「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

相手から気付きを含んだ答えを引き出す質問、「問いかけ」の効果

 
忙しい人に問いかける人のイラスト
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

相手から気付きを含んだ答えを引き出す質問、「問いかけ」の効果

 

相手から気付きを含んだ答えを引き出す「問いかけ」とは

「ここにあるスパナやペンチは、何に使うの?」
「これらの工具は、いつも使っているの?」
これは、工場内をパトロールしていた現場リーダーのTさんが、チーム員に発した質問です。この職場は、「改善提案」の件数において、千人規模の会社で常にトップクラスを維持しています。なぜ、改善提案数が多いのか探ってみると、リーダーTさんの存在が大きいことに気付きました。Tさんの得意技は、「質問」のようです。
Tさんは、散乱した工具を見つけたとき
「片づけろ!」
と言う前に、
「なぜ、そこにあるの?」
「そこに置いていた方が、都合のいいことがあるの?」
といった様に、相手の事情を探り出す質問をしています。そして、散々質問したあと、
「どうしたらいいと思う?」
と相手から対策を引っ張りだし、改善提案に結び付けるというパターンを持っていました。

いきなり製造工場の現場の例を紹介しましたが、このように「質問」には、職場において問題点を発見したり、改善策を見つけたりするヒントを見つけ出す力を持っています。
ただし、「質問」といっても様々な種類があります。先ほどの例で、もしも
「なぜ、ここにスパナやペンチを置いてあるの?」
と怒鳴れば、形は質問でも「叱り」や「行動を促す」ための「詰問」であり、「答え」など期待していません。むしろ下手に答えたら、詰問者の怒りを買います。
他にも、「分からないことを問う」という「質問」や挨拶としての「質問」などがあります。
このように「質問」には、多くの種類がありますが、大抵「質問者のため」のものです。質問者が分からないことを知る、会話のきっかけを作る、相手に行動させるといったことです。
これに対し、例として挙げたTさんの「質問」は、「相手のため」のものと考えることができます。相手に「気付き」を促し、「考える」ヒントを与えるような「質問」です。質問で期待するのは、正しい回答ではなく、「相手の気付きを含んだ答え」です。
このような「質問」は、コーチングで多用され、「問いかけ」もしくは、「コーチング・クエスチョン」と呼ばれています。
相手に「気付き」や「考える」きっかけをつくる「問いかけ」には、以下のような効果があります。
1)頭の中が整理され課題が見つかる
2)新しいアイデアを生み出す
3)やる気になる
これらの効果を期待する「問いかけ」は、単にYSE、Noで答える「クローズドクエスチョン」ではなく、「オープンクエスチョン」と呼ばれる自分で言葉を選び、自分で文章を考えて、答えなければならない質問の仕方で行われます。この過程の中で、上記のような効果が生まれます。
この記事では、「問いかけ」の効用について、例を挙げて紹介します。

広告

読むだけコーチング (BYAKUYA BIZ BOOKS)

「問いかけ」で、頭の中が整理され課題が見つかる

目の前の仕事に追われていると、
「そもそも何のために仕事をしているのか?」
「どうしたら楽に仕事ができるか?」
といったことを考えることがありません。「問いかけ」は、質問によって、相手に現状について客観的に考えさせ、課題があることを気付かせることができます。
「働き方改革」の一環で、事務部門の効率化に取り組んでいたとき、経理課のベテラン女性社員にこんな質問をしたことがあります。
「なぜ、月末になると帰宅が遅くなるのですか?」
すると、
「経理課は、月末忙しいのは当たり前です。」
という答えが返ってきました。そこで、
「なぜ、月末になると忙しいのですか?」
と訊くと
「月末締めの事務処理や資料づくりがあるからです。」
との答え。
「そんな仕事、普段からやっておけないのですか?」
「各部署からくる伝票やデータが月末にならないと来ないのです」
「なぜ、月末にならないと各部署は伝票を出さないのですか?」
「それは・・・」
こんな「問いかけ」を繰り返しているうちに、彼女は、
経理課の「働き方改革」の課題は、各部署から伝票等のデータが毎日来ないことにあると結論付けました。
各部署からのデータが月末にまとめて経理課に大量に送られてきて、仕事が月末に集中することは、当事者は分かっていることです。しかし、外部から「問いかけ」を受けて、改めて「月末の忙しさ」の理由を考えてみると、本当の課題がなんであるか明確に意識できたということです。
これは、組織外の人が、当事者が当たり前と思っていることに対して改めて、
「なぜ、月末は忙しいの?」
などと基本的な疑問がなされることで、問題の存在が認識された例です。
新任者、リーダー、外部の人が投げかける「問いかけ」は、当事者の頭の中を整理し、課題を見つけるのに大いに役に立ちます。
「問いかけ」は、外部の人に限らず、自分自身に問いかけることもできます。効果は、同じです。それは、当事者が「問いかけ」に対する答えの材料を一番持っているからです。他人からであれ、本人からであれ、「問いかけ」に答える中で問題点が明確になって行きます。

