「今更やめられない」という「サンクコストの呪縛」から逃れる3つのステップ
「今更やめられない」という「サンクコストの呪縛」から逃れる3つのステップ
「サンクコストの呪縛」から逃れる3つのステップ
「見たい選手が出場しなくてもチケットがあるので、野球観戦を今更やめられない」
「会社がいやでも、今更やめられない」
「10年研究開発を続けて、今更やめられない」
やっていることが納得できない、不合理であると感じても、「今更やめられない」ことが、個人、企業、国として溢れています。
これを「サンクコストの呪縛」と呼びます。サンクコスト(=埋没費用)とは、「回収ができなくなった投資費用」を意味します。購入済みのチケット、これまで会社に勤めた時間、これまで研究開発に投資した資源などが、サンクコストです。
サンクコストを発生させたの後、辞めたり、捨てたりすることは、金や時間が無駄になるようで、「もったいない」という心理が働きます。「もしかしたら今後は、うまくいくかもしれない」とも思います。その結果が、「今更やめられない」という「サンクコストの呪縛」です。この結果、悶々とした気分となり、業績の停滞などを招きます。
この「サンクコストの呪縛」から逃れるには、以下の3つのステップが必要です。
1)「サンクコストの呪縛」に陥っていないか意識する
2)「サンクコストの呪縛」と認識したら、すぐに行動する
3)「損切り」は、徹底してやる
「サンクコストの呪縛」にハマり、「今更やめられない」状態に陥るのは、それまで「うまくやってきた人や会社」が陥ることが多いものです。それは、「捨てられないもの」を持っているからです。この3つのステップで「サンクコストの呪縛」から一刻も早く逃れ、成長のステージに入る道筋を紹介します。
「サンクコストの呪縛」に陥っていないか意識する
いろいろな場面で「今更やめられない」状況に、個人として会社として陥ります。例えば、損失を出している新規事業について、撤退か継続かを問われる場面があるとします。この際、これまでの苦労や投資金額を思うと「今更やめられない」状況に陥ります。これこそが、「サンクコストの呪縛」です。
損失がでていて、既に投資した人、金、時間が惜しくて「今更やめられない」状況は、「サンクコストの呪縛」とすぐわかります。問題は、実害が出ていない状況で、機会損失をしている状況です。例えば、効率の悪い古い機械が更新されないような例です。使い慣れているし、金がかかるので更新をためらっている。システムでは、クラウドの方が発展性や運用コストで有利と分かっていながら、従来からの基幹システムの改修にこだわる。自分が今の会社に向いていないと思いつつ、転職できないでいる。金を払って入った映画が、面白くなく、それでも終わりまで映画館に留まるのと同じことです。
それらは、すべて「サンクコストの呪縛」です。課題に直面して、対応に迷っているとき、それは「サンクコストの呪縛ではないか」と、自問することです。そして、決断に迷っていることが「サンクコストの呪縛」であると認識してください。
「サンクコストの呪縛」と認識したら、すぐに行動する
「サンクコストの呪縛」に陥っていると認識したら、すぐに行動することです。サンクコストを惜しむあまり、何もしないでいると、損失が膨らみます。
赤字の店舗や工場、下落の止まらない株などは、迷って対応が遅れるほど傷が大きくなります。その結果、
益々「今更やめられない」状況が悪化します。
人の記憶には、損したことは、長く残るものです。一方、得したことはすぐ忘れます。人に貸して帰ってこない金、クーポン券のもらい損ない、釣り銭の誤り等々です。人の気持ちとして、わずかでも損失は避けたいと思いがちです。しかし、わずかな損失を惜しむあまり、大きな機会損失を生むことになるのです。
「サンクコストの呪縛」に陥っていると認識したらすぐ行動すること。株の世界では、下落した株を売ることを「損切り」と言います。「サンクコストの呪縛」に陥っていると認識したら、「損切り」をすることです。行動が遅れると、また迷いだし、益々「サンクコストの呪縛」から逃れられなくなります。
「損切り」しないと決めることもあります。今後の改善を期待すると決めた場合です。この時は、「損切りをしない」と決めたことを意識し、当面そのことを考えないことです。会社が合わないと思い、転職するかどうか迷っている状況を引きずることは良くありません。「サンクコストの呪縛」から逃れるには、すぐに転職するか転職の準備に入ることです。転職しないと決めたら、転職のことは封印し仕事に集中すること。
部屋に溜まった本、モノ、衣服などで「サンクコストの呪縛」を意識したらすぐに行動することです。
「損切り」は、徹底してやる
「今更やめられない」ことにやっと手をつけても、それが中途半端だと十分な結果が得られません。
かつてギャンブル依存症で借金漬けの部下がいました。ギャンブルをしない約束と引き換えに会社から融資をし、その金で返済しました。
「もう借金はないな」
と念を押したのですが、数年後職場に怪しげな電話がかかってくるようになりました。その社員には、隠れた借金が残っていたのです。残っていた借金が増殖して、元の木阿弥です。結局、会社を辞め、自己破産ということになりました。
会社の経営でも不採算部門を一気に「損切り」できず、長引かせることがあります。「今更やめられないこと」をやめるときは、一気に損を出すことです。日本の多くの企業は、収益を気にしながら「損切り」するので、なかなか事業の再生ができないでいます。
外国企業や名経営者と言われる人は、企業の再建に当たって、事業撤退や思い切ったリストラを徹底的に断行します。その結果、一時的に大きな赤字を出しますが、すぐに回復することが可能です。そして、世間では「見事なV字回復」と賞賛されます。
まとめ
やっていることが不合理で成果が期待できなくても、「今更やめられない」ことが、個人、企業、国として溢れています。これを「サンクコストの呪縛」と呼びます。「サンクコストの呪縛」から逃れるには、以下の3つのステップが必要です。
1)「サンクコストの呪縛」に陥っていないか意識する
2)「サンクコストの呪縛」と認識したら、すぐに行動する
3)「損切り」は、徹底してやる
この3つのステップで「サンクコストの呪縛」から一刻も早く逃れ、成長のステージに戻ることを期待します。