「CAから始めるPDCAサイクル」で、PDCAサイクルの欠点が克服できる
「CAから始めるPDCAサイクル」で、PDCAサイクルの欠点が克服できる
PDCAサイクルは「嘘」
P(計画)には、調査や試行、判断の過程が含まれている
「PDCAは、スピード感がない」
「形骸化したPDCAは、役に立たない」
「PDCAサイクルは、もう古い。OODAループの時代だ」
企業の品質改善や業務改善手法として、日本中に広まったPDCAサイクルですが、今このような批判にさらされています。PDCAサイクルは、有効性がなくなったのでしょうか。
そもそもPDCAサイクルは、1950年代にE・デミングが、日本に統計的品質管理手法を紹介したことから始まりました。モノの品質管理の手法としては、今も健在で有効な手段だと思います。しかし、「PDCAサイクルは、広く仕事の仕方、改善業務に当てはまる」とされてきたことには、私は当初から疑問を感じてきました。
改善業務過程を後からPDCAに沿ったストーリーでまとめるとうまくいきます。実際には、試行錯誤の繰り返しでも、PDCAの手順で改善したことにできます。多くの企業で実施されているQCサークルの成果発表では、PDCAに沿った美しい改善の「物語」が創作されています。
仕事の仕方、業務改善を「PDCAサイクルに沿って行った」というのは、元から「嘘」です。Pの計画を作る段階で、何らかの調査が行われていなければ、作ることはできません。また、やったことのない改善の過程など想像は困難です。目標や実行計画など作れません。実際には、調査や試行があって、計画が作られています。計画Pの中に調査や試行そして意思決定のプロセスが含まれているのです。
PDCAサイクルを使って改善しようとするとき、まずCAがあって、PDCAに続くと考えるべきです。Pの前に、CAを要領よくやることで、PDCAサイクルの欠点とされている
① P(計画)に時間がかかる
② イノベーションを伴うような改善に適用できない
③ PDCAが目的化する
などが克服でき、有効にPDCAサイクルの活用ができるようになります。
これは、30年以上様々な職場の改善業務を見て、PDCAに沿ってつくられた「嘘の物語」に付き合わされて得たものです。実際の現場が、沢山の試行錯誤やリーダーの経験と直観による決断で改善が行われています。しかし、PDCAを指導する人(指導機関)は、現実を知らないか、知っていても無視して、「PDCAによる改善物語」を作ってきました。そこに「PDCAが目的化する」といわれる理由があります。そこで、
「CAから始めるPDCAサイクル」
を推奨します。PDCAサイクルの前に、CAを入れることで、実際の改善のプロセスに地近づきます。そして、迅速性が生れ、イノベーションなど未知のものへの対応ができるようになります。始めにCAを行い「計画」Pというレールが敷かれれば、PDCAサイクルは強力です。個人や職場の改善が進むことが、大いに期待できます。
「CAから始めるPDCAサイクル」とは
PDCAサイクルを仕事の進め方や業務改善に使う時の最大の問題点は、Pの計画を作れない。作るのに時間がかかることです。このことから、「PDCAは、古い。OODAループの時代だ」などと言われます。OODAループでは、①観察(Observe)し、②情勢への適応(Orient)、③意思決定(Decide)に分解します。そして、④行動(Act)です。「CAから始めるPDCAサイクル」では、始めのCAに対してOODAループと同様なことをするのです。
既に個人としてやっていること、行っている業務を改善する場合、改善計画Pを作ることは容易です。しかし、何か新しいことを始めよう、イノベーションを目指すと、計画Pそのものができません。そこで、「CAから始めるPDCAサイクル」では、まずCのチェックをします。(OODAループの観察O)
例えば、あなたが何か資格を取り、仕事に役立てたい(起業したい)とします。テーマはAI活用。AIを勉強して、JDLA(日本ディープラーニング協会)のAI資格を取ることを目指すとします。しかし、馴染みのないAI分野で、いきなり資格を取るまでの学習計画を作ろうとしても無理です。まず、どんな方法で勉強するのか。独学か、通信教育か、学校があるのか調べます。また、資格を取った人の勉強法、失敗した人の勉強法など他人の学習法を調べることです。これが、チェックCです。
人が何かをしようとするとき、必ず前に同じこと、同じようなことをした人がいるものです。当然、成功例もあれば失敗例もあります。自分でオリジナリティのあると思っていても、大抵モデルになる例があります。
成功したやり方、成功した人をモデルとして見つけることが近道です。見つからなければ、失敗したやり方、失敗した人と反対のことがモデルです。そして、可能ならばモデルとした事例の話が、当事者から直接聞けたら最高です。
この時の注意点は、チェックCに時間をかけ過ぎないことです。最も成功した例を知りたい、失敗例をすべて網羅したいと思いがちですが、調査は想定した期間で終わらせます。大抵のことは、3日から1週間もあれば、調べられます。方法を決めて(OODAループのOとD)試行(A)に当たることに移ります。実行していく中で、もっといい例が見つかれば、それを参考にすればいいのです。
アクションAをしてから、計画Pを作る
Cのチェックでモデルが見つかると、そのモデルを真似て、やってみることです。これが、Aのアクションです。実際にやってみると難易度も含め、いろいろなことが判ります。
先ほどの例では、AIを勉強した人の勧めるテキストを購入しての独学が、自分にも出来そうと思えば、すぐにそうすべきです。もちろん、どんなテキストを何時間、どんな方法で勉強すするかなどは、できるだけ資格を取った人と同じことをすることです。
Aのアクションでは、初め「このやり方は、ハード過ぎる」と思えたことが3週間続けると習慣化して、楽にできるようになります。それでも「やはり無理」と思えることもあるかもしれません。その段階で、実行が継続可能か、変更が必要か判断し、Pの計画を作成するのです。
試行したあとですから、計画Pは目標だけでなく、過程を含めた実現可能なもの作成できます。目標が具体的になり、その達成時期も想定できます。
Pの後は、参考書にあるようなPDCAサイクルを実施していきます。モノ作り現場で、PDCAサイクルは、品質管理で多くの実績があります。各種改善においても、PDCAサイクルは、一旦動き出したものの管理には、有効な手段となります。
まとめ
PDCAサイクルは、既存のモノに対する改善では有効です。しかし、迅速性やイノベーションを伴う改善では、迅速性や柔軟性などに問題があります。「CAから始めるPDCAサイクル」の手法を使うことにより、PDCAサイクルの欠点である、1)P計画に時間がかかる 2)イノベーションを伴う改善に使えない等の欠点を補うことができます。初めに行うCAは、OODAループの思考法と同様であり、迅速性や柔軟性を持つことができるのです。