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間接部門の人員が多過ぎるのは、仕事量のピークに合わせて人員配置するから

2021/09/14
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

間接部門の人員が多過ぎるのは、仕事量のピークに合わせて人員配置するから

 

間接部門の人員が多くなる理由

「日本企業の間接部門人員は多過ぎる」
「間接部門が多過ぎるから日本の生産性が低い」
こんなことが、よく言われます。実際、デロイトトーマツ社の調査「要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査によれば、調査した248社において間接部門に従事する人は、11.7%(2019年)です。これは、2012年の調査9.8%からみると約20%増加しています。

各社の業態や事情があり、この数字だけでは、一概に多いとか少ないとかの判断はできません。しかし、「間接部門比率を抑えよう」と言われる中、現実には間接部門の人員比率が増加しているのです。

製造工場で勤務している人が、事務所や本社に行くと
「間接部門の人員が多過ぎる」
と言うのは、あながち的外れではないようです。

事実、11.9%の数字を従業員1000人の会社に当てはめれば120人、400人の会社では50人も間接部門にいることになります。(この数字に営業部門は入りません!)
ところが、間接部門と言われる総務、経理、人事や企画管理では、残業が多く有休も取りにくく、人手不足感があるのが、当事者感覚ではないでしょうか。システム化が進み、最近では脱ハンコも試みられているのですが、大きく間接部門の人員を減らした会社は多くありません。

間接部門の人員が多過ぎる理由の1つは、繁忙期の仕事量に合わせた従業員を抱えていることです。間接部門では、閑散期と繁忙期での仕事量の差が大きく、繁忙期(ピーク)に合わせて人を抱えてしまうことです。ついつい慢性的に残業の多い個人に注目して全体像を錯覚し、人を増やしてしまうのです。

間接職場に限らずどんな職場にも繁忙期と閑散期があります。日、週、月の中で波があります。午前中は暇で、午後3時頃になると急に忙しくなり残業となることもしばしばです。週末や月末に忙しくなる。また季節要因では、期末や採用時期に仕事のピークが来ます。仕事を平均化できれば、いいのですが、様々な制度や慣習があり困難です。現実的には、仕事の繁忙期(ピーク時)に合わせて人を配置し人員過剰になるのです。

間接部門において、仕事の繁忙期(ピーク時)に合わせて人員を抱えてしまうのには、3つの理由があります。

① 管理監督者が業務効率化を仕事と思っていない
② 一人がする業務の範囲が狭い
③ 組織を超えて仕事をしない

この3つを克服できれば、間接部門の人員を過剰にすることを避けられます。また、これらの対策を行うなかで、仕事の総量を減らす、平均化を図る、能率を上げることが付随して達成できることが期待できます。

参考記事:なんでも屋の総務部がオフィス業務を効率化する5つのポイント

 

管理監督者が業務効率化を仕事と思っていないため

一般に間接部門の管理監督者は、生産部門に比べて業務効率化についての関心が薄い傾向があります。生産部門でトラブルが発生して生産が遅れたり、急な納期の仕事が入ったりすると残業等で対応します。同時に職場の問題として、管理監督者に報告され、1次対策と恒久対策が立てられます。管理的対策や設備対策など様々な視点で対処し改善します。これが、日本の製造業の強さです。

ところが、間接部門では、仕事が遅れても、よほどのことがない限り担当者のみでトラブルに対応します。管理監督者が、担当者にトラブルが起きたこと自体を知らないことも多いものです。管理監督者は、仕事が「完了」したかどうかにしか関心がありません。「この仕事がうまくできたか」「なぜ残業をしなければならなかったか」など業務の能率や効率には関心がありません。「残業をしなければならない状況」は、生産現場でいえば、設備が故障しているか、生産能力を超えた状況です。「なぜそうなったか」「どうすればよいのか」など、管理監督者が中心になって原因と対策を考えます。「製品が納期までに出来上がりさえすればいい」などと思っている管理監督者はいません。

間接部門の管理監督者であっても、「仕事を完了させる」だけでなく、
「より楽に」「より速く」
といった業務効率化も同等に大事な仕事です。安直に残業時間だけをみて「人を増やさなくては」とか、担当者の「人を増やして欲しい」との声だけで、人員配置をしてしまう結果、間接部門は人員が多いと言われる状況になります。

