採用担当者が悩んだ時の労働生産性を基準にした新卒採用人数の決め方

2021/09/18
 
採用人数で悩む担当者のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

採用担当者が悩んだ時の労働生産性を基準にした新卒採用人数の決め方

 

労働生産性を基準にした新卒採用人数の決め方

「職場の採用ニーズを集めたら、希望人数が多過ぎた」
「役員から採用人数を大幅に減らせと指示された」
「結局、今回の新卒採用人数の決め方は、どうするのか?」
「決めた採用人数で、関係者が納得するか?」
各企業で採用計画作成を担当されている方には、こんな問題で板挟みになっておられる方がいます。これらの問題は、労働生産性を基準にした新卒採用人数の決め方で、解決できます。

① 職場の必要人員数は、労働生産性からミクロ的な判断をする
② 全社の労働生産性変化、同業他社との比較からマクロ的な判断をする
③ ミクロ判断とマクロ判断を労働生産性の向上、技術継承、採用実績等を考慮して、採用人数を決める
これは、長年企業の部長や役員を経験し、この間採用や労働生産性向上の業務をして得た経験から見出したものです。

各職場、会社全体の労働生産性とその改善策を把握すれば、適正な採用者人数を決めることができます。また、この数字は、役員はじめ関係者の理解が得られ易いはずです。

各職場から提出される採用希望人数からミクロ的判断をする

各現場(職場)から、採用希望者数を出してもらいます。その際、採用の理由を付けてもらいます。例えば、
1)退職者補充
2)残業時間削減
3)事業拡大
4)新規事業参入
等々
です。合わせて、数年分の労働生産性の推移を提出してもらいます。労働生産性のデータは、一人当たりの月間の仕事量です。しかし、そんなデータを取っていない、取れない職場では、月間総利益(もしくは、月間総売上)を人数で割ったものでも構いません。この労働生産性が、ご希望人数を採用した後どうなるか試算します。比較の対象は、過去最高の労働生産性の月です。労働生産性は、各月で仕事量に応じて変化し、職場によっては2倍以上の差があります。「職場で一番忙しい月と同じぐらいの労働生産性で仕事をしたら、新卒採用は不要ではないですか。」と説得できます。

重要なのは、労働生産性データを「採用希望無し」としている職場についても出させることです。データをみれば、余剰人員を抱えていることが分かります。

全社(直接部門)の労働生産性と同業他社との比較でマクロ的な判断をする

多くの会社には、中期的な事業計画があり、これに基づく要員計画があります。要員計画は、事業の将来像や目指す人件費比率等から作られます。しかし、市場環境等の様々な要因で、常に経営状況が変化し、現実と計画が合わなくなりがちです。来年、再来年の短期的な採用人数となると、要員計画があっても採用人数は、毎回決める必要にせまられます。

マクロ的にみて、最も単純な採用人数の決め方は、全社生産に関わる部門(直接部門)の労働生産性で評価することです。これも、毎月のデータを出し、最も生産性の高い月を基準にします。来年の売上計画で予想される労働生産性と比較し、採用人数の適正数を見ます。間接部門については、売上に比例して仕事が増えませんので、扱いを分けます。

また、同様な作業を同業他社との間でします。同業他社をリードしていれば、これを維持し、リードされていれば、何年かけて追いつくかを考慮して採用人数を算出します。

もう一つの指針として、総従業員数を退職者の平均勤続年数で割る方法があります。平均勤続年数を30年とみると、900人の会社であれば、平均して30人採用するのが適切との考え方です。これは、将来にわたって事業規模が変化しない、労働生産性が変化しない、人員構成を変えないことを前提にしていますの、参考値とする方がいいかも知れません。ただし、採用人数を決めた後の関係者説得には、使える数字です。

マクロ的とミクロ的に判断した数字を調整して採用人数を決める

職場から出てくる採用希望人数を集計すると、マクロ的に出した数字より多くなりがちです。それは、要員不足職場は、採用希望を出すのに、余剰要員を抱えた職場は、「採用希望無し」としてダンマリを決め込む傾向があるからです。職場責任者に対し、職場間の業務もしくは人員調整をお願いして採用人数を調整します。

新人が一定の労働生産性を発揮するには、時間がかかります。職種にもよりますが、高度技術者の退職補充に新人を当てるのであれば、技術継承を考慮して前倒し採用が必要になります。また、採用した人数を教育できるかの問題もあります。職場教育できる人数には、限界があります。これも採用人数を決める時、考慮すべきです。

採用担当は、採用実績による採用の可能性を検討する必要があります。これは、採用担当が一番知っていることです。採用実績のない学校からは、応募者を集めることが困難です。同様に採用実績のない学科からの応募者も集まりにくいものです。また、景気等により、内定者の辞退率は変わります。採用人数、採用学科に幅をもたせる必要があります。

採用数の関係者説明と同意

最終的には、採用数を関係者に説明し、経営陣の同意が必要です。労働生産性と過去の採用実績で調整した数字は、妥当なものと判断されるでしょう。ただし、経営の視点からみると、将来の売上には何の保証もありません。あくまでも予想です。経営陣からみて、大幅に売上が下がることが懸念されたり、逆に大幅に増えたりすることが予想されれば、これを考慮して対応策を用意します。例えば、少なめに採用して、もし不足があれば、2次募集や中途採用する等です。

労働生産性を基準に採用者数を決めるとは、売上が伸びなければ、退職者補充のみにする。売上が、減少すると予想されれば、退職者の補充を制限することになります。問題は、職場により、売上(仕事量)の多い少ないがあることです。これを克服しなければ、過剰な採用ということが生じます。

まとめ:採用人数を決めるとは、経営方針を決めること

新卒の採用人数の決め方には、様々な方法があります。労働生産性を基準として決めるのは、その一つです。合理的な方法ではありますが、将来の労働生産性は、将来の売上高に左右されます。採用人数を決めるとは、経営方針を決めることであるとの覚悟が必要です。関連記事:日本企業の新卒採用者数の決め方の実態と問題」

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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