脱ハンコは、電子契約の普及から始まる(日本の生産性24)
脱ハンコは、電子契約の普及から始まる(ハンコの2つの役目)
脱ハンコは、電子契約の普及から(ハンコの2つの役目)
日本では、広くハンコが使われています。その役目は、大きく2つあります。
1.証拠としてのハンコ(本人確認)
ハンコを押した書類が本物、本人であることを示す証拠の役目。
2.承認を示すハンコ(意思確認)
文書の書式、内容を確認し、認めたこと、意思を示すハンコ。稟議書に押されるハンコが代表例。文書を電子化し、ハンコの代わりに、承認システムを使うようになりつつあります。
以前の記事「労働生産性を上げる脱ハンコ、課題は『承認』作業」で触れたように、意思確認の脱ハンコは、「承認とは、何をすること」から見直さないと生産性向上には、繋がりません。今回は、ハンコの2つの役目の内、証拠としてのハンコを取り上げます。
電子契約のメリット。必要な期間が1週間から3分に
電子サインに切り替えることで、脱ハンコが実現し、紙の契約書を取り交わす際の印刷、作業、郵送などのコストを大幅に削減できます。また、外部との契約であれば、郵送等で1週間程度契約期間がかかっていたものが、数分で終わります。この待ち時間短縮が、生産性向上においては大きな威力を発揮します。
脱ハンコの電子契約に証拠力を持たせる3つの要素
従来の書面契約では、契約書に印鑑で押印する事で「その契約書が本人同士により作成されたこと」「その契約書は改ざんが行われていない本物であること」を証明し、合意内容の証拠として残しています。
これに対して、脱ハンコである電子契約は、従来使われていた紙の代わりに、電子データに電子署名とタイムスタンプを付与することで、書面と同等の証拠力を残す契約の締結方法です。
契約においては、「誰が」「いつ」「正しく」(非改ざん)の3要素を証明する必要があります。書面契約は、これを紙と印鑑で実現しています。一方、電子契約では、電子署名とタイムスタンプが、これに代わります。印鑑や契約書が厳重に管理されるように、電子契約のドキュメントは、暗号化されてクラウドのサーバーで保管されます。書面契約と電子契約で、証拠としての力には、差はありません。
脱ハンコの電子署名とタイムスタンプとは
電子契約で使われる、電子署名とは、紙に押す印鑑と同様に電子文書が正式かつ改ざんされていないということを証明するものです。PDFなど電子データに直接押印できないため、指定認証局が発行する電子証明書と、いつ押印したかが証明できる時刻認証事業者によって提供されるタイムスタンプを付与します。この2つによって電子署名は効力を発揮することができます。
電子契約は電子署名法により、本人によって行われる電子署名が付与されていれば、公に認められます。
電子サインツール選定
脱ハンコの電子契約を実現するには、電子サインベンダーと言われる会社のサービスを受ける必要があります。
電子サインベンダーには、「DocuSign」「クラウドサイン」「Adobe Sign」等々多くの会社があります。契約や維持費用にそれほど、差はないようです。しかし、自社と他社とが利用するものであり、慣れや信頼感が重要です。
例えば、DocuSign*は、機能面もありますが、米国でブランド化しており、「電子署名=DocuSign」と認識されています。海外との取引が多い会社では、その信頼度から利用が多いようです。
* DocuSign(ドキュサイン):アメリカ発の電子署名サービス。電子署名サービスとしては全世界で約7割のシェア。米国の不動産契約の約90%がDocuSignを使用。(DocuSignのHPより)
今後日本でどうなるか分かりませんが、マイクロソフトやGoogleのように「多くの人が利用しているから便利」の原則が働き、利用される会社が集約される可能性があります。無理に自社に合わせた仕様にして利便性を求めて、ガラパゴス化してしまうことを避けたいものです。
まだ日本では、電子契約の電子契約の内容が、紙をPDF化し、ハンコを電子署名に変えたものが多いようです。これでも、生産性向上、コストダウンが見込めますが、さらにPDFをデジタルデータ化し、変更のリアルタイム化や複数の契約内容とのリンクなどの発展を期待します。
まとめ:脱ハンコで電子契約は今後の流れ
ハンコの2つの機能の内、証拠機能(本人確認)改善について、書面契約から電子契約への移行について述べました。政府が呼びかけた脱ハンコは、多くの人がそのメリットを認めつつ、導入はマダラ模様です。しかし、コロナ禍を機会として一気に電子契約が主流となることが予想されます。デジタル化に後れを取っている小規模事業者においても、電子契約のメリットが大きいと思われ、普及を期待します。