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AHDサイクルとは?AIと人間が協働する課題解決プロセスを解説

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

AHDサイクルとは?AIと人間が協働する課題解決プロセスを解説

 

AI協働型課題解決「AHDサイクル」とは

「AI時代」といわれる今、AIと人とがいかに協力して課題を解決していくAHDサイクルについて解説します。

AHDサイクルが必要な理由|AIは万能ではない

「AIに課題解決案を出させたけど、修正が多くて使えない」
「AIに何をさせて、人が何をするか分からない」

こんな悩みをお持ちではありませんか。結論から言えば、(今のところ)AIは万能ではありません。私の経験から、その理由と有効な活用法をご紹介します。
最近、私の周囲では、プログラムの知識がない人でも、日本語の指示でAIを使ってプログラム作成やプレゼン資料作りを始めています。このようなAIによる「効率化」(自動化)は、AIの持つ可能性の一部に過ぎません。無論、これだけでも大きな成果です。しかし、AIには、「考えさせる」(高度化/価値創造)という、AIの力が特に生きる使い方があります。
職場や会社における様々な課題の解決は、AIに「考える」という機能を発揮させる場面の1つです。AIを従来の計算ソフトの延長で使う「作業効率化」では、情報の整理はできても解決策は出てきません。AIに解決策を出させるには、適切な指示(プロンプト)を出す必要があります。では、適切な指示を出せば、AIは万能になるのでしょうか。そうはいきません。
かつて私が勤めていた会社の工場は、阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受けました。社外の銀行やコンサル会社の多くは、経済性の面から「工場を復旧せず生産拠点を移転する」案が妥当だと考えていました。(私自身もこの考えでした。)しかし、当時の幹部が選んだのは「会社発祥の地」での復旧でした。その結果は、従業員や復旧を支える人々の熱意と努力が予想を超え、1年以上かかるとみられた復旧は6か月で終わりました。もし当時AIがあったなら、複数の選択肢の中で「他の場所への移転」を推奨していたと想像します。しかし、「元の場所での復旧」を選択したのは人です。
AIに全て任せて(丸投げして)、解決策を求めるような「マネージャー」としての使い方は、この震災の例のように、各人の価値観や納得感を必ずしも満たすとは限りません。むしろ、人がAIを「参謀」として使う協働方式が優れていると考えます。
AIには得意とする役割があります。その1つが、ある課題に対して網羅的に影響や対策を出すことができることです。一方、人には、価値観や世界観、あるいは「好き嫌い」といったことから、「選ぶ」という能力があります。人の選択は、必ずしも合理的ではないかもしれませんが、「選択したことに納得する」のは人間です。数学のように絶対的な正解のない課題に対して、ある解決策を「正しい」と判断するのは人間の役目です。

AHDサイクルとは、AI協働型課題解決プロセス

この人間とAIの協力による課題解決の方法として、AI協働型課題解決プロセス「AHDサイクル」を提案します。AHDサイクル(AI–Human–Deepening Cycle)は、
 発散(AI)→ 収束(人間)→ 深化(AI)
という基本要素で構成されます。(注:AHDサイクルは、私の造語です。)

AHDサイクル

AHD Cycle Problem-Solving Process 

図は、小宮作成(2026年)

先ほどの例を使えば、当時AIがあったとして、
①AIが、被災した工場の処置案を出す。(発散)
②人間が、複数の処置案から工場復旧案を選ぶ。(収束)
③AIが、工場復旧案の詳細を検討する。(深化)
というプロセスです。さらに、工場復旧案を発散→収束→深化のAHDサイクルで、実行案まで具体化させていくことができます。
なお、このAHDサイクルは、「ダブルダイヤモンド」*といわれる、思考のフレームワークを基に、AIの役割を組み込んだ考え方です。ダブルダイヤモンドは「発散→収束」を2回繰り返します。AHDサイクルは、その各場面にAIの役割を割り当て、さらに「深化」を加えたものです。
この記事では、AI協働型課題解決プロセス(AHDサイクル)と、そのメリット、デメリットをご紹介します。

*ダブルダイヤモンド(Double Diamond):
英国デザイン協議会が提唱した、課題解決までのプロセスを可視化したデザイン思考のフレームワーク。「発散(アイデアを広げる)」と「収束(選択肢を絞る)」を2回繰り返す形が、2つのダイヤモンド(◆◆)に見えることから名付けられた。

 

AHDサイクルを使った課題解決のプロセス

従来の人が行う課題解決は、
①情報を分析し、解決案を作る
②どうするかの意思決定を行う
③決定した案を深掘りする
という流れです。このプロセスの中に対話型AI(ChatGPTやCopilot、Claudeなど)を組み込むことで、精度と効率を上げることができます。この方法のひとつが、冒頭に紹介したAHDサイクルです。
このAHDサイクルは、次の3ステップで構成されます。
① AIが情報を分析し、網羅的に影響や課題・対策を列挙する(発散)
AIが大量のデータや知識を調査し、対象の事象の影響・課題・対策案を網羅的に提示します。人間が一人で考えるよりも、幅広い視点で列挙できます。人間がヒントを与えるような指示が大切です。例えば、以下のプロンプトです。
「当社は従業員300人の製造業で、新入社員の早期離職が課題です。人件費の増額は難しい状況です。この条件で、解決策をできるだけ出してください。例えば『初任給を上げる』といったこと以外に、どんなことがあるか挙げてください。」
なお、前提として、人が課題と状況(制約条件など)をAIに伝えることが必要です。
② 人間が、その中から採用するものを選ぶ(収束)
列挙された選択肢のどれを採るかは、人間が決めます。この選択は、正確性や情報量の問題ではなく、「責任と当事者性」の問題です。人間が選ぶことで、意思決定の主体性が保たれます。
③ 選択したものをAIが深掘りする(深化)
選択された方向性・対策について、AIが詳細化・構造化・リスク分析・実行計画などを深掘りします。例えば、AIに対して以下のようなプロンプトを出します。
「新人の離職問題の解決策として、『新人の希望職場に配属する』を採用します。これを実施した場合の影響を抽出してください」
この回答に対して、人間が内容を確認し、重要な影響に対して対策案をAIに問いかけるといったプロセスを繰り返します。
このAHDサイクルのポイントは、データから対策を抜けなく(正確には、抜けを少なく)抽出するAIと、主体的に選択する人間の関係です。

