「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

業務改革・改善が何度も失敗する理由は、その会社の過去(歴史)をみれば分かる

2021/09/19
 
改革会議をする人
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

業務改革・改善が何度も失敗する理由は、その会社の過去(歴史)をみれば分かる

 

失敗を繰り返す業務改革・改善とは

「売上低迷から脱するための営業改革をしても成果がない」
「労働生産性向上を目指して業務改善しても続かない」
「業務改革で新システムを導入したのに、利用率が低い」
特に悪い会社ではないのに閉塞感が漂う会社の特徴です。様々な改革・改善をするのに、失敗続きで浮上でいない姿があります。統計が取れないので正確には言えませんが、日本にある長い歴史を持ちながら低迷している多くの会社の姿ではないでしょうか。

現状打破に向けて、綿密な事業分析をして戦略をたて、業務改革・改善案を作り実行します。ところが、何度試みても業務改革は失敗、あるいは中途半端に終わる。業務改善が停滞している状況は変わらない状況です。それでも、ある社員は、「そこそこ良くはなっている」と言い、他の社員は、「やはり、この会社はダメなんだ」と思います。

改革・改善が「そこそこ良くなっている」から、会社が倒産せず存続しています。しかし、「やはり、この会社はダメなんだ」から、何度も改革・改善を試みるのです。本当にうまくいっていれば、継続的に改善が行われ、ことさら「改革・改善」と叫ぶ必要もありません。どちらの意見も正しいのです。なぜ、業務改革・改善が失敗するのでしょうか。それは、

「業務改革・改善が、失敗を繰り返すのは、その会社の失敗パターンに乗ってしまうから」

です。これは、長年自ら業務改革・改善を失敗したり、社内改革を指導したりする中で、気付いたことです。

会社や組織の過去における改革・改善活動を振り返って調べると、その会社や組織のもっている成功パターンや失敗パターンが重要であることに気付きます。何度も改革・改善活動をするたびに、同じような失敗を繰り返していることに気付きます。そこには、共通する失敗パターンがありました。逆に成功するパターンもありました。

いくら教科書に従った分析を行い、改革案を作っても、実施段階でうまくいかないのは、改革案に共通の欠点があるか、運用の段階で共通の問題があるからです。その企業や組織が持つ、過去から続く失敗のパターンに乗らず、成功のパターンに乗って、改革・改善の成果を出す方法をお伝えします。

 

なぜ、改革・改善がうまくいかないのか

これから、冒頭に上げたような改革・改善がうまくいかないのか。それは、最終的に
1)業務内容の把握が不十分で、改革や改善策が不適切
2)改革・改善の浸透策が不十分
の2点に集約されます。簡単に言えば、「改革・改善案」が悪いか、「運用」が悪いかです。以下具体的な例を上げてみましょう。

「改革・改善案」の問題
① 改革案が現状の業務を踏まえた内容になっていない
② 改革が「部分最適」になってしまっている
③ 経営の意見、現場の意見の何れかに偏っている
④ 全体適用するには、インフラが不足している

「運用」の問題
① 改革・改善の目的・趣旨が、現場に理解されていない
② 改革・改善案を実施せずとも、業務が遂行できる
③ 現場には、改革・改善案を実施してもメリットがない

これらは、改革・改善の失敗でよく出てくる「反省」点です。これらは全て、正しいことです。次なる改革・改善案の作成や運用に、この「反省」は反映されます。しかし、失敗や中途半端な成果で終わることが繰り返されます。足らないものが、あるのです。

改革会議

Reform failure

前回の失敗の反省だけでは、足らないもの

前回の改革・改善の失敗を反省しても見えないものがあります。それが、冒頭紹介した、その会社や組織の失敗パターンと成功パターンです。時系列的に、これまでの会社や組織の過去(歴史)を分析すると見えてきます。

「改革・改善案の現状分析が不十分」との反省のもと、次の改革・改善プロジェクトを実施したのに、同様な問題が生れます。これは、「前例を十分に現状分析した」としている認識レベルが低いのです。同様に、「今度は、目的や趣旨の十分な説明をした」と考えるレベルか低いのです。

では、なぜ毎回失敗する改革・改善において、「十分と考えるレベル」と考えてしまうのでしょうか。そこが、その企業や組織の過去(歴史)を振り返るポイントです。

 

