日本の有休取得率を上げ、同時に労働生産性も上がる3つの方法
日本の有休取得率を上げ、同時に労働生産性も上がる3つの方法
有休取得率を上げれる3つの方法
「有休取得率が上がらない」
「有休が取りにくい」
こんな悩みに答える、有給休暇の取得率を上げ、労働生産性も上がる方法を紹介します。それは、
1)職場の年間スケジュールに個人の有休取得日を入れる、
2)休暇中の仕事は、他者が完全に代行する、
3)病気による休みは、別枠で有休とする、ことです。
これは、私が実際に米国で仕事をした経験に基づく見解です。彼らの有休取得率は100%です。そして、労働生産性は日本よりはるかに高いのです。実際に彼らの仕事ぶりに接し、有休取得率100%でかつ高い労働生産性は、この3つが鍵だと分かりました。
日本の職場においても、これらは実践でき、有休取得率100%でかつ高い労働生産を目指すことができます。
日本の有休取得率の実態
厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によると、1年間に会社が付与した年次有休日数(繰越日数を除く)は、 労働者一人当たり平均18.0日、そのうち労働者が取得した日数は10.1日で、 取得率は56.3%となっています。この取得率を見る限り、それなりに有休は取得できているようです。ただし、業種や企業規模による差があること。会社として有休奨励日を設けて半強制的に有休を取らせているところもあり、実感としてはもっと少ないように感じます。
エクスペディア社の調査によれば、世界19ヵ国の国際比較調査で最低の取得率です。
有休取得率を上げるには、職場の年間スケジュールに個人の有休取得日を入れること
米国の工場で仕事をしていた時の話です。毎年1月初旬、従業員が集まり真剣な会議をしていました。職場の年間スケジュール表に個人の有休取得予定日を入れるのです。米国では国として有休を取得させる法律がなく各企業が設定します。平均で14日です。私のいた会社は、12日/年でしたが、そのすべてを1月にスケジューリングします。
子供が夏休みになる季節やクリスマス時期は、有休希望が多く重なります。一方、会社が鉄鋼であることから1日24時間365日休みなしの稼働体制です。皆が一斉に有休を取ることができません。
「昨年のクリスマスは、我慢したから、今年は俺の番だ」
などと従業員同士が、壮絶なバトルを繰り広げ、挙句は抽選などで予定を決めていました。もちろん持っている有休日数すべてをスケジューリングします。予備の有休日数を持つことはありません。
年間の有休予定を職場で共有していますので、うっかり有休予定日に出勤しようものなら
「夫婦喧嘩でもしたのか」
とからかわれます。また、上司から「休まなかった理由」を聞かれるほどです。課長以上の管理職で、半日だけ出勤したり自宅でパソコンを見ていたりする者もいますが少数派でした。
年度初めにその年に使えるすべての有休日数を予定表に割り振ること。そして、この予定表を職場で共有化することで、取得率は必ず上がります。もちろん、職場において、業務が遂行できるように、有休を取る人の配分を考えての予定表が必要です。
有休取得率を上げるには、休暇中の仕事を他者が完全に代行すること
有休が取れないのは、休暇中の仕事を代行する人がいないことが原因の1つです。有休を取っている間、業務が止まってしまうようでは、思うように有休が取れません。業務を完全に代行できる人と方法を確保する必要があります。
私のいた米国工場の例では、従業員は普段残業がありません。他の人が有休をとった場合、それを残業でカバーします。一人12日間の有休をとりますので、12日x8時間=96時間/人です。これを月にすると一人8時間/月です。(年20日の有休でも、一人13.3時間/月)これくらいなら、残業でカバーできます。普段の仕事は、限りなく残業ゼロに近づけておくことが重要です。
休暇中の仕事を完全に他者が代行できるようにするといくつかのメリットが生れます。
① 代行することで、仕事の仕方が共有化できます。
代行した人が、休暇を取る人の仕事の仕方を知ることで、能率的な仕事を学ぶことができます。(その逆も有ります)
② 書類や電子データの共有化ができる。
代行する人が分かるように、個人が管理する書類やデータを共有化する必要があります。データのみならず、様々なことの整理整頓が進みます。
③ 標準化、マニュアル化が進む
代行する人が、スムーズに仕事をするために、標準化・マニュアル化が有効です。特に複数の代行者を作る場合必須です。
有休をスムーズにとれるために、互いに仕事ができるようにすること。これは、結果として全体の業務効率化を図ることができます。
有休取得率を上げるには、病気による休みは、別枠で有休とすること
「有休を病気などの緊急時の為に取っておく」との理由で、有休を残しておく人が多くいます。毎年実施されているエクスペディア社の調査において、「緊急時のために取っておく」は、常に有休を取得できない理由の上位です。2019年の調査では、これが1位でした。
「緊急時の為に有休を取っておく」は、日本独特の制度からきたものです。米国や欧州はもちろんのこと中国でも、病気による休みを有休扱いにしています。(限度がありますが)
私のいた米国の会社では、病気の時は、会社に連絡を入れる条件で有休扱いとしていました。幸い、これを悪用されたことはありません。ただし中国では、結構乱用されるので、医師の診断書を提出させるようにしました。中には、偽造した診断書をもって来る者がいて、首にしたことがあります。
実際には、病気で会社を休むのは、年に3日以内が大半です。また、長い期間病気の為に休む場合は、各社とも別途制度があり、病気による休みを一律に与えられる有休の別枠にしても影響は少ないと見られます。
米国工場の例では、健康診断や通院などで、数時間から1日会社を抜けることも別枠の有休としていました。日本で2時間ほど病院に行くために、丸一日分の有休を取るなどといった無駄もありません。
病気のための休みを別枠の有休とするには、人事規定を変える必要があり、容易ではありませんが、是非実現したいことです。
まとめ
日本において、有休取得率は依然低い状況です。1)職場の年間スケジュールに個人の有休取得日を入れる 2)休暇中の仕事は、他者が完全に代行する 3)病気による休みは、別枠で有休とすることで、確実に有休の取得率を上げ、かつ高い労働生産性を実現することができます。