 AHDサイクルのメリットとデメリット

AHDサイクルのメリット

メリット1:観点の抜けが減る

AIは大量の知識を横断的に把握し、網羅的に観点を提示できます。人間が一人で考えると、経験や関心に引きずられて視野が偏りがちですが、AIはその偏りを補います。選択肢を抽出する段階は、人間同士やAI内部で「ブレスト」をしているようなものです。人だけ、AIだけより、AIと人とのやり取りで、より幅広い選択肢が抽出できます。
また、AIによる網羅的な抽出は、リスク管理や戦略立案のように「抜け」が致命的になる場面で有効です。

メリット2:意思決定の主導権が人間に残る(人の価値観が明確化する)

AIが案を出し、人間が選ぶという構造は、意思決定の主体性を保ちます。AIの出力に流されず、自分の判断として納得して進められます。
何を選択するかは、その人の判断基準や世界観に関わります。冒頭の震災の例のように、経済性に劣る案を、あえて人が選ぶことがあります。多くの選択肢を前に「何を捨てるか」を決める過程は、
「自分が何を重視しているか」
を浮かび上がらせます。これは、管理職や企画職にとって「重要な資質」ともいうべき能力です。

メリット3:思考の負荷配分が最適化される

網羅的な列挙という労力のかかる作業をAIに任せ、人間は判断という本質的な部分に集中できます。これにより、思考の質が向上しやすくなります。
また、方向性が決まってからAIに深めさせるため、無駄な探索が減り、成果物の質も上がりやすくなります。

AHDサイクルのデメリット

デメリット1:網羅性は完全ではない

AIの列挙は「網羅的に見える」だけで、実際には学習データの偏りや文脈の取りこぼしがあります。「全部挙がっている」と思い込むと盲点が生まれます。
また、指示(プロンプト)の偏りも、網羅性を下げます。
この問題に対して、「他に見落としはないか」「反対の観点は何か」とAIに再質問することで補えます。例えば、以下のようなプロンプトです。
「解決策は、経済的な合理性に偏っていませんか。他に、『新人の気持ちを重視』した解決策を探してください」

デメリット2:選択肢の提示の仕方が判断を誘導する

列挙の順番、分量、言い回しによって、人間の選択は影響を受けます。「選んでいるつもりが、選ばされている」可能性があります。
例えば、経済性に重きを置いた選択肢の提示は、経済性を重視した選択をしがちになるかもしれません。
人間が、自分の価値判断をもとに主体的に選択する姿勢を失わないことが重要です。AIに対して、以下のような問いかけで自分の主体性が保てます。
「『初任給を上げる』を中心に案を出してもらいましたが、私は、新人の納得感、長期的な定着、短期的なコストの優先順で選びます。各案をこの3要素で比較してください。」
このような、選択の優先順をAIに指示することは重要です。
さらに、選ぶ作業を常にAIに頼ると、自分で選択肢を考える力が鈍りかねません。時には、AIに尋ねる前に自分の案を書き出しておくと、主体性を保てます。

デメリット3:情報過多と誤情報が混入するリスク

情報を扱う場合、量と質の問題が必ずと言っていいほど付きまといます。AIが参照する情報には、ネット上のものが多く含まれ、誤情報が混じることがあります。また、正しくても少数派の情報は、出現回数が少ないため軽く扱われ、多数派の情報が優先されることもあります。
このため、人が行う選択や深掘りをする際に検証が必要になります。この検証の労力が負担になります。
また、選択肢が多すぎて選びにくい場合は、
「影響の大きい順に上位5つに絞ってください」
と指示します。
人の検証において、以下のようにAIを利用することもできます。
「提案された内容の根拠を一次情報から確認し示してください」
この時注意が必要なのは、AIが示す根拠そのものが誤っていることもあります。重要な点は、人が一次情報で直接確認します。
また、提案を求める前に、以下のようなプロンプトを加えることをお勧めします。
「提案する際は、その根拠を同時に示してください」
デメリットの多くは、再指示と人の確認を重ねることで、補えます。丸投げと違い、AHDサイクルでは、誤りに気づく機会が残ります。

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まとめ AHDサイクルを活用するポイント

「AIが網羅し、人間が選び、AIが深める」というAHDサイクルは、AIの強みと人間の責任ある判断を組み合わせた協働モデルです。このサイクルを効果的に使うには、次の4点がポイントです。
1)網羅性を過信しない
2)人が主体的に選択する
3)深掘りする際、さらにAHDサイクルを回す
4)根拠は人が確認する
ただし、AIが示す根拠そのものが誤っていることもあります。重要な点は、人が一次情報で確認します。
AHDサイクルを使うことで、AIを効率化の道具から、人がマネジメントするための「参謀」へと発展させましょう。

参考記事:思っている以上にすごいAIエージェントの破壊力

対話型生成AIは、ユーザーに「忖度」するかも知れないので要注意

 

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