一人がする業務の範囲が狭い

間接部門では、実に様々な仕事があります。例として、総務部の仕事を上げてみます。

出典:ソニービズネットワークス株式会社総務とは何か? 総務部の具体的な仕事内容と理想像に迫る」

・文書や印章、固定資産・備品、消耗品などの管理

・保安・防災業務

・情報セキュリティの整備

・受付業務

・福利厚生業務

・安全衛生管理

・従業員の健康管理

・社内外の慶弔業務

・社葬の実施

・秘書業務

・会社行事、イベント業務

・働き方改革の促進

・契約、契約書管理

・株主総会・取締役会業務

・株式管理

・IRの実施

・社内・社外広報

・ホームページの管理業務

・官公庁との渉外

・地域との渉外

・社会貢献活動

・環境対策

・リスクマネジメント

・業務委託管理

業務効率化活動の中で、総務部の人に仕事を書き出してもらったことがあります。15人ほどの部署で、多くは表のようなものですが、細分化していくとその数は150を超えました。そこで、総務部に12年在籍するベテラン社員に、
「このうちいくつの業務を経験もしくは出来そうか」
と尋ねました。その結果「出来る」もしくは「出来そう」と答えた仕事は、1/3にも満たなかったのです。更に他の社員に同様に尋ねてみるとベテラン社員の半分以下です。

受付や福利厚生手続き、官公庁への届けなど、やれば誰でもできそうな定型化した業務もマニュアルが整備されておらず、人に聞かないと仕事ができないことが分かりました。この部署には、「やったことがある人がやる」との暗黙のルールが生れていました。人がいない時や上司に命令されて始めて「やったことのない仕事」に着手するのですが、慣れていないせいで極めて能率が悪く、「担当者が出社してくるのを待つほうが早い」ということになりがちでした。

同じ部署内で、忙しい人を支援するには、複数の仕事をこなすスキルが必要です。
1)一人が複数の仕事ができるスキルを身に付ける(多能化)
2)マニュアルを整備する(標準化)
この2点が重要です。これにより、部署内各人の仕事の平準化を進めることが可能になります。現実に同じ部署で、残業時間が極端に多い人と少ない人が混在しています。仕事の偏りを解消することが、間接部門の人員過多を防ぐことに繋がります。

組織を超えて仕事をしない

先ほどの例のようなわずか10数人の総務部内でも、仕事の相互支援が少ないものです。ましてや同じ間接部門でも人事、経理、総務となると壁が高すぎて全く支援などありえないと思います。しかし、やった実例を紹介します。きっかけは、全くの偶然でしたが、経理出身者が総務に異動していて、決算時期に元の職場を手伝ったのです。昔の職場ですので勝手が分かります。そして、総務の同僚に声を掛けて経理の仕事を支援したのです。

指導する人やマニュアルがあれば部署を超えた支援は可能です。そのためには、
1)部署を超えて仕事を支援した人を評価する
2)他の部署の人にもわかるマニュアルを用意する
3)外部の人に頼める仕事を仕分け用意しておく
等の環境を整備しておく必要があります。特に部署を超えて行った仕事を評価する意識が各所属長に求められます。全体最適化に貢献したかどうかで、評価することが重要です。また、他の部署に人に頼む仕事を日頃から明確にしておくことです。「余人をもって代えがたし」といった仕事は、全体の数%です。繁忙期、仕事のピーク時、この部分の仕事は他部署に頼むと決めマニュアルを整備している例があります。更に、もし他部署から人が出なければ、外注することまで準備しています。

まとめ

間接部門の人員が多過ぎる理由は、仕事の繁忙期(ピーク時)に合わせて人員を抱えてしまうことにあります。そうなるのには、3つの理由があります。
① 管理監督者が業務効率化を仕事と思っていない
② 一人がする業務の範囲が狭い
③ 組織を超えて仕事をしない
ことです。この対策を打つことで、間接部門の人員過剰を克服することが期待されます。更に、仕事の総量を減らす、平均化を図る、能率を上げることが付随して達成できることが期待できます。

参考記事:労働生産性を上げる4つの要素と労働生産性の3つの表現方法



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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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