改革は、「職場の空気」を良くしてからでなければ進まない
改革は、「職場の空気」を良くしてからでなければ進まない
改革を阻む「職場の悪い空気」とは?
「残業時間を減らそう!」
「生産性を上げよう!」
リーダーが、そう呼びかけ職場の改革に乗り出しても、「悪い空気」が支配した職場では、なかなか成果がでません。職場の改革には、様々なメソッドがあります。これをリーダーやコンサルタントが実践するのですが、改革の成果を上げる職場と成果が上がらない職場と明暗がハッキリ分かれます。
過去、製造現場の生産性を上げるため、3S(整理、整頓、清掃)から始めて、作業改善を進めたことがあります。ある職場で、生産性が半年で30%も向上。そして、人事異動があり、異なる生産職場でも同じことを実行しました。ところが、そこでは全く同じ活動をしたのにほとんど成果が出ませんでした。そのうちに
「この機械は、汚れるのが当たり前。掃除をして限界がある」
「前もそれをやったが、ダメだった」
そんな後ろ向きの声ばかり聞こえてきました。その時、改善の手法ではなく、受け入れる「職場の空気」の違いを実感しました。
改革を成功させるためには、新しいことを受け入れることに抵抗がなく、各メンバーが自主的に動きだすような「良い職場の空気」が必要です。改革を進めるには、「職場の空気」を変えることから始めた方が、遠回りのようですが、確実に成果が出ます。リーダーが「職場の空気」を変えるポイントがあります。
1)6割の「様子見の人」に働きかける
2)「空気」に働きかける
3)「定着」するまで、継続する
そもそも「職場の空気」とは、その職場の「常識」であり「当たり前」のことです。「新しいことをやる」のが当たり前。カイゼンするのが、あたり前となっている職場は、「良い空気」でしょう。逆に、「新しいことをしようとしても、「やらない」、「出来ない言い訳が多い」、「ルールが守られない」といった職場は、「悪い空気」が蔓延しています。「職場の空気」が良いとは、「規律を守ること」と「行動すること」が、「当たり前」になっていることだと私は考えています。
この記事は、自分の経験と横山信弘著「『空気』で人を動かす」(フォレスト出版)を参考に書いています。
6割の「様子見の人」に働きかける
組織は、「20%のできる人」「60%の普通の人」「20%の物足りない人」で構成されると言われています。これが「組織論2:6:2の法則」です。職場のリーダーが何か働きかけると、2割が「積極的な人」、2割が断固として「動かない人」、そして6割が反応の薄い「様子見の人」になります。「職場の空気」は、この6割の「様子見の人」で作られます。
例えば、職場でイベントをしようとリーダーが提案すると、2割の人が「面白そうなのでやろう」と賛同し参加しますが、残り8割は無反応です。それでも、6割の人は、誘えば「参加する」と返事をします。もし、誘ってもなお8割の人が「参加する」と言わないとすれば、その職場は、相当「空気が悪い」ということです。
「職場の空気」を改善するには、6割の「様子見の人」に対しての働きかけが重要です。6割の「様子見の人」は、自分の強い意見を持っていないことが特徴です。皆が参加するなら参加する、皆が不参加なら参加しないという「空気」で動きます。
「職場の空気」を良くしようとするなら、この人達の「当たり前」を変えることが必要です。リーダーは、2割の「動かない人」は気にせず、6割の「様子見の人」のマインドを変えることに集中することです。
「空気」に働きかける
「様子見の人」は、「何が評価されるか」を気にする傾向があります。
「上司が、こんなことを褒めていた」
「これをすると、チーム員から嫌われる」
こんな思いが、暗黙の「行動の原理」になっています。リーダーは、個々のチーム員を指導・教育するというより、「様子見の人」の持つ「行動の原理」に対して、メッセージを送ることです。これを「空気」に対して働きかけると呼びたいと思います。
「こんなことをしてくれて、チームが助かった」
「これでは、皆が迷惑します」
そんな、チームからみた評価をメッセージとして継続発信することです。直接、個人の行動を褒めたり、注意したりすることも必要ですが、それだけでは「職場の空気」を変えることは、できません。個人として、注意されても、
「自分だけじゃない。他の人もしている」
などと心の中で、言い訳をいています。褒めても
「見え透いた褒め言葉」
「自分だけ『いい子』ぶっていると周囲に思われたくない」
とネガティブに考えてしまいがちです。リーダーが、発信することで、メンバーに少々嫌がられても仕方ありません。要は、ぶれない基準で、「褒める」、「注意する」を繰り返すことです。それも、特定の個人ではなく、公平に褒める、公平に注意することを繰りかえします。メンバーに、
「自分だけが、注意されている」
という印象を与えず、
「これをしたら、誰しも注意される」
そう感じるメッセージを発するのが、「空気」に対して働きかけることです。
「定着」するまで、継続する
物事には、「慣性の法則」が働きます。「空気」に対して働きかけても、簡単に「空気」は変わりません。チームの習慣や考え方などの「職場の空気」を変えるには、少なくとも半年から1年はかかるものです。
上司の権限で、強制的に何かをさせようとして、「○○強化週間」「△△月間」などとキャンペーンを打っても、その期間が終われば、元の木阿弥になることが多いものです。チーム員が、本気でそう思っていないからです。本気でそう思わないのは、メッセージに具体性がないことも原因になります。
「挨拶をしよう」「整理・整頓をしよう」
ではなく、
「出社、退社時には、必ず挨拶をする」
「退社時には、机の上には何も置かない」
そんな、具体的な「あるべき姿」を継続して発することが大切です。半年、1年間、発信し続け、褒めたり、注意し続けたりすることで、チーム員にとって、やっとそのことが「当たり前」になり、それが「職場の空気」になります。「職場の空気」が良くなってはじめて、リーダーの様々な改革に対して、チーム員が動きだすことが期待できます。
まとめ
改革を進めるには、「職場の空気」を変えることが必要です。リーダーが「職場の空気」を変えるポイントが3つあります。
1)6割の「様子見の人」に働きかける
2)「空気」に働きかける
3)「定着」するまで、継続する
そもそも「職場の空気」とは、その職場の「常識」であり「当たり前」のことです。「新しいことをやる」のが当たり前。カイゼンするのが、あたり前となっている職場は、「良い空気」です。リーダーが職場を改革しようとするとき、「職場の良い空気」がある中でこそ、成果を上げることができます。