「総論賛成各論反対」の壁を突き破るのが、経営者や政府のリーダーの役目!
「総論賛成各論反対」の壁を突き破るのが、経営者や政府のリーダーの役目!
「総論賛成各論反対」の壁を突き破るのがリーダーの役目
「保育施設の必要性はわかっていても、いざ自宅近くに出来るとなると反対。」
「新規事業のためのプロジェクトチームができることに賛成。ところが、自部署の人間をプロジェクトに出すことは反対。」
よくある「総論賛成各論反対」の例です。何か物事をやろうとすると必ずといっていいほど「総論賛成各論反対」を訴える人が出てきます。反対意見を無視して物事を強引に進めれば、取り返しのつかないほどの禍根を残します。しかし、反対者と対立したままでは、ことは進みません。最近の国や自治体の公共事業は、常にこんなジレンマが起きて、とてつもなく工期が長くなることがしばしばです。
総論賛成各論反対の状態に陥ったとき、その壁を突き破るのは、経営者や政府などリーダーの役目です。そもそも組織のリーダーの役目は、企業や国家/地方の全体最適化を図ることです。つまり、総論賛成を前提とする一貫した立場が必要です。その上で、各論反対をとなえる人達と合意点を見つけることが必要です。
リーダーが、総論賛成各論反対の状況が起きた時にすべきことがあります。
1)本当に「総論賛成」なのか確認する
2)リーダーは総論賛成を貫く
3)各論反対者との合意点を探る
リーダーは、総論賛成各論反対の状況に中において、物事を「進めるか」「やめるか」の決断に迫られます。その時、全体最適化の立場で決められるかどうかが、リーダーの真の価値だと思います。
本当に「総論賛成」なのか確認する
「総論賛成各論反対」と言いながら、実は総論に賛成していないケースがあります。総論反対と言い出せず、各論の問題点を並べ立てて「総論賛成各論反対」のポーズを取る人達がいます。
例えば、ある資格者の不足が問題となり、資格取得者を増やすために資格試験合格枠を増やそうとすると、「教育するための人材が不足している」「合格者の質の低下が懸念される」などと各論反対の理由が出てくることがあります。その人達の本音は、「現在の既に資格を持っている人が、新たに資格者を増やすことで、優位性が減る」ことを嫌っています。つまり、そもそも「資格者を増やす」という総論に賛成していないのです。
ダム建設や鉄道建設などで、「その必要性は認める」という総論賛成の立場をとりながら、「一切自然に手を加えることに反対」という考え方の人達がいます。あるいは、感情的に事業者対して拒絶感情がある場合、「総論賛成のポースだけ取っている」ということもあります。
これら、偽の「総論賛成者」が出してくる各論反対の理由に対していくら合意案を考えても、彼ら(彼女ら)は、次々に新しい各論反対の理由を作り出します。
リーダーがすべきことは、総論賛成各論反対をとなえる人達が、本当に総論賛成なのが見極めることです。総論賛成が得られていないことが分かれば、そこから合意を求めていく必要があります。
リーダーは「総論賛成」を貫く
リーダーの役目は、全体最適化を図ることです。企業のリーダーなら、企業全体の利益を考えることであり、政府は国全体の利益を守ることが基本的な役目です。ところが、それを忘れてしまうリーダー達がいます。
ある製造会社で、需要減に伴い事業所の統廃合を進めることになりました。会社の幹部は、統廃合の必要性を全員認めました。ところが、廃止される事業所や事業部が発表されると、自部署を守りたい人々が出てきて、正に総論賛成各論反対の状況になりました。そんな中、統廃合を進める立場の役員達は、一斉に出身母体の事業所や事業部は廃止できないと主張。挙句のはては、社長が「この事業所は、会社発祥の地」であることを理由に、最も効率の悪い事業所の存続を決め、中途半端な統廃合となりました。数年後、社長が変わり結局この事業所は閉鎖されました。
政治の世界では、リーダーであるべき立場の政治家が、支援団体や支援地方の利益を守るために「総論賛成各論反対」の立場で日々奮闘しています。日本のマスコミは、各論反対の人達を取り上げる報道が多いようです。日本の行き詰まりの根本原因を見るような思いがします。
リーダーが、その役目を果たすとは「総論賛成」を貫くことです。時として「苦しい決断」を迫られますが、それが仕事です。歴史的な人物の奮闘が、それを示しています。
各論反対者との合意点を探る
「総論賛成各論反対」の状況を突破するのに、各論反対者の意見を振り切ってリーダーが強引に物事を進めるのは、最後の手段にしたいものです。リーダーが、強引に物事を進めれば、批判や混乱を招くばかりでなく、結果を待ちきれない人々によってリーダーの地位を失うこともあり、なんとか合意を形成したいものです。
総論賛成各論反対の状態に陥っているとき、合意を形成するには、「心理的な納得」と「論理的な納得」が必要です。「心理的な納得」を得るためには、相手の感情に訴える説得が必要になります。「論理的な納得」のためには、双方が譲歩できるラインを探り、妥協案や折衷案を出すことが必要です。
やっかいなのは、各論反対者が、論理的に納得しても心理的に納得していなければ、合意形成したように見えても、相手は面従腹背となってしまい行動に繋がらないということが起きます。「心理」と「論理」の両面から納得できるような辛抱強い議論が求められます。
しかし、現実は、時間的な制約やリソースの制約などがあり、心理と論理両面での完全な合意形成は難しいというより、存在しないかも知れません。結局、物事を進めるためには、リーダーの覚悟が求められることになります。
会社や国の仕組みに関わるような大きな改革を進めるのにあたり、総論賛成各論反対の状況が生まれます。そんな場合、リーダーが「心理的合意」を得るために物事を進めた後にその地位を辞する例は古今東西に幾多あります。また、物事を進められず辞するリーダーも多いことも残念ながら沢山の例があります。
まとめ
総論賛成各論反対の状況が起きた時、それを収めるのがリーダーの役目です。
リーダーが、総論賛成各論反対の状況のときすべきことは、
1)本当に「総論賛成」なのか確認する、
2)リーダーは総論賛成を貫く、
3)各論反対者との合意点を探る。
物事を「進めるか」「やめるか」の決断がリーダーの役目です。その時、全体最適化の立場で決められるかが、リーダーの真の価値ではないでしょうか。