「同時処理型」認識と「継次処理型」認識の違いとコミュニケーションの取り方
「同時処理型」認識と「継次処理型」認識の違いとコミュニケーションの取り方
「同時処理型」認識と「継次処理型」認識の違いとコミュニケーションの取り方
ある会社での出来事です。
「明日から顧客相談の受付は、午後4時までとすることにしました。4時以降の顧客相談は少なかったですし、4時で受付を締め切れば、5時には業務が終わります。ということで、部長いいですね」
こう若手社員のAさんが、部長に提案してきました。部長は、
「どういう経緯で、4時受付締め切りを決めたのか。本当に、4時以降お客様の相談は少ないのか。順を追って説明してくれないと、この件は判断できないだろう。」
ということで、すぐには提案を許可しませんでした。Aさんは、「結論から話す」というビジネス会話の原則を守ったつもりですが、部長は提案に対する説明不足を感じたのです。Aさんは、日頃から
「部長に理解力がないから、説明に手間がかかる」
と部長とのコミュニケーションに鬱陶しさを感じています。部長の方は、
「A君は、いいアイデアを持っているが、脈略がなく論理的に説明できない奴」
と感じています。
このエピソードは、Aさんと部長との物事を認識する際のタイプが違うことに原因があります。Aさんは「同時処理型」、部長は「継次(けいじ)処理型」の認識をする傾向にあることから生じる、コミュニケーション時のストレスと考えることができます。
人の認識には、この2つの型があり、説明などコミュニケーションを円滑に進める上で、注意すべきポイントがあります。
1)人の認識には、「同時処理型」と「継次処理型」があることを理解すること
2)「同時処理型」認識の人への説明の注意点
3)「継次処理型」認識の人への説明の注意点
人を明確には、「同時処理型」か「継次処理型」かに分けることはできません。しかし、いずれかの傾向が大なり小なりあるものです。自分と相手が、どちらのタイプ(型)の傾向を持っているかを理解してコミュニケーションをすることが大切です。
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「継次処理」と「同時処理」 学び方の2つのタイプ: 認知処理スタイルを生かして得意な学び方を身につける
「同時処理型」認識と「継次処理型」認識の違い
人が物事を理解する(認識する)とき、心理学的には2つのタイプ(型)があるとされています。「同時処理型」と「継次処理型」です。
「同時処理型」は、まず全体を把握してから,細部を認識していくことが得意なタイプ。まず完成イメージが浮かび、それに向かって歩きながら考えるタイプです。視覚で理解するのが得意です。
「継次処理」は、ひとつずつ物事を順番に考え,処理を行っていくことが得意なタイプ。やるべき課題を網羅して、その順序や前後関係を整理して進めようとします。聴覚や言語での理解が得意です。
どちらが良い悪いというのではなく、「認識のし方」の個性と考えるべきことです。
人はどちらかの型をもちつつ、経験や教育訓練によって認識のし方をそのときの状況や立場によって使い分けたり、組み合わせたりするようになります。しかし、小学校低学年の子供や発達障害のある子供においては、明確に「同時処理型」、もしくは「継次処理型」が現れます。そこで、教育現場においてタイプ別の接し方、コミュニケーションの取り方が研究、議論されています。(例えば、東京都教育職員研修センター資料:「子供1人ひとりの『わかり方特性』を生かした指導をしましょう」)
「同時処理型」認識の人への説明の注意点
「同時処理型」認識をする人に説明する時は、まず結論を述べます。そして、その理由になるキーワードを並べることが、相手の理解を助けます。長い文章より、ビジュアル表現を重視したプレゼンが効果的です。1頁の中に、様々なヒントを入れた資料を作り、相手が興味のあるポイントを見つけさせるような資料が有効です。私は、このような仕様を「カフェテラス型資料」と呼んでいます。(ホテルの取り放題の通称バイキングコースを思い浮かべて下さい。)
また、「同時処理型」の人に質問するときは、Yes/Noや決まった選択肢のない「オープンクエスチョン」が向いています。
「〇〇について、どう思いますか?」
「何が、好みですか?」
といった具合です。この型の人は、発想のバリエーションが多くあり、自由に回答してもらうことで、相手を活かすことができます。
説明する相手が、「同時処理型」の上司であった場合、指示を出す時には既に求めるゴール(結論)のイメージを持っていることが多いようです。ところが、指示を出した後、ゴールのイメージが変わり易い傾向があります。指示された通り仕事をしていても、上司のイメージが変化していて、上司の期待に応えらないことも起きます。仕事の前、途中で適宜、上司のゴールイメージを確認しておくことが大切です。
「継次処理型」認識の人への説明の注意点
「継次処理型」の人に説明する時は、まず経緯や背景、理由、結論といった順が理解し易いものです。特に情報の関連性をしっかり押さえておくことがコツです。プレゼンでは、時系列的な経緯の説明、網羅性を示すことが大切です。資料を作るとき、順に背景、経緯、理由、結論と順番に示していくやり方が効果的です。私は、このような資料を「懐石料理型資料」と呼んでいます。(和食の懐石料理やフランス料理店のコースメニューのように順次1品ずつ運ばれてくる料理を思い浮かべて下さい。)
また、質問するときは、Yes/Noや決まった選択肢を用意した「クローズドクエスチョン」が向いています。
「○○について、Aと思いますか? それともBですか?」
「CとD、どちらが好みですか?」
といった具合です。質問しながら、それらが関連して、議論がより深まるように進んでいることが、相手に満足感を与えます。
説明する相手が、「継次処理型」の上司であった場合、何よりも論理的に結論まで、構築されたものを好まれる傾向があります。些細な手続きミスや誤字などを上司が気にする場合があり注意を要します。
まとめ
人の認識には、「同時処理型」と「継次(けいじ)処理型」とがある。説明などコミュニケーションを円滑に進める上で、これを意識したポイントがあります。
1)人の認識には、「同時処理型」と「継次処理型」があることを理解すること
2)「同時処理型」認識の人への説明の注意点
3)「継次処理型」認識の人への説明の注意点
自分と相手が、どちらのタイプ(型)の傾向を持っているかを理解してコミュニケーションをすることが大切です。