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トラブル対応に最適、「If-Thenプランニング」を活用した、マニュアル作成

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

トラブル対応に最適、「If-Thenプランニング」を活用した、マニュアル作成

 

「If-Thenプランニング」を活用した、マニュアル作成のポイント

「製造設備が異常停止した」
「資材が入ってこない」
「顧客からの急な仕様変更やクレーム」
製造現場や営業職場では、想定外の「非定常」な事態が発生します。
各職場には、標準作業書やマニュアルがあり、日常の作業に関して、「どうするか」が綿密に書かれています。ところが、冒頭のようなトラブルが発生したときの対応は、何も書かれていないことが多いものです。私の働いていた製造部門のマニュアルにも、非定常時のことは何も書かれておらず、最後に
「トラブルの際は、上司に連絡すること」
と一行書いてあっただけでした。
「設備モーターから異音がしているのですが?」
と上司に連絡したら
「そんなこと、自分で調べて判断しろ!」
と言われて、ムカッとしたのを今でも覚えています。
トラブル等「非定常」の場面では、通常マニュアルに記載されていない判断や行動が求められます。その際、個人の経験や勘に依存すると、属人化や対応のばらつきが生まれます。これを防ぐ有効な手法の一つが「If-Thenプランニング」です。
「If-Thenプランニング」は心理学や行動科学の分野で研究されてきた手法で、「もし○○が起きたら、××をする」という形で、あらかじめ条件と行動を結びつけておく考え方です。行動を自動化・迅速化できる点で、非定常時の対応力向上に大きく寄与します。
「If-Thenプランニング」を、職場の作業標準やマニュアルの非定常時対応に適用することができます。例えば、
・If:「モーター付近から異音が発生した場合」
・Then:「回転部の温度と振動を確認する。」
・If:「その値が異常範囲に入っていたら」
・Then:「設備を停止し、上司へ報告する。」
といった内容が書かれていたら、作業者が判断に迷ったり、遅れて事故に繋がったりすることが防げます。
「If-Thenプランニング」をマニュアルに適用することのメリットには、以下のようなことがあります。
1)即応性の向上
2)属人化の防止と教育の効率化
3)心理的負担の軽減
一方、注意すべき点として
1)条件設定が多すぎると混乱する
2)マニュアル作成・更新に手間と時間がかかる
3)判断の自動化が「思考停止」につながるリスク
いったことがあります。これらを考慮して、If-Thenプランニングが活用できれば、大きなメリットが得られます。

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「If-Thenプランニング」をマニュアルに適用することのメリット

マニュアルに「If-Thenプランニング」を適用したとき得られるメリットを実例とともにご紹介します。
1)即応性の向上
非定常時でも「次に何をすべきか」が明確なため、初動が早くなります。特に、災害・異常・トラブル発生時には、数分の判断遅れが大きな損失につながります。
たとえば、製造現場で作業員が倒れた時のマニュアルとして以下のようなものがあります。
・If:作業者が意識を失って倒れているのを発見した場合
・Then:①周囲の安全を確保(窒息、有毒ガスの可能性をチェック)、②救出、③119番通報と社内緊急連絡、④AEDを持ってくる。
といった内容です。更に、「もし、酸欠や有毒ガスが疑われたらどうするか」、「もし、一人での救出が困難な場合はどうするか」といったように、If-Thenは枝わかれします。
こんな形で、明確な行動連鎖を設定しておくことで、パニック下でも迅速に行動できます。
2)属人化の防止と教育の効率化
マニュアル化する際、様々なIfに対して、Thenに当たる「どうする」が、人によって異なることに気付くはずです。経験豊富なベテランの「暗黙知」をIf-Then形式に変換することで、組織全体の共有知にできます。
また、業務を教育する際には、If-Then形式のマニュアルを使うことで、「状況別の対応」を体系的に教えられます。想定問答集のような形式で使うと、理解が早まります。
3)心理的負担の軽減
「If-Thenプランニング」は、あらかじめ「もし起きたらこうする」と決めてあることで、緊張や迷いを減らす効果があります。これは、営業・接客・安全対応など、すべてに共通する心理的メリットです。
If-Then形式のマニュアルに従って、すべての手を打っておけば、
「やることはやった。後は天命を待つだけ」
といった気分にさせてくれます。

「If-Thenプランニング」をマニュアルに適用するときの注意点

マニュアルにIf-Then形式を適用するときには、いくつかの注意点があります。
1)条件設定が多すぎると混乱する
現場では、「もし○○なら…」を細かく設定しすぎると逆に混乱します。重要なのは「発生頻度が高い」「影響が大きい」事象に絞ることです。また、安全等は大原則を掲げておくことが重要です。
例えば、
・If:安全上何かあったら、
・Then:優先順は、①自分の安全を確保する、②仲間を助ける、③設備を守る、④製品を守る
といった優先順をIf-Then形式で決めておくことも有効です。
2)マニュアル作成・更新に手間と時間がかかる
「非定常時」における作業や行動について、マニュアル化できない大きな原因は、その作成に手間と時間がかかることです。
まず、非定常時を想定することが大変です。安全に関することでは、KY(危険予知)を行い、「起こりそうなこと」をリストアップします。(Ifの抽出)これに対して、どう行動するか(Then)を立案します。Ifの作成もThenの立案も経験がないと容易ではありません。
また、If-Thenプランは、設備や顧客、組織体制が変われば陳腐化します。定期的な見直しを仕組み化することが必要です。
3)判断の自動化が「思考停止」につながるリスク
あまりにもIf-Thenに頼りすぎると、状況判断力を育てる機会を失います。教育段階では、「なぜこのIf-Thenなのか」を理解させること、相手がある場合、相手の気持ちを推測することを加えることが重要です。
例えば、価格交渉において、If-Thenで対応パターンを整理しておくと効果的です。
・If:顧客が「他社より高い」と言った場合
・Then:①相見積りの条件を確認し、②納期・品質・アフター条件を比較、③差分が小さい場合は特別値引きを上司へ申請。
と言った具合に決めておくと、「即答で値引きに応じる」リスクを防げます。ところが、相手は、
「当社の事情がお分かりいただけた以上、即決で価格を決めて頂きたい」
と迫られたら、
「上司と相談して」
などと言い出せる状況ではなく、自分の判断が必要となるでしょう。

マニュアル作成に生成AIを活用する

If-Thenプランナーを活用して、マニュアルを作成・更新するに当たり、最近ChatGPTなどの生成AIを活用することができます。
具体的には、トラブル事例やクレーム対応の報告書を学習させ、IfとThenの組み合わせパターンを整理する方法です。
実際には、Ifのパターンを出し、これに対応するThenをAIに優先順を付けて並べさせるというものです。実際に作成してみると、AIの作成文書をそのままマニュアル化するは難しいかも知れませんが、おおよそ満足なものができます。
ただし、注意点として、クレーム情報、顧客情報、社内技術情報などが外部流出する恐れがありますので、対策が必要です。

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まとめ

「もし○○が起きたら、××をする」という形で、あらかじめ条件と行動を結びつけておく「If-Thenプランニング」は、行動を自動化・迅速化できる点で、非定常時の対応力向上に大きく寄与します。
「If-Thenプランニング」をマニュアルに適用することのメリットには、以下のようなことがあります。
1)即応性の向上
2)属人化の防止と教育の効率化
3)心理的負担の軽減
ただし、作成・更新に手間がかかる等の注意点があり、対策が必要です。

参考記事:使い方から考える、役に立つマニュアル(作業標準)の作り方

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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