感性に訴える「共感提供ビジネス」を成功させる3つのポイント
感性に訴える「共感提供ビジネス」を成功させる3つのポイント
感性に訴える「共感提供ビジネス」を成功させる3つのポイント
消費者向けで売れている商品は、品質(性能)、価格、納期が優れているだけではありません。もう一つ重要な要素があります。それは、
「感性に訴える商品」
であるということです。お客様の感性に訴え、好感や共感、時には優越感を持たせることができる商品が成功しています。例えば、アップル、ルイ・ヴィトン、ベンツ等々は、品質(性能)は勿論ですが、デザイン、雰囲気、信頼感、優越感など感性に訴える力を持っています。
「アイドル、スナック、宗教」
これらには、共通点があります。いずれも、お客様(ファン、信者も含めて)に、「共感」を提供しているということです。
人気アイドルが、必ずしも特別に歌やダンスがうまい必要はありません。人の集まるスナックで、特別な酒や料理が提供される訳ではありません。しかし、お目当てのアイドルを見ることで、ファンは癒されます。スナックのママに会うことで、客は安心感が得られます。あるいは、ファンや客同士の触れ合いで、皆が心地よくなります。
これらは、サービスを通して、「共感」を提供するビジネスです。これを
「共感提供ビジネス」
と呼ばせてもらいます。芸能やスポーツは、典型的な「共感提供ビジネス」です。NGOなどの非営利団体、宗教法人も感性に訴える「共感提供ビジネス」です。(NGOや宗教を「ビジネス」と呼ぶことに抵抗がある方は、ビジネスという言葉を「継続的事業」の意味で使っていると理解してください。)
近年、SDGs意識の高まりで、脱炭素、リサイクルなどに関する分野でビジネスが生まれています。これらも、「共感提供ビジネス」に分類できます。SDGsに共感し、脱炭素、リサイクル、貧困問題に共感する人がビジネス相手です。しかし、この種のビジネスは、単独で、採算性ラインに乗せることが難しく、事業を継続させていくのは容易ではありません。
昔から存在した「共感提供ビジネス」に宗教があります。「共感提供ビジネス」の運営ノウハウは、宗教法人に詰まっています。宗教法人を参考に「共感提供ビジネス」成功の3つのポイントを以下にご紹介します。
1)トップの情熱(カリスマ性)
2)No.2による経営
3)支援者の共感維持
人気のタレントがいて、それをサポートする芸能事務所があり、ファンの数が維持されていることを想像いただければ、この3つが理解いただけると思います。
トップ(タレント)と「共感」し、これを維持していく経営をすることが、ビジネス成功の鍵です。
トップの情熱(カリスマ性)
宗教の歴史の中で、教祖といわれる人は、「人々を救いたい」という強い情熱を持っていました。教祖の姿、言葉、情熱に引かれて、人々が集まり信者となっていきました。芸能やスポーツでも同様です。人気者の周りに人が集まります。組織的というより、個人のキャラクターで人が集まり、人気が生まれます。初めに集まる人は、金銭的メリットではなく、感情としてのメリットつまり「共感」を求めてきた人々です。
涙ながらに地球温暖化防止を訴えて一躍有名になったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリは、論理的に二酸化炭素と地球温暖化を説明しているわけではありません。一少女が一生懸命に地球の未来を考えて、
「なぜ大人たちは、温暖化防止の行動をしないのか」
と訴え、世界中の人々から共感を得ています。もし彼女が、政治家のように環境と経済性のバランスを考えて発言したら、発言にこれほどの破壊力は無かったでしょう。
宗教のトップに「神は存在するか」といったことを、論理的に説明を求めても答えようがありません。
「あれほど、人々のことを思うのだから、きっと神と繋がっている人である。いや、神そのものかも知れない」
と人々が「共感」することで、教祖となっていったのです。
脱化石エネルギーとしてバイオマス発電に取り組む企業、食品ロスの活用を目指す会社には、損得抜きで情熱溢れるトップの存在があります。
No.2による経営
宗教の教祖と言われた人は、布教を始めたころは、教団として必ずしも成功していません。イエス・キリスト、浄土真宗の親鸞、日蓮宗の日蓮は、辻説法などで人々を集め信者にしていきましたが、非信者の非難や暴力、権力者からの迫害を受けています。その結果、非業の死を迎えています。
キリスト教、浄土真宗、日蓮宗が、その後隆盛を誇るのは、彼らの弟子たちが、教団としての組織運営に成功するからです。信者を集めて、教祖がいかに優れていたかを語り、信じることで救われることを、信者たちと共感します。
会社でいえば、創業者は、自分のアイデアや信念実現に情熱を燃やし、組織運営や銭勘定は、No.2が取り仕切るというスタイルです。タレントと芸能事務所の関係を想像するとわかると思います。
共感を得るには、表に出るトップが銭勘定に強い興味があと、誤解を生みやすくなります。むしろ「損得抜きで、人々が共感することに夢中になっている人」のイメージが大切です。
多くの教祖の中で、トップと経営の二刀流ができたのは、空海ぐらいでしょう。とてつもない能力の持ち主です。ただし、不幸なことに空海の高野山から有名な僧が出ていません。ちなみに空海と同時代の人である最澄は、比叡山延暦寺を創りますが、この人は純粋な人で、教団として組織経営が上手だったとは言えません。ただし、比叡山は、その後高名な僧侶を輩出しています。
参考:井沢元彦著「新・井沢式 日本史集中講座『鎌倉新仏教』編」(徳間書店)、井沢元彦著「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」(徳間書店)
支援者の共感維持
組織や事業を継続するには、支持者の共感を維持する必要があります。
信者が集まる宗教行事がこれに当たります。毎年行われる祭りも地域を含めた支持者の維持に貢献しています。芸能人のファンクラブを同様です。
そこには、支持者の共感を維持するための3つのポイントがあります。
1)トップに触れる機会を作る:
シーズンオフにプロ野球選手に触れあう。SNSで憧れの人と繋がる。トップと時間と空間を共有することは、支持者の共感維持をする上で、絶大な力を持ちます。教祖の辻説法もこれに当たります。
SDGs関連企業では、トップが支持者(支持企業)を訪問したり、講演会をしたりして、その情熱を伝えることが共感維持に有効です。
2)トップと繋がる品を配布(販売)する:
芸能スターや一流スポーツ選手の関連グッズが販売されると、ファンは喜んで買い求めます。好ましい話ではありませんが、「霊感商法」と呼ばれる手法は、教団の経典、霊力があると言われる商品を法外な価格で販売し、信者はありがたがって購入しています。
商品をシリーズとして揃える、毎年新商品を出すといった手法は、1回だけの商品購入で終わることなく、持続性があります。
3)支持者が交流する場をつくる:
ファンクラブのイベントがあれば、ファンの間で交流が生まれます。共感の輪が広がり更なる支持者を得ることができます。宗教団体が主催する「お祭り」も支持者が交流する場になっている例です。
まとめ
人の感性に訴える、「共感提供ビジネス」には、3つの成功ポイントがあります。
1)トップの情熱(カリスマ性)
2)No.2による経営
3)支援者の共感維持
お客様が、トップと「共感」し、これを維持していく経営をすることが、ビジネス成功の鍵です。
参考記事:「パーパス経営」とは、企業の「志」をストーリーにすること
「管理職になりたくない人」の増加から見えてくる、日本式「管理職昇格」の問題点