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「融通が利かない」日本人。融通を利かす人、組織になるための3つのポイント

2021/09/19
 
夜中に信号を待つ人のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「融通が利かない」日本人。融通を利かす人、組織になるための3つのポイント

 

融通を利く人、柔軟な組織になるための3つのポイント

・深夜、車の通らない交差点の赤信号。歩道で信号が変わるのを待つ日本人
日本人のいいところでもありますが、外国人には「融通の利かない日本人」の象徴的な行為に感じます。
・客がまばらな飲食店。「マスクをしてない」との理由で、客を断る店員
・役所での各種申請。少し状況が違うと「上司に確認してきます」と待たされる窓口

日本人の融通が利かないことは、日本を知る外国人の間では常識です。「融通が利かないこと」と「バカ」とは、同意語になっています。(お疑いなら「融通が利かない日本人」で、SNSやGoogol検索をしてみてください。いやと言うほど、融通が利かない日本人への苦情が出来てきます)

会社でも役所でも、融通が利かない人、融通が利かない組織だらけです。その結果、生産性が悪くなり、お客様の悪評をもらい、売上の低迷となっています。そこで、融通が利く人、融通が利く組織になるための3つのポイントをご紹介します。

① ルール(社内規定やマニュアル)の運用を意味解釈(=条理解釈)にする
② 担当者に裁量権の範囲を明確にして認める
③ 「融通を利かせた」行為を褒める

これは、長年の会社勤務で「融通の利かない」会社や個人に苦しめられて得たポイントです。ルールを作った時、慣習として始めた時は、このルールは有効でした。しかし、時が立つと状況が変化し、ムダなものや現状に合わないものになっていきます。また、事故やコロナ禍のように、従来のルールや慣習が想定していなかった事態も起きます。この時、「融通を利かす」必要があります。今のコロナ禍の状況では、
「ルールを作ってもらえませんか。明確な指示をしてもらえませんか」
との声が、知事や政府に対して多く寄せられています。コロナ禍において、街の声、マスコミのコメンテーターが、これらを繰り返しています。政府や役人、そして庶民が少し融通を利かせれば済むことも多いように思います。(個人の意見ですが)

以下、融通を利かせる為の3つのポイントを説明します。

 

ルール(社内規定やマニュアル)の運用を意味解釈(=条理解釈)にする

すこし専門用語を使いますが、法律の解釈には、文理解釈と条理解釈とがあります。文理解釈とは、法令の規定をその規定の文字や文章の意味するところに即して忠実に解釈することです。これに対し条理解釈とは法令の文言にとらわれることなく、法令の目的・趣旨・道理(条理)などに重きをおいて解釈することです。「教育法規の文理解釈と条理解釈」(羽山健一)

戦後日本は、米国の影響なのか文理解釈が中心です。法律に書いてあるかどうか判断します。一休さんの童話に「このはしわたるべからず」と書いた看板を前にして、「真ん中を渡たればいい」と言って橋の真ん中を渡ったというのがあります。これが、文理解釈。車が全くいない深夜の赤信号でも、道を横断してはいけないと考えるのは文理解釈です。

「融通が利かない」原因の一つが、ルールを文面通り解釈する文理解釈。ルールが制定された目的に沿って、その意味するところで判断(条理解釈)すれば、「融通を利かす」ことが出来ます。

一休さんの橋の例では、「このはしわたるべからず」の立て札の目的が、「この橋は危険であるから渡るな」ならば、渡ってはいけません。(この童話には、立て札の目的がないので判断できませんが)

参考記事:生産性を落とすハンコ文化は、規定の文理解釈に縛られた文化

「融通を利かせる」ルール運用には、ルール制定の目的を明確にすること

ルールの「融通を利かせた」運用には、規定制定の目的に沿っているかどうかの判断をしています。そうでなければ、皆勝手にルールの解釈を始めます。ところが、その目的が明記されていない社内規定などのルールがよくあります。会社の指示で、「やることだけ」が伝わって、その「目的」が伝わっていないことが起きるのと同様です。

「この書類には、ハンコが有りません」
「このデータには、上司の承認クリックがありません」
と言った理由で、業務が止まってしまうことがあります。ハンコがない、上司の承認クリックが当日もらえないことで、まる1日無駄にすることさえあります。上司のハンコや承認クリックのルールに
「『書面の内容が適切か、不正がないか』を第3者にて確認することを目的として、このルールを定める」
とあれば、「融通を利かせる」ルール運用ができます。第3者に、「書面の内容が適切か、不正がないか」を確認してもらった証拠さえあれば、いいことになります。

融通を利かすには、担当者に裁量権の範囲を明確にして認める。

お客様と接する担当者や生産現場の担当者は、しばしば緊急で物品を購入する必要が生じます。また、相手からマニュアル外の要求を受けることもあります。そのたびに、上司の承認や決済を求めるなど「融通の利かない」行為は、極めて非効率です。「融通を利かせる」には、担当に対して、裁量権を認めることです。
ただし、担当の立場からすると
「これを自分で判断してもいいのか」
との不安が付きまといます。
「予想される保証金額、損害金額が、どのくらいまでなら担当の判断でよい」
「翌日、上司に報告さえすれば良い」
などの裁量権の範囲が明快だと、「融通を利かす」ことが出来やすくなります。

 

「融通を利かせた」行為を上司が褒める

融通を利かせた行為を褒めることが重要です。これは、2つの意味があります。

1)「融通を利かせた」行為を上司が褒めることで、更なる「融通を利かせた」行為を推奨する。その行為で、お客様がどれだけ喜んでくれたかなどを皆で共有することです。
2)「融通を利かせた」行為が、適切だったかを上司がレビューできる。問題があれば、「融通の利かせ方」の指針を示す。その行為が、有効で頻繁に起きるようであれば、ルールの変更をすることができます。

ベースとして、社内規定等のルールを条理解釈することが、社内コンセンサスを得ていることが重要です。一切、条理解釈を認めない風土だと、社員は「融通を利かせた」行為を隠します。そして、「融通を利かせた」行為が、裏ルールになる危険があります。企業で発覚する不祥事は、

「ルール違反と認識していたが、『慣習』として行っていた」

などと報告されることが、多くあります。社内のあるレベルまで「融通を利かせた」行為が知られていて、会社の上層部は知らないという状況が生れるのです。

スターバックスの元CEOだった岩田松雄氏はその著書で、
「会社のミッションが、社員(パートナー*)に徹底していれば、マニュアルにないことでも、お客様のためになることが自発的にできる」
と言ってます。また岩田氏は、
「融通を利かせた行為で、お客様が喜ばれた話を全社的に紹介し褒めることで、融通を利かすことが良いことであるとの認識が広がる」
だけでなく、
「経営者が社員(パートナー)一人一人を見ていてくれる」
と思ってもらえる2つの効果があるという趣旨を述べています。

* スターバックスでは、社員をパートナーと呼ぶ


ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由

まとめ:融通を利かすのは、「自分や自社の為」ではない

日本人の融通が利かないことは、日本を知る外国人の間では常識です。「融通が利かないこと」と「バカ」とは、同意語になっています。一休さんや大岡越前守、半沢直樹などドラマのヒーロー達は、皆ルール解釈の天才です。常識では皆が「できない」と思っていることを、ルールに書いていない部分を見つけて行動する。あるいは、ルールの目的は「人の為」「お客様の為」ということで、ルールを破ります。ルールを破っても「自分や自社の利益の為でない」ことで、喝采を浴びます。「融通を利かす」とき、この「自分や自社の利益の為でない」ことが重要です