挑戦と継続の支えになる「根拠のない自信」のメリットとデメリット
挑戦と継続の支えになる「根拠のない自信」のメリットとデメリット
「根拠のある自信」と「根拠のない自信」
「面接で、弱々しく見える就活生」
「何を言っているのかわからないプレゼン」
こんな人に出会うと、「自信」がないのだろうと思います。本当は、実力があっても「ここぞ」の場面で結果がでない、いわゆる「本番に弱い」と言われるタイプの人には、「自信」がないように見受けられることが多いものです。プロ野球の故野村克也監督は、
「教育とは、自信を付けさせること」
と言っています。(野村克也著「野生の教育論――闘争心と教養をどう磨くか」ダイヤモンド社)野村氏は、プロに入ってくる選手の才能は、皆同様に優れている。1軍で実績が残せるか残せないかの差は、「自信の差」であると言います。プロ野球の世界で「本番」である1軍で力を発揮するには、技術、体力の他に「自信」が必要でということです。よく「心・技・体」と言いますが、心の大きな部分が「自信」と野村氏は考えていたようです。
では、その「自信」とはなにかということです。広辞苑によれば、
「自信とは、自分の能力や価値を確信すること。自分の正しさを信じて疑わない心。」
とあります。文字通り「自分を信じること」です。では、「なぜ、自分を信じることができるか」というと、理由がハッキリしているものと、そうでないものがあります。そこで、「自信」を2つに分類することができます。
1)「根拠のある自信」
「根拠のある自信」とは、自分の過去の努力や結果、他者の評価から得られる自信です。例えば、「スポーツの全国大会で活躍した」「これだけ努力したから」といったものです。
2)「根拠のない自信」
「根拠のない自信」とは、特になんの事柄も背景とせずに、「自分はできる」「未来は明るい」というような気持ちを持てることです。
実際には、人々の持つ「自信」は、これほど明確に分けられるものではなく、「根拠がある」と思っていても、論理的ではないこともあります。なぜなら、過去の実績で将来を予想しても必ずしも当たらないからです。「根拠がない」と言っても、「他の人ができたことだからできる」といった根拠らしきものが存在します。私は、これを「弱い根拠のある自信」としています。(心理学等で認知された言葉ではないので、私的に使います。)
2つの自信のうち、何か新しいことにチャレンジするときなどは、「根拠のない自信」が、重要です。初めてやるのですから、うまく行くかどうかなど誰にも分かりません。「根拠のない自信」は、頑張るためのエネルギ―を出します。ただし、「宝くじで大金持ちになれる」「100m走で世界記録ができる」などと思うのは、「自信」ではなく、「妄想」でしかありません。
この記事では、「根拠のない自信」のメリット、デメリットと上手な向き合い方をご紹介します。
「根拠のある自信」とは
自分の過去の努力や結果、他者の評価から得られる「根拠のある自信」ですが、その根拠が崩壊すると喪失感に襲われます。「全国大会に出場したこと」が根拠になっている自信は、「全国優勝者」が現れたら影が薄くなります。「これだけ努力したのだから優勝」と自信を持って臨んだ競技で、まさかの予選敗退。たちまち、自信を失いかねません。
実は、「根拠のある自信」は、相対的なことが多いのです。「他の人よりも努力してきた。」「他の人より実績を上げてきた。」これらが、自信の根拠です。相対的なものですから、自分より努力している人、実績のある人が現れると自信は揺らぎます。案外「根拠のある自信」は、失われやすいものです。
これまでの実績で、それなりに自信をもって採用面接やオーデションに臨んだら、
「他の人のキャリアや所属でおじけづき、なにがなんだかわからないうちに終わった」
と話をしてくれた人がいました。
「根拠のある自信」に似たものに「自尊心」(pride)があります。自信は、「自分の能力を信じている」もので、自尊心は、「自分の人格を信じている」ものです。「根拠のある自信」は、能力だけでなく人間そのものとしての人格を強く肯定し、他を排除する強い「自尊心」へと変質し易いことに注意が必要です。
「奴は、自信家だ!」
などと周囲が嫌な顔をするのは、自信というより、「自尊心」の強さがでているのかも知れません。
「根拠のない自信」を持つメリット
特になんの事柄も背景とせずに、「自分はできる」「未来は明るい」というような気持ちを持つことが「根拠のない自信」です。
脳科学者の茂木健一郎氏は、「根拠のない自信」を最も持っているのが、赤ちゃんだと言います。赤ちゃんが、立ち上がろうとするとき、立ち上がれる根拠などありません。立ち上がっては倒れ、立ち上がっては倒れることを繰り返すうちに、立てるようになります。茂木健一郎:動画「『根拠のない自信』を持つことは、今の自分が『ゼロ』だと認めること」
「根拠のない自信」は、ゼロベースの自信です。何かを始める、挑戦するときは、誰しも実績はありません。何かを「やる」には、エネルギーが必要です。このエネルギーが、「根拠のない自信」です。
「根拠のない自信」とは、自分自身が「そう思う」ことであり、他人に影響されない絶対的なものです。「根拠のない自信」を持つメリットは、「挑戦すること」の他に、「成功するまで諦めない」ということがあります。挑戦して、挫折するのは、「自分には無理」と思い込んでしまうからです。しかし、根拠のない自信を持っている人は大きな失敗をしたとしても「いつか必ず成功する」という信念のもとに、挑戦し続けることができます。
「根拠のない自信を持つ」デメリットと「弱い根拠のある自信」
挑戦することに欠かせない「根拠のない自信」ですが、「成功するまで諦めない」には、大きなリスクがあります。どんなに能力があっても出来ないことをしているという可能があります。映画に出てくるスーパーマンになろうとしても不可能です。「根拠のない自信」に従い、自分勝手に頑張るのは、人の話を聞かない「頑固」ということになりかねません。
また、単に「自分ならなんとかできる」と思い、努力を怠れば、自分への「過信」でしかありません。
実は、「根拠のない自信」にも、希薄な「根拠」があるものです。かつて、マラソンには、2時間10分の壁ありました。ところが、一度2時間10分を切る人が現れると何人もの人が10分を切りました。今度は、2時間5分の壁です。ところが、それも一人が破ると次々に破る人が現れ、いまや2時間を切ろうかというところまで来ています。日本選手にとって100m走の10秒の壁も同じで、一人が破ると次々と破る人がでてきました。
「同じ人間、日本人ができたことなら出来るはず」との「弱い根拠のある自信」が、支えとなって努力します。誰かに憧れて努力し、その人に近づき超えていくのは、多くの成功者が経験するパターンです。
何かを始めるとき、その人に才能があるかどうかは、その道のプロでも分かりません。その道で一流になり成功したとき、
「この人には、才能があった」
と言われることの方が、多いのでないでしょうか。自分ができるかどうか保証はなくとも、「誰かが同じようなことを成功させている」といった「弱い根拠のある自信」が、努力のエネルギーになり得ます。
「根拠のない自信」は、挑戦と継続の支えになります。しかし、不可能なことに挑戦をする「妄想」や完全に一人よがりの「頑固」、何もしない「怠慢」に陥らないことです。
まとめ
「自信」は、本番で力を発揮させるには重要です。
「自信」を2つに分類すると、
1)「根拠のある自信」
2)「根拠のない自信」
があります。
「根拠のない自信」は、挑戦と継続の支えになる反面、不可能なことに挑戦をする「妄想」や完全に一人よがりの「頑固」、何もしない「怠慢」に陥ることがあります。