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イノベーションを起こす画期的新商品が売れるかどうかは、お客様の「スキーマ」次第

 
異なる散髪のイメージを持つ人のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

イノベーションを起こす画期的新商品が売れるかどうかは、お客様の「スキーマ」次第

 

画期的新商品が売れるかどうかは、お客様の「スキーマ」次第

「無色透明なコーラ」
「無色透明な醤油」
どちらも、イノベーションを起こしそうな画期的な商品です。どちらも、見た目以外は、通常の製品と全く同じです。ところが、無色透明なコーラは、発売後1年程で生産中止となりました。熊本の醤油メーカーが売り出した無色透明な醤油は、販売を続けています。この差は、なんでしょうか。
イノベーションを狙って、画期的なモノやサービスを開発して、市場で受け入れられるかどうかは、お客様の許容範囲に入るかどうかによります。この範囲を超えた「突拍子もないもの」は、売れません。これは、人が持っているモノに対するイメージからどのくらい離れているかによります。この範囲を心理学上「スキーマ」といいます。
お客様のスキーマを見誤ると、画期的な新商品も受け入れてもらえません。モノやサービスによるイノベーションを起こすとき、お客様のスキーマを知っておくことが重要です。
どんな人にも、対象物に対する固定的な概念、つまり「○○は、こんなものだ」との思いがあります。売れる商品であるためには、お客様のスキーマを見極めて対応することが必要です。お客様のスキーマに商品(モノやサービス)を適合させるには、3つの方法があります。
1)新商品をスキーマの中に入れる
2)スキーマに合致する人に売る
3)スキーマの変化に対応する
スキーマは、個々の人がもっている「許容範囲」です。売れる商品とは、商品そのものを許容範囲に入れるか、合致する人に売るか、スキーマの変化に合った時に売るかです。
この記事では、スキーマとマーケティングの関係について考えます。

 

スキーマとは

そもそもスキーマとは、心理学者フレデリック・バートレットによって提唱されたものです。(1932)認知心理学の言葉で、「人は過去の経験・記憶によって構造化された概念を持っている」ということです。
例えば、「クリスマス」と言えば、華やかなクリスマスツリーやイルミネーション、赤い服を着たサンタクロース、クリスマスケーキを思い浮かべます。これらは、クリスマスに対するスキーマです。ところが、厄介なのは、同じ事柄に対するスキーマは、人によって異なることです。日本人にとってクリスマスは、「華やかで、にぎやかなもの」です。ところが、欧米では、クリスマス前こそ大騒ぎしますが、クリスマス当日は「静かに家にいるもの」が一般的です。むしろ、日本の元旦のような感じです。(欧米の最近の若い世代は、知りませんが、平均的な市民は、「クリスマスは穏やかに過ごすもの」といったスキーマです。)
豚肉は、イスラム教の人にとって忌み嫌うものですが、非イスラムの日本人にとってはごちそうです。これもスキーマの違いによるものです。
スキーマとは、事物を見るときのフィルターのようなものです。画期的な新商品を売ろうとすれば、お客様のスキーマと合うことが必須になります。勿論、スキーマは人が自らの経験から作るもので、お客様のスキーマも変化します。しかし、それには長い時間と慣れが必要になり、スキーマを変えるより、商品をスキーマに合わせることの方が効率的です。


透明醤油(100ml) 166009

新商品をお客様のスキーマの中に入れる

冒頭に挙げた「透明なコーラ」は、1992年にカフェインフリーの無色透明なコーラ「CRYSTAL PEPSI」として販売されました、ところが、お客様の評判が悪く、わずか1年で販売中止に追い込まれました。消費者には、刺激的な黒い炭酸飲料であるコーラと、純粋なイメージを持つ透明とのミスマッチが受け入れられなかったのです。消費者のスキーマには、「コーラ=黒褐色の刺激的飲み物」というイメージが出来上がっていたのです。コーラにフレーバーを混ぜたチェリー・コークや人工甘味料を使ったダイエット・コーラは、ヒットしています。この違いは、消費者のスキーマに合っているかどうかです。
夏場、レモン味、オレンジ味などのする透明な「天然水」が売れています。「透明なレモンジュース」「透明なオレンジジュース」では、「透明なコーラ」の二の舞になっていたでしょう。あくまでも、ちょっと味のついた「天然水」であることが、消費者のスキームの中に受け入れられたのです。

スキーマに合致する人に売る

「透明な醤油」は、発売当初大きな話題になりました。お土産品や贈答品として、買われたのですが、必ずしも消費者の評価は高くありません。ちなみにネットを調べると、いろいろな悪評が書き込まれています。味そのものではなく、「醤油=褐色の調味料」というイメージに合わず、おいしく見えないという評価です。やはり消費者スキーマを突破できていないようです。確かに、ウナギのかば焼きに醤油の色がなかったら、おいしそうには見えないでしょう。
ところが、「隠し味に使う」、「塩の代わりに使う」ということで、プロの料理人には人気があります。プロの料理人の持つスキーマが一般消費者と異なっているということです。つまり、その商品を受け入れてくれるスキーマを持つ人に買ってもらうことです。
実は、透明のペプシコーラは、「ペプシから揚げ専用」として夏限定ですが、復活しています。最近の「から揚げ人気」もあり、から揚げにあう飲み物として売れています。これも、スキーマにあったお客様を見つけることに成功した例です。


サントリー ペプシ フライドチキン専用 PEPSI コーラ 600ml×24本

お客様のスキーマ変化に対応する

かつて、男性は理容店(床屋)、女性は美容院に行くことが当たり前でした。これは、人の心にスキームとして、出来上がったものです。ところが、今は男性が美容院に行って、散髪もすれば、スキンケアもするような人が増えています。男性が美容院に入ることに抵抗がなくなっています。これは、時代とともに利用者のスキーマが変化することを表している例です。
お客様のスキーム変化は、大抵若い世代から始まるものです。若い人、女性が始めたことがきっかけで、一般の人のスキーマが変化することが多いようです。革新的なモノやサービスが消費者に受け入れられるかどうかは、若い女性客が受けいれるかどうかを見ればわかるかも知れません。

まとめ

人には、対象物に対する固定的な概念、つまり「○○は、こんなものだ」とのスキーマがあります。売れる商品であるためには、お客様のスキーマに適合する必要があります。お客様のスキーマに商品を適合させる、3つの方法があります。
1)新商品をスキーマの中に入れる
2)スキーマに合致する人に売る
3)スキーマの変化に対応する
スキーマは、個々の人がもっている「許容範囲」です。商品を売るには、商品そのものを許容範囲に入れるか、合致する人に売るか、スキーマの変化に合った時を見計らうかです。

参考記事:「あったらいいな!」からイノベーションの「ネタ」を見つける4つのステップ

売上増に繋がるリピーターを増やす、「お客様の気持ち」になって商品を見直す方法

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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