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イノベーションを起こすのに必要なアナロジー思考など3つの思考法

2022/10/19
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

イノベーションを起こすのに必要なアナロジー思考など3つの思考法

 

イノベーションを起こすのは、「天才や知識のある人」ではない!

「イノベーションを起こす発想」
「科学の発明発見の発想」
そんな、イノベーションや科学の発明発見の発想は、「天才がするもの」と考えてはいませんか。確かにイノベーションを形あるものに仕上げる、発明発見を学術論文にするには、高度な技術的知識が必要なため、「天才がするもの」と勘違いしてしまいます。
例えば、ネット通販の出現、タッチパネルを使ったスマホ開発は、イノベーションです。実現するには、ネットワークの知識やプログラミングスキル、静電容量式タッチパネルやコンピュータなどの高度な知識が必要です。でも、「こんなものを作りたい」という発想そのものは単純であり、これこそがイノベーションの核となるものです。イノベーションのアイデアを形にする専門家は、世の中に沢山います。
イノベーションを初めて提唱したシュンペーターは、イノベーションを
「既存知の新結合」
と定義しています。プログラミングの天才、最先端のコンピュータメーカーが、必ずしもイノベーターになるわけではなく、技術を新結合させる発想をした人がなれるということです。
イノベーションを起こすには、新結合を見つける発想が必要です。イノベーションのアイデアを見つけるのに有効な3つの思考法があります。
1)アナロジー思考
2)「そもそも何だろう?」という戦略的思考
3)バックキャストで考える仮説思考
これら、類推から始まるアナロジー思考、「似ていること」の本質を見抜く戦略思考、結論を仮定してやってみる仮説思考が、イノベーションを起こします。
この記事では、実際に商品開発や生産性向上に携わった経験を基に、イノベーションに必要な発想法について考えます。

 

アナロジー思考

広辞苑によれば、アナロジー(analogy)とは、
ある事柄をもとに他の事柄をおしはかって考えること。論理学では、物事の間の特定の点での類似性から、他の点での類似性を推論すること。類推、類比。」
とあります。イノベーションを起こすのには、アナロジー思考が有効です。何もないところから、発想するケースは稀です。何かしらのヒントがあってアイデアは生まれることが多いものです。
最も創造的な仕事が期待される基礎研究でも、発明発見の経緯を詳細に調べてみると「模倣」が大きな割合を占めています。研究開発のブレイクスルーに関し、高松秀樹著「研究開発物語 創造は天才だけのものか模倣は創造への第一歩」(化学同人)という本があります。1992年に出版されたものですが、今も新鮮です。この本では、化学・医薬品に関する大きな発見・発明についてその過程を調査し、その40%は「模倣」であり、同じく40%は「偶然」であったと結論付けています。つまり、発明・発見の実に80%は、「偶然」と「模倣」なのです。後世、人は「偶然」をオリジナリティ、「模倣」を理論と呼び、あたかもシステマティックに研究開発が行われたように伝えられています。
更に調べてみると、「偶然」と言いながら、
「理屈はわからないが、これを添加して他で効果があったのでやってみた」
といった証言が多くあります。これは「偶然」と分類されていますが、「模倣」と考えることもでき、これを考慮すると「模倣による発明発見」が50%以上に達するかも知れません。
すべてを模倣するのは、「パクり」です。学術論文や特許の世界では、これは禁じ手です。イノベーションを起こすには、「パクり」ではなく「アナロジー」です。「パクり」は、全く同じことをするモノマネですが、アナロジーは、広い範囲の類似性を対象としています。遠く離れて、関係のなさそうなものの共通点を見つけることがアナロジーです。たとえば、異なる業種でも同じビジネスモデルが適用できないかといったことです。

 


研究開発物語 創造は天才だけのものか―模倣は創造への第一歩

 

「そもそも何だろう?」という戦略的思考

全くの「パクり」ではなく、アナロジーとして、遠く離れた事象の共通点を見出すには、戦略的思考が重要です。近視眼的つまり戦術的に見ていては、共通点を見いだすことは困難です。
戦略的思考を戦術的思考と対比しながら考えると以下のような特徴があります。
1)長期的な視点
2)全体的な視点
3)個別ではなく、一貫性のある視点
私の体験ですが、カイゼン活動をしている中で、
「雨の日、事務所の入口が水浸しになる」
問題が取り上げられました。これに対して、
「入口の水はけを良くする」「傘立てを増やして玄関の外に置く」「雨よけひさしを大きくする」「隣の棟と雨よけ廊下を作る」
などの対策が出ました。それら議論の中で、
「そもそも、現場から事務所に来る人がいなければいい」
と疑問を出した社員がいました。
「現場から事務所に来る必要がなぜあるのか?」
を議論すると「現場から製品サンプルを事務所に運ぶため」。「サンプル保管場所が事務所に設置されているから」「事務所にサンプル保管場所があるのは、お客様に見せるため」と深掘りされていきました。そして、「サンプルをお客様に見せること」が、本当の理由ということが判明したのです。結局、製造現場にサンプルを保管し、サンプルの写真及び動画を作って、お客様が見ることが出来るというサービスに行きつきました。コロナ禍もあってこの仕組みは、ちょっとしたイノベーションとなりました。
この「そもそも何の為?」こそ、戦略的思考です。競争に勝つための戦術を考えるのではなく、競争せずとも勝てる方法を考えるという思考法です。設備故障を直すのではなく、故障しない方法、そもそも設備を使わない方法を考えるような思考法です。

 

バックキャストで考える仮説思考

バックキャストは、「こうありたい」という未来からから考えることです。つまり「結論」から考える方法です。これは、「仮説思考」といわれます。仮説思考は、不確実性が高い場面で活躍します。まさに「うまくいくかどうかわからない」イノベーション向きの思考法です。
仮説思考は、「行動を速くする」という大きなメリットがありますが、一方で速さを求めて「仮の結論が間違っている」「他の可能性を見落とす」といったデメリットがあります。仮説思考によるリスクを「仮説立案検証学習(修正)」というサイクルを回すことで軽減できます。
イノベーションでは、とにかく仮説を立てて行動することが重要です。試行錯誤を覚悟で、何度もトライすることで目標の実現に近づきます。
発明発見が「偶然」と「模倣」と述べましたが、このうち「偶然」は試行の回数に比例して起きます。「数打ちゃ当たる」の原理です。実際に発明発見をした人の多くは、気の遠くなるような数の実験をしています。
イノベーションを起こした人にインタビューすると、必ず出てくるのが、「早く失敗しておくこと」の重要性です。完璧を求めて、遅くなるのが一番まずいやり方です。

 

まとめ

イノベーションを起こすには、新結合を見つける発想が必要です。イノベーションのアイデアを見つけるのに有効な3つの思考法があります。
1)アナロジー思考
2)戦略的思考
3)仮説思考
これら、類推から始まるアナロジー思考、「似ていること」の本質を見抜く戦略思考、結論を仮定してやってみる仮説思考が、イノベーションを起こします。

参考記事:「あったらいいな!」からイノベーションの「ネタ」を見つける4つのステップ

研究開発の生産性向上は、開発能力と並んでマネジメント力が重要

 

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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