改革・改善の失敗を繰り返さない為にできること

その会社の過去(歴史)を分析から成功と失敗のパターンを知る

その会社や組織が、過去に行った改革・改善を改めて調べることが重要です。過去の資料が残っていれば利用できますし、ベテランの社員に聞くのも有りです。ただし、資料にしても社員の話にしても、歴史は自己正当化する特徴があります。真の原因はなんであったか、先入観抜きで考えてみることです。

記録にある反省、社員の意見は、真偽のほどは別にして、社員の共通の経験になっています。「人は、自分の経験という引き出しから物事を判断しがち」です。改革・改善の失敗が続くと、
「次もたぶん失敗する」
「本社の連中が企画することなど、実情に合っていない。改善と言いながら、現場の手間が増える」
と言った考え方が透けて見えます。これも、また失敗のパターンの一部です。そして、改革・改善で少しでもその認識に合致するようなことが起きると
「それ、みたことか。やっぱり、本社主導の改革はダメだ」
と後ろ向きの反応が起き、本当に失敗するのです。

改革・改善が失敗するパターンはいろいろですが、いくつかの例を上げてみます。
① 長い間経営を継続してきた会社で、決定的な危機に直面したことがない
② 過去の改革・改善の失敗が、マイナスイメージとして定着している
③ 法的な規制に守られた業界にいる
④ 絶対的な大手顧客がいる、親会社の守られている
⑤ 絶対的なワンマン経営者がいる、等々
極大雑把に言えば、社員に危機感が欠如し、失敗しても大丈夫との潜在意識が、毎回の改革・改善活動を失敗パターンの上に乗せてしまっているのです。

 改革・改善の失敗パターンに乗らない対策

1)本当の危機感を醸成する。
コロナ禍がいい例です。変えないと生き残れない状況であることを従業員に理解させることです。「売上が伸びなければ、従業員の1/3は解雇されるか、倒産する」といった具体的な危機感を社員で共有することが必要です。

2)失敗のパターンを避けて、成功のパターンに乗せる
先に失敗のパターンの例を上げましたが、それを避けることです。具体的例を上げます。

① 社長や経営陣が、改革・改善が本気であることを見せる
② 従業員に対して、事前に表と裏から説明する
③ 変更が、労働時間短縮や給料アップとリンクしている
④ 大手顧客、親会社など外部の理解と圧力を利用する、等々

各社各組織の特徴に沿った案を深堀してください。

他にも使える会社の過去(歴史)分析。例えば、「成功体験の悪影響」

ある企業で、最近の売上低迷の原因を検討していた時の話です。良く行われるマトリックス分析を使いました。企業(商品)の強みと市場の規模や成長性を図にしての分析です。この会社は、過去に技術の商品を製造して大きな売上を上げていました。ところが、市場が変化し、低価格の商品に押されているようです。

会議では、
「うちの高い技術の商品が、売れないのか。それは、市場か変わったからだ」
などと言った議論がなされていました。
そこで、「かつてその商品は、なぜ売れたのか」をもう一度調べてみました。確かに、商品の性能は今も昔も業界トップクラスです。ところが、過去に売上が急増した経緯を丹念に見ていくと、お客様である自動車業界では、当時米国では衝突安全基準大幅に引き上げられ、全車種について対応が迫られていました。このため、新基準に対応した商品が供給不足に陥り、この会社の売上を伸ばしていたのです。技術力ではなく、供給力が武器になっていたのです。その後、競合他社の供給力が拡充され、安全性問題も沈静化すると、売上が低迷し始めたのです。この会社の幹部も従業員も、安全基準変更特需が無くなったことは理解していましたが、「あの時は、高性能だから売れた」との誤認識が修正されることはありませんでした。

「なぜあの時売れたのか」という冷静な過去の分析は、重要です。よく落ち目の企業に対して
「過去の成功体験から抜けられない」
と評論されます。しかし、その成功体験をより深く議論することが少ないようです。冷静に「過去の成功」の原因を分析して、本当の「強み」「弱み」を発見することが大切です。

参考記事:企業文化がつくられる3つの要素と企業文化を変える方法

まとめ:改革・改善を成功させるには、成功のパターンに乗せること

企業や組織が、失敗を繰り返す改革・改善は、その会社の失敗パターンがあるからです。その企業や組織の過去を調べれば、失敗や成功のパターンが分かります。改革・改善を成功させるには、成功のパターンに乗せることです。また、成功や失敗の記録を事実として忠実に残すことが重要。

参考記事:「業務効率化が、進まない3つの理由...」

Sankei Bizシャープ、捨てられなかった成功体験 自力再建断念…

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2021 All Rights Reserved.