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部下に「優しく」しているつもりが、「甘やかして」いませんか?

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

部下に「優しく」しているつもりが、「甘やかして」いませんか?

 

部下に「優しく」しているつもりが、「甘やかしている」上司

「若手の部下に任せた仕事が停滞しているとき」上司のあなたは、どうしますか?
1)具体的に仕事を手伝う。
2)いくつかの解決策を示す。
3)「君ならできる」と激励する。
こんな対応を思いつきます。どれも「優しい」対応です。最近は、部下との摩擦を避ける傾向があり、いきなり叱りつけたり、放置してしまったりする上司は減りました。過激な言葉で圧力を掛ければ、たちまちパワハラで訴えられかねません。だからといって、部下の仕事の停滞を放置しておくこともできません。部下を脅さないように、部下から嫌われないようと配慮した対応をしてしまいがちです。
上記で挙げた3つの対応例は、「優しい」対応と述べましたが、同時に「甘やかし」にもなり得えます。部下の仕事を手伝ったり、いろいろアドバイスしても、部下がそれを当たり前として受け取り続ければ、「甘やかし」に変わります。
上司は、部下に実務をさせると同時に育成をしなければなりません。いろいろと丁寧に指導しても、部下が
「頼めばなんでもやってくれる」
「嫌ならやらなくても怒られない」
という思いが生まれると間違いなく「甘やかし」の状態です。部下に「甘え」癖がついてしまうと、部下からの要求も増えることになり、他人に依存しやすい「受け身社員」を生んでしまします。
「優しくしている」つもりが「甘やかし」になっていることが、上司自身が自覚できないこともあります。相手を本気で思う時、優しさとは「厳しさ」に変わるものです。
この記事では、「優しさ」と「甘やかし」の違い、メリットとデメリットの例を紹介します。

「優しさ」と「甘やかし」との違い

「甘やかし」とは、一時しのぎの対処です。長い目でみると事態を悪化させます。
「優しさ」とは、長い目でみて部下を成長させる行動です。上司と部下の間に信頼を築いていくものです。
上司の部下に同じ対応をしても、部下の実力や受け止め方によって「優しさ」にも「甘やかし」にもなります。部下が、「助けて欲しい」と感じていつ時、手を指しのべるにあたり、無条件に相手の要求を受け入れるのは、「優しさ」ではなく「甘やかし」です。助けてあげたいと思うとき、長い目でみて「甘やかしたい」気持ちを我慢することが「優しさ」になります。嫌われる覚悟で厳しい優しさを提供できる人は、必ず相手から感謝してくれることになります。

かつて私は、
「さっさと仕事を片付けろ! お前のせいで、皆が迷惑している!」
などと上司からよく怒鳴られていました。
「自分も皆に迷惑をかけているのは、分かっている。でも、できないから苦しんでいるのに!」
こう思うのですが、口に出して反論したら、倍返しで罵声を浴びせられそうで、黙るしかありません。今、こんな野蛮な上司は少数派です。ところが、ある時この上司は、不満そうな私に向かって一言
「俺だってどうすればいいか、解決策なんて持ってない。お前に期待している。」
これだけで、上司の正直さや「優しさ」を感じて救われたような気がしました。


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新入社員に「甘え」を許して離職を防く例

新入社員の3年以内の離職率は、やや低下したものの新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%です。(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年度)」そんな中、あえて「甘え」を許して、高卒採用者の離職率をほぼゼロにしている会社がネットに紹介されていました。(出典:日経ビジネス「ゆとり社員」は甘やかしなさい」)この記事によれば、この会社がやったことは、新入社員だけ、一定期間始業時間を遅くすること。新入社員の指導係に、パートの女性社員たちを任命しているとのことです。
最近の子供達は、昔の感覚からすると「甘え」の中で育てられています。いきなり、規律を押し付けても拒絶反応がでます。だから、時間を守ることも徐々に慣れさせます。また、今どきの高校生が、まともに会話できる相手は、実は母親だけという実態があるといいます。友達とは、「一緒にいる」けど、「会話がない」状態。彼らは友達と「一緒にいる」としても、同じ場所を共有しながら、個別にゲームやLINEを楽しんでいるだけ。最近では、コロナの影響もあって益々家族以外「会話がない」状況が強くなっています。そんな中、新人の教育係には、お母さんのように優しいパートの女性社員がぴったりだったのです。
「甘やかす」ことが、継続すれば、いずれ弊害が出てきます。どこから、優しさをもった「厳しさ」に移行していくかが大切です。

 

顧客の「甘え」に応えて失敗した例

法人向けの営業などをしていると、個別の顧客の要望に応えたくなります。過度な値引き要求に答える、極端な短納期に対応するなどなどです。大口取引先のT自動車工業、韓国のS電子などと名前が出るだけで、会社全体が「かしこまる」状態になります。特に日本企業にこの傾向が強く、価格や納期などでまっとうな交渉にならず、顧客の「甘え」としかいいようのない要求を受け入れてしまいがちです。顧客の「甘え」に応じて、無理に値引きをして、受注を増やしても長続きしません。短期的に心地よい気分に浸るだけです。
かつて、山一証券という日本を代表するような会社がありました。この会社では、株価が下がった時、特定顧客の損失を裏で補填していました。これが発覚して会社が潰れてしまいました。顧客の「甘え」を許してしまった結果ともいえます。(出典:「巨大証券破綻の衝撃… 山一證券はなぜつぶれた?」
顧客にとって、「特別」扱いをされることは、気持ちのいいことです。ところが、山一のように違法までいかなくても、無理して「甘え」を許してしまうことがあります。例えば、担当の営業が変わったとたん
「前の営業に人は、これくらいやってくれたのに、今度に営業はやってくれない」
「以前は、よくゴルフに誘ってくれたのに今度の営業担当は・・・」
などと顧客のグチが出ることがあります。これまでが、例外だったのに、いつの間にか「あたり前」になっており、元に戻せなくなってしまうのです。顧客に提供する「甘え」は、どこまでやるかではなく、どのくらいの期間やるかの方が問題です。
社員であれ、お客様であれ、「甘え」は、短期的な快適さを提供するだけで、長期的には是正していくことが「優しさ」でしょう。

 

まとめ

「甘さ」とは、一時しのぎの対処。長い目でみると事態を悪化させる。
「優しさ」とは、長い目でみて相手を成長させ信頼を築くことができます。
同じ対応でも、相手の受け止め方や頻度により、「優しさ」にも「甘さ」にもなります。相手の成長のためには、「優しさ」をもった「厳しさ」が重要。

参考記事:リーダーの「良い質問」が、部下を成長させ、チーム力を上げる

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