職場から会話や雑談がなくなった理由と改善のためにリーダーのはたす役割
職場から会話や雑談がなくなった理由とその対策
職場における会話のメリットと会話がなくなった理由
最近会社のオフィスから、会話がなくなったと感じていませんか。私のように特に昔を知る年配社員は、より強く感じているかも知れません。
職場において、上司の指示や部下からの報告があれば、他に会話や雑談など必要ありません。また、指示や報告も電子メールやチャットを使えば、内容を伝えることができます。しかし、会話なくして伝わらないものや、会話を通してできる信頼関係があります。会話をしない職場は、どこか冷たく味気ないと思いませんか。
リアルに会話をするメリットは、様々あります。例えば、
1)情報の共有:
会話を通じて情報がスムーズに共有されます。メールでは、一方通行になりがちですか、会話は、その瞬間のやり取りで双方向の情報交換や指示ができます。
2)チームワークの形成:
会話をチームで行うことで、チームワークが形成されます。上司・同僚とのコミュニケーションを通じて、信頼関係が築かれ、メンバー同士の連携が向上します。良好な人間関係があると、仕事の効率が向上しやすくなります。
3)問題解決:
問題が発生した際、直接コミュニケーションをとることで、迅速かつ効果的な問題解決が可能です。対話を通じて情報を共有し、チームで協力して解決策を見つけることができます。
4)良好な職場文化の構築:
会話を通して、メンバーのストレスの軽減、モチベーションの醸成など良好な職場文化が構築されます。
そんな大切な職場での会話ですが、近年会話がなくなってしまったのには、いくつか理由があります。
1)主な連絡手段が、固定電話から電子メールやチャットに変わった。
2)リモートワーク、リモート会議の比率が増えた。
3)会話や雑談をしない風土が職場に広がった。
これらの理由で職場から会話が減ったり無くなったりしていても、工夫次第で会話を取り戻した職場もあります。そんな職場は、上司が率先して会話する風土を作っています。
この記事は、職場から会話がなくなった理由を考え、会話を取り戻す対策を考えます。
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主な連絡手段が、固定電話から電子メールやチャットに変わった
電子メールが普及する前、1990年代までの日本の典型的オフィスは、大部屋方式でした。大部屋に机5~10台を向かい合わせにして島を作り、その島の端に上司が部下に向かって座っていました。各机には、固定電話が置かれ、1台の電話を複数で共有することもされていました。
電話がかかってくると、会話の内容は周囲に筒抜けです。社内の連絡、取引先からの注文やクレームなど様々な電話が掛かってきます。また、こちらから掛ける電話も周囲に聞こえています。ところが、受話器を通して相手の声がすべて聞こえるわけではありません。そこで、
「山田、今の電話はクレームのようだが、誰からだ?」
なんて上司から声がかかります。同僚が、嫌がらせの電話を受けているようなら、
「無視、無視」
なんて声が、脇からささやかれることもありました。こんな状態、今なら「騒がしくて、落ち着いて仕事ができない」と苦情が出そうです。しかし、お陰でチーム内のコミュニケーションが良くなっていました。
今や連絡手段の主流は、電子メールやチャットになっています。連絡事項は、個人から個人に伝えられます。電子メールの宛先を複数にしたり、チャットでグループを作ったりすることもできますが、それを読むのに同時性がありません。メール発信後、送られた個人は、バラバラに情報を見ます。すぐに見る人もいれば、数時間から1日遅れて情報に触れる人もいます。また、メールの文章は、読み手の負荷も考え、短く無駄のない文章が推奨されます。直接会話するような「あそび」の部分が、全くありません。
固定電話で、チームに聞こえるような声で通話することが、直接コミュニケーションを促進するものではありません。しかし、電話や眼前の社員の行動が、会話のきっかけを作ります。電話の後の間、眼前の社員の仕事の間に、声を掛ける機会を見つけることで会話が始まります。無言でPCに向き合い背中しか見えない人には、声を掛けにくいものです。
リモートワーク、リモート会議の比率が増えた
新型コロナの感染が広がって以降、リモートワーク、リモート会議が増えました。これを機会にオフィスへ出社してくる人数を減らしたり、個人毎の専用机を廃止したりした会社も多くなっています。合理的と言えば合理的ですが、社員間の直接会話や雑談が減ることに繋がっています。
リモートでの会議は、リアル会議のように余計な会話や雑談することができません。リモート会議は、時間通りに始まり、発言者以外は全て聞き役に回ります。かつてのリアル会議では、会議開始前や後に別件の話をしたり、雑談をしたりしていました。また、誰かかが発言していても
「あの課長、また同じことを言っているな」
などと隣同士でヒソヒソ話ができます。ZoomやTeamsには、チャット機能がありますが、これに書き込めば全員に見えてしまいヒソヒソ話にはなりません。
もの心がついた時からスマホに接している世代では、Lineなどで雑談することに慣れています。文字や絵などを使い雑談することの面白さはありますが、「曖昧さ」をリアルの会話のように出すことは難しいようです。どうしても、「敵か味方か」、「好きか嫌いか」、「YesかNoか」といった白黒ハッキリさせた内容になりがちです。
会話や雑談をしない風土とリーダーの役目
固定電話を利用しなくなり、電子メールやチャットで要件を伝えるようになっても、本来職場で会話することはできます。リモートの会議であっても、慣れれば雑談もできます。ところが、近年必要な最低限の会話以外しなくなった職場が多くなったようです。
10年ほど前、近くにいる上司に、電子メールだけで辞表を出した社員がいたと話題になりました。もう、そんなこと当たり前で話題にもなりません。それどころが、辞表を代理で出してくれるサービスまであります。
どうやら、余計な会話や雑談をしないという風土が職場に広がっているのではないでしょうか。PLUSによるWeb調査「第3回・雑談しやすい相手&しにくい相手」によれば、
「8割以上の人がオフィスでの『雑談』は必要だと捉えている一方で、コミュニケーションを取るための『場所』や『きっかけ』が少ないという理由から、多くの人は役員や上司といった立場の異なる相手と気軽に雑談することは難しいと感じている。」
との報告があります。また、同じ調査で、
「一般社員では半数近くが『上司』を雑談しにくい相手と捉えており、上司が雑談しやすいのは部下、部下が雑談しにくいのは上司……という図式が浮かび上がってきました。」
とも述べています。
部下から上司に声がかけにくい理由として、
1)上司が忙しそうにしている
2)失礼があっては困る
3)そもそもきっかけがない
といったことがあります。会話や雑談を通してコミュニケーションを取りたいとの気持ちはあっても行動が伴っていないということでしょうか。
職場の風土は、上司や先輩社員の行動から変えることができます。挨拶やちょっとした声掛け、リモートであっても会議前後の雑談などで、会話のきっかけづくりをすることが有効です。部下にとって
「ここまでは、許される」
ということを示すことが大切です。
まとめ
近年、職場で会話や雑談が減った職場が増えているようです。それには、いくつ理由があります。
1)主な連絡手段が、固定電話から電子メールやチャットに変わった。
2)リモートワーク、リモート会議の比率が増えた。
3)会話や雑談をしない風土が職場に広がった。
これらの理由で職場から会話が減ったり無くなったりしていても、工夫次第で会話を取り戻した職場があります。そんな職場は、上司が率先して会話する風土を作っています。
参考記事:「挨拶をしない職場文化」を変えるためにリーダーがすべき3つのポイント