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「不」を並べる欠点列挙法と「あったらいいな」を並べる希望点列挙法の利用例

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「不」を並べる欠点列挙法と「あったらいいな」を並べる希望点列挙法の利用例

 

「不」を並べる欠点列挙法と「あったらいいな」を並べる希望点列挙法とは

「従来商品の『不便さ』を解消するアイデアを思いつき商品を改良」
「日頃から『こんなものがあればいいな』と思っていたことを実現した新商品を開発」
これは、商品開発(改善)において、欠点を改善した例と希望をかなえた例です。
他にも業務改善、新設備の導入、システム開発などにおいて、同様にアイデアを出す際、欠点からアプローチする方法と、希望点からアプローチする方法とを利用することができます。前者を「欠点列挙法」、後者を「希望点列挙法」と呼びます。
実際に「欠点列挙法」を使うときは、「不○○」といったものを列挙することになります。例えば、「不便」「不自由」「不満」「不十分」「不足」等々です。
一方、「希望点列挙法」では、「あったらいいな」というモノや機能をリスト化することです。
希望点列挙法と欠点列挙法には、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、職場の業務改善に欠点列挙法を使うと、問題点を明確にして迅速な改善が可能ですが、ネガティブな雰囲気や対症療法的な改善にとどまるリスクがあります。
一方、希望点列挙法では、ポジティブなアプローチで創造的な改善策を生み出す反面、実現可能性の見極めが難しい策を並べてしまうことになりかねません。
この記事では、欠点列挙法と希望点列挙法を実際に活用した例を挙げ、そのメリットとデメリットについて紹介します。
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欠点列挙法の利用例と課題

欠点列挙法は、既存のモノや仕組みの欠点をリスト化して改善するものです。欠点は、実際に既存のモノや仕組みを利用したときに現れ、利用しなかったり、アクシデントが解消されたりすると忘れてしまいがちです。欠点が現れた時の記録が大切になります。
ある鉄鋼関係の工場で新設備を建設したとき、欠点列挙法を使った例があります。(当時、関係者は「欠点列挙法」と意識していませんでしたが)
1年後の建設開始を前に企画担当者は、従来設備の問題点リストを作成しました。設備を使うオペレーターの不満、設備トラブル事例、メンテナンスする人の不満、管理者の不満を集めました。当時者からヒヤリングするだけでなく、操業記録、メンテナンス記録を調べあげました。その結果、200件程の設備の「欠点」をリストアップできました。
続いて、その「欠点」に対して、新設備や新操業法では、どう対処するか1件1件設計や取扱説明に反映させていきました。その結果、新設備は稼働当初から問題の発生が極めて少なく、当時の生産量や製品品質において世界トップの性能を発揮しました。
ただし、この設備は画期的なものではなく、既存の技術を集めたものです。東海道新幹線と同様、信頼できる既存の技術を集めたものです。200キロ運転はできても、リニア新幹線が目指すような500キロには、到底届きません。
欠点を列挙した後、改善案を出す段階において画期的な発想で考えればいいのですが、どうしても今の欠点に目が向き、即効性のある方法に目が行ってしまいます。故障やトラブルといった欠点は、起こすモノや仕組みがあるからという発想は、なかなかでません。
「そもそも踏切なければ、事故は起きない!」
これは、新幹線の基本となった考え方です。同様に
「そんな作業があるからトラブルが起きる」
という発想をすることは、欠点列挙法を利用した作業改善において重要です。
他に欠点列挙法を利用する場合のデメリットとして、現場の問題点を列挙するため、従業員のモチベーションが低下しがちで、職場の雰囲気が悪化するリスクがあります。職場の問題点を列挙していると、いつの間にか会社や上司も批判合戦になって困ったことがあります。
また現状の問題点の解決に集中するため、長期的な視点での改善が後回しになりがちです。同様に視野の狭さが露呈することもあります。これらに注意して、欠点列挙法を利用することが大切です。

希望点列挙法の利用例と課題

希望点列挙法は、「こうあって欲しい」という希望を列挙して、モノや仕組みを改善していく方法です。漠然と「こうあって欲しい」ということをリスト化することは、難しいものです。実際にやろうとすると、何かテーマがないと「こうあって欲しい」「あったりいな」というアイデアが出てこずリストになりません。
職場で、「働きかた改革」をテーマとして、ブレストをしたことがあります。なんでもいいので、働き方に関して「こうなって欲しい」「あったらいいな」など希望をリストアップしてもらいました。
「職場に保育所があればいい」
「通勤用の送迎タクシーが欲しい」
Eメールがなければいい」
「会社に出勤しなくてもいいようにしたい」等々
現実的なものから、非現実的なものまで、様々なものが出てきました。希望は、グループで話すと、アイデアの数が増えるだけでなく、増幅されてより「過激」な希望や意見がでてきます。希望点列強法では、ブレスト中参加者のテンションが上がって盛り上がりますが、出た希望に対して実行力がないと、職場リーダーや会社に対する信頼が一気になくなります。
数年前AIブームが起き始めたころ、職場でAIを使っての「あったらいいな」リストを作ったことがあります。事務系、技術系問わず社員からアンケートを取ったのですが、対象者50人ほどで、180もの案件を集めることができました。
「ワンクリックで、見たい情報を一画面に出る」
「出張旅費の精算が自動できる」
「現場に点検簿を持っていかなくてもいいようにする」
「議事録を自動で書く」等々
作成されたリストをシステムエンジニアが見ると、その90%はAIを使うこともなく既存のPCソフトの機能で実現できるものばかりでした。現在は、ChatGPTなど生成AIを活用すれば、もっと実現できるものが増えています。
希望点列挙法による改善は、「どうするか」より、「どうなりたいか」「どうしたいか」を出せるかどうかにかかっています。例えば、希望点をリストアップする際に、声の大きい人や積極的な人の意見に全体が引きずられて、全体のバランスが欠けるリスクがあります。
あるいは、多様な希望が出てくると、それぞれの希望が対立することがあり、調整が難しくなる場合があります。
他にも、集めた希望点をすべて実行に移すためには、かなりのコストやリソースが必要となる場合があります。実現可能な改善策を見極めるための評価基準やプロセスが明確でないと、無駄な労力を費やすことに成り兼ねません。

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まとめ

商品開発、業務改善、システム開発などでアイデアを出す際、欠点からアプローチする方法と、希望点からアプローチする方法とがある。前者を「欠点列挙法」、後者を「希望点列挙法」と呼びます。
希望点列挙法と欠点列挙法には、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、職場の業務改善に欠点列挙法を使うと、問題点を明確にして迅速な改善が可能ですが、ネガティブな雰囲気や対症療法的な改善にとどまるリスクがあります。
一方、希望点列挙法では、ポジティブなアプローチで創造的な改善策を生み出す反面、実現可能性の見極めが難しい策を並べてしまうことになりかねません。
両者のメリットを活かすような使い方が大切です。

参考記事:教科書通りのブレスト4原則(ルール)では、アイデアが出ない3つの理由

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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