 

「問かけ」は、新しいアイデアを生み出す

「質問」によって、新しいアイデアを生み出すことができます。そもそも「考える」ということは、頭の中で「質問」をつくり「答え」を探すことです。
先ほど例に挙げた月末に経理課が忙しくなるという例では、その後も「各部署から伝票等のデータが毎日来ない」という課題に対して「問いかけ」を続けました。
「各部署の人は、どうして月末にしか伝票やデータを送ってこないのですか?」
「締め切りが、月末の25日になっているからでしょう」
「締め切り日を早めたら、どうなりますか?」
「忙しさが早まるだけかも知れません・・・」
そんな質問と答えのやり取りをしているうちに、
「各部署に来た請求書を経理に回すのは、来た日から5営業日以内。出張精算等も5営業日以内と決めたらいいのでは」
というアイデアに行きつきました。更に、自動で5日目が迫っていることを知らせるアラームを出す仕組みが作れないかとのアイデアも出ました。
その後、これらのアイデアは、実行されて「働き方改革」に寄与しています。
会社の研究部門に元大学教授を顧問として来ていただいていたことがあります。シリコンに代わる新しい半導体材料の研究をしていました。この先生は、よく実験をしている研究者に「問いかけ」をされていました。
「電気抵抗を測定しているようですが、何を期待しているのですか?」
「その元素を入れることで、どんな効果があると思います?」
「分子構造上、どこにその元素が入っていると思います?」
「それが本当なら電気抵抗以外、どんな変化がでますか?」
先生のお聞きすると、「自分の興味で『問いかけ』をしているだけ」と言われていましたが、先生の「問いかけ」で、次々に新しい実験プランが生まれ、材料開発のアイデアが生まれていきました。そして、なにより「問いかけ」を通して優秀な研究者が育っています。

やる気になる「問いかけ」

「質問」が「詰問」になってしまうと、相手は反感を覚えたり、萎縮したりして、「やる気」も失せてしまいます。一方、うまく「問いかけ」ができれば、相手に「やる気」も起こすことができます。

ある職場で、リーダーから
「どんな環境だと気持ちよく働ける?」
と質問を受けたAさん。思わず
「言いたいことが言える職場だったらいいのですがね」
と本音を漏らしてしまいました。続けて
「Aさんのやりたくない仕事は何ですか?」
と問いかけられ、
「意味のない形だけの仕事です。それと、上司が指示する、社長や役員に見せるための仕事」
という答えを返しました。これには、問いかけたリーダーが身の引き締まる思いがしたといいます。
Aさんは、答えてしまってから、「マズいことを言ってしまった」と一瞬後悔したとのことですが、リーダーが答えを遮らず聞いてくれて、ほっとしたとのこと。実はAさん、最近職場になんとも言えない閉塞感があることを気にしていて、仕事に打ち込めないでいたのです。
Aさんが希望したことが、すぐに叶う訳でもないのですが、自分の気持ちをリーダーが受け止めてくれることで、「何か変化がおきるのでは」との期待も生まれ、やる気がでて来たと言います。
大事なのは、その後リーダーがどう行動するかということではありますが、「問いかけ」に答えるだけでも気持ちが変わることがあるという例です。

広告

まとめ

相手に「気付き」や「考える」きっかけをつくる「問いかけ」には、以下のような効果があります。
1)頭の中が整理され課題が見つかる
2)新しいアイデアを生み出す
3)やる気になる
これらの効果を期待する「問いかけ」は、「オープンクエスチョン」で行われ、これらの効果がうまれます。

参考記事:「地頭(じあたま)のいい人」とは、「考える」ことを習慣化している人のこと

周囲をイラつかせる「質問力」のない人の4つの質問パターン

リーダーシップ能力の他に必要な日本の「出来る上司」の能力とは?

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2025 All Rights Reserved.