企業の経費を下げて即効的に利益を増やす、固定費削減2つのステップ
企業の経費を下げて即効的に利益を増やす、固定費削減2つのステップ
即効的に利益を増やす固定費削減2つのステップ
「利益を上げるには、固定費を下げろ」
「固定費の変動費化が、利益増の決め手」
こんなノウハウが、経営の本やネット記事としてよくあります。いうまでもなく利益は、企業にとって最も重要ことの1つです。利益は、以下の式で表されます。
(利益)=(売上高)–(変動費)–(固定費)
これだけです。利益を増やしたければ、売上を増やすか、変動費、固定費を下げるかです。売上が一定なら、利益を増やすには、変動費か固定費を減らすしかありません。変動費は、売上に比例し削減するには、手間と時間がかかります。例えば、製造業の生産現場では、変動費である生産原価の低減のため材料の見直し、使用材料の低減、不良品率低減など日々大きな努力がはらわれています。
一方固定費は、人件費や家賃、設備費などで、売上が下がったときなどは、大きな利益圧迫要因になります。固定費の低減は、そのまま利益増になり即効性があります。そんな理由からか、利益増において固定費削減が注目されます。
固定費削減には、2つのステップがあります。
1)長い間見直されていない固定費科目を見つける
2)固定費を固定的部分と変動的部分とに分ける
長い間見直されていない取引相手、契約内容には、実情に合っていない部分に気付かず必要以上の出費がされているものがあります。まず、注目すべき固定費科目を見つけます。
次に、注目した固定費科目について削減方法を検討します。
各企業では、生産や販売に必要な経費を固定費科目と変動費科目とに区別して管理しています。しかし、実際は経理上固定費に分類されている科目であっても、固定的な部分と変動的な部分があります。固定費削減は、
科目ごとに固定的な部分と変動的な部分とに分けて、削減策を考えることが有効です。
固定費に分類されることが多い、光熱費も固定的な基本料金と変動する使用料比例部分があります。電力の例では、基本料金と最大使用量で区別される部分と使用料に比例する部分とがあります。日常的な節電(変動部分)とともに、適正な基本料金契約に変更することで削減できることがあります。
最近は、EX(デジタル改革)の推進が叫ばれています。EXにより人件費、広告費、家賃など固定費が、劇的に下がることが期待されます。しかし、一方ではデジタル関連の固定費が大きな負担になる可能性があります。固定費の中に、固定的な部分と変動的な部分とに分けて管理、経費削減対策を立てることで、総合的な経費削減が期待されます。
変動費と固定費の区別「固変分解」
経費を変動費と固定費に区別することを「固変分解」といいます。変動費と固定費を明確に区別するための絶対的な基準は存在していません。業種によっては水道光熱費やリース代が変動費になるケースがあります。また、一定の営業時間内の給与は固定費ですが、残業代などは変動費に区別されます。そこで、固変分解するときは、「勘定科目法」もしくは「回帰分析法」を用いて判断します。多くの企業で、勘定科目法が用いられているので、以降「勘定項目法」で説明します。
勘定科目法は、勘定科目ごとに「この経費は変動費」「この経費は固定費」と一つひとつ振り分けていく方法です。判断に迷う勘定科目は、どちらの性質が強いかを企業が判断して区別します。業種によって変動費と固定費それぞれに区別される経費は異なります。中小企業庁が製造業、卸・小売業。建設業に分けて例を上げています。以下にその例を紹介します。
製造業における固定費と変動費の例(出展:中小企業庁HPより)
固定費:
直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費
変動費:
直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品仕入原価、当期製品棚卸高、期末製品棚卸高、酒税
この区別をみて、自社の場合とかなり異なる印象を持つ方もいるのではないかと思います。例えば、日本で人件費は固定費の代表です。ところが、自分の経験した米国の工場では、ホワイトカラーの人件費は固定費、ブルーカラーの人件費は変動費として計上していました。この考え方に基づき、ホワイトカラーには残業代が付きません。ところが、ブルーカラーには残業代が付きます。実際にしたことはありませんが、ブルーカラーは、生産量に応じてレイオフ(一時帰休)できるとの考え方があるのかも知れません。あくまでも、その会社の実情にあった「個変分解」をすることが、経費節減には有効になります。
固定費の削減の2つステップ
長い間見直されていない固定費科目を見つける
固定費削減において一番に目をつけるべきは、慣習化して長い間変わっていないことです。顧客の接待や贈答などの交際費の多くが、慣習となって使われ有効性を見いだせなくなっています。長い間、契約先も内容も変わっていない取引も要注意です。家賃契約、保険料、リース契約、「定員」と考えている人件費など定期的に内容を確認、見直すことで思わぬ経費節減ができることがあります。
工場や事務所において、5S活動として整理・整頓をすると、使われていないモノが見つかります。長い間使われていないモノや設備を廃棄したり有効活用することで、モノやスペースなどに関連する固定費の削減ができます。
固定を固定的な部分と変動的な部分とに分ける
固定費とされている科目について本当に固定的な部分と変動的な部分とに分けることで、削減ヒントが見つかります。特に先に上げた、慣習化している契約は要注意です。例えば、家賃、光熱費、通信費、支払い運賃等々です。リモートワークの拡大で広過ぎるようになったオフィス、省エネの普及で最大電力使用量が下がっている工場、通信アプリや新規サービスが増えているなど、状況が変化したにも関わらず、同じ契約を続けていませんか。
また、最近はサブスクリプションといわれる定額料金のサービスが増えています。固定的な費用の増加ですが、使用頻度が多ければ全体として費用減になります。
まとめ
企業で利益を上げるには、固定費の削減が最も即効性があります。固定費削減には、2つのステップがあります。
1)長い間見直されていない固定費科目を見つける
2)固定費を固定的部分と変動的部分とに分ける
長い間見直されていない固定費科目に注目し、科目ごとに固定的な部分と変動的な部分とに分けて、削減策を考えることが、経費削減には有効です。
参考記事:職場の改善・改革が進まないのは「行動しない人」がいるから