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「類似品」と言われない、「差別化した商品」を開発するための3つのポイント

2023/11/05
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「類似品」と言われない「差別化した商品」を開発するための3つのポイント

 

「差別化した商品」を開発するための3つのポイント

「『競合他社より機能が多く、品質が良く、しかも価格が安い』
こんな商品を開発し、絶対の自信をもって、市場に投入したのに、さっぱりお客様は反応してくれない。」
これは、私が商品開発を担当していた時に、実際にあった話です。多くの人材とカネを投入して従来品を上回る性能の液晶パネル材料を開発しました。ところが、お客様の反応は、
「それって、○○社の製品の類似品でしょう。○○社から、御社へ変更するほどの差を感じないので結構です。」
と断られ、全く売れませんでした。機能や性能がものを言うB to Bの商品なので、その良さを理解してもらえると信じていたのに、この有様でした。
後になって気づいたのは、いくら商品を改良しても、お客様にとっては、先行する商品の「類似品」という評価を変えることは難しいということです。世の中に無いような商品で、最初に上市したもの、つまりイノベーションを起した「一番手商品」は、よほどの欠陥がない限り、後発品に凌駕されることはありません。後発品の性能が、たとえ「一番手商品」より優れていても「類似品」とみなされてしまいます。
この事例では、後発品の売上を伸ばそうと、価格を安く設定したのですが、益々「類似品」というイメージが強まっていました。私も含め開発者達は、先行する競合品より機能も品質も良くしたことで、「差別化」できていると信じていました。ところが、お客様からみると、「類似品」でしかなかったようです。
商品開発をする時、市場にある商品より、性能が良いこと、利便性が良いこと、価格が安いことなどを目標にしがちです。ところが、それが実現しても結局「類似品」のレッテルを貼られて、販売に苦しむことになります。これは、開発した商品が、他の商品と顧客の意識の中で「差別化」が出来ないということです。商品の性能向上、利便性の向上、価格引き下げなどでは、「差別化」出来にくいのです。
売れる商品を開発するには、「差別化」が重要です。「差別化した商品」を開発するための3つのポイントがあります。
1)従来品に機能をプラスするのではなく、マイナスや代替えをする
2)ターゲット市場を明確にする
3)開発品の優位性の理由を明確にする
これらができずに機能の改善ばかりに目を向けて開発した商品は、顧客に現行の「類似品」とイメージされる可能性が高くなります。

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従来の商品に機能をプラスするのではなく、マイナスや代替えをする

差別化商品を開発する上で注意すべき点は、従来品に対して機能や使用法などをプラスしても「類似品」にしかならないことです。
Windows95が発売され、マウス中心の操作でPCを動かすことのできるなどの機能を持つ従来とは全く違うOSに人々は飛びつきました。その後、Windowsは、数年おきに新しいバージョンが出て機能は大きく向上し、安定性が増しました。(実際、Windows95,98では、しばしばPCがフリーズしていました。)しかし、どんなに性能アップしても、ユーザー感覚からすると、その後のバーションは、すべて「類似品」です。むしろ「買わせるためにバーションアップやサポート停止がなされている」と勘繰っています。
差別化商品を開発するヒントは、従来品に対して、機能や使用方法をマイナスしたり、代替えしたりすることです。
SONYが、1979年に「ウォークマン」を発売、ヒットさせました。従来のカセットステレオから、スピーカーを取り除いてイヤホン専用にしたことが、最大の差別化要素です。アップルのiPhoneは、本体から起動以外のスイッチを取り去りました。取り去った上で、タッチパネルがスイッチを代替えして、ユーザーから絶大の支持を受けました。
その後も「羽根のない扇風機」、「コードレスのイヤホン」、「切符不要の改札機」等々、差別化に成功した開発品は、従来品から何かをマイナスしている例が数多くみられます。
また、ものづくり以外でも、デパートの対抗である専門の量販店やスーパーマーケットの対抗であるコンビニは、「なんでも売っている店」からマイナスしたことで、隆盛を極めています。温泉地にありながら、大浴場も部屋風呂もない旅館なのに成功している例もあります。風呂は外湯を利用して頂き、旅館は快適な食事と睡眠を提供することに集中した結果です。

ターゲット市場を明確にすること

「差別化商品」は、利用する顧客が限定された市場から広がるものです。すべての顧客に受け入れられようと商品開発をしても差別化できません。開発しようとする商品の売りたい市場(ターゲット市場)を明確にすることが大切です。
例えば、「礼服だけ」「紳士服だけ」を売って成功した会社は、何でも売っているデパートの顧客から、冠婚葬祭用の礼服を探す人、フォーマルスーツを探す人にターゲットを絞り成功しています。その後は、売る商品を増やしているようですが。
また、開発した商品が売れずに、偶然特別な市場に出会ったことで、「差別化商品」として蘇った例が多数あります。
冒頭に挙げた液晶パネル用の材料は、一般的なパネルをつくる会社には、「類似品」として全く相手にされなかったのですが、医療用、科学研究用、海洋などの特殊環境で使用するようなパネルを製造する会社には、その性能が評価されて売れ出しています。後付けでターゲット市場をみつけて、「類似品」が「差別化商品」に変わりました。
商品開発の前に、ターゲット市場を明確にすることが大切ですが、運悪く開発した商品が当初狙った市場で受け入れられなかったとき、商品に合った市場を探ることが、リカバリー策になります。その時、従来品の「類似品」とみなされない市場を探すことです。

開発品の優位性の理由を明確にすること

「差別化商品」の優位性の理由は、大切です。「なぜ優れた性能なの」「なぜ安いのか」といった理由が明確でないと優位性を疑われます。理由がハッキリしないのに、「優れている」とか「安い」ことを強調すると、極端な話「粗悪品」「詐欺」のイメージがついてしまいます。
例えば、優位性の理由として
「強くて軽く錆びないチタンを使用している」
「信頼性と高い○○社製の部品を使用している」
といった説明が必要です。
「日本製だから高品質」
「安いのは、東南アジア製の部品を使っているから」
「職人の手作りだから」
など、あまり論理的ではないことでも、顧客がイメージする理由に合致すれば、優位性の理由として通用します。
また、価格設定において、「有機栽培」「全て手作り」といったことは、顧客に高価格を受け入れてもらえる理由となります。

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まとめ

「売れる商品」を開発するには、「差別化した商品」を開発することが重要であり、以下の3つのポイントがあります。
1)従来品に機能をプラスするのではなく、マイナスや代替えをする
2)ターゲット市場を明確にする
3)開発品の優位性の理由を明確にする
これらができずに機能の改善ばかりに目を向けて開発した商品は、顧客に現行の「類似品」とイメージされる可能性が高くなります。

参考記事:企業の「差別化戦略」は、「伝説」を作れるかどうかで決まる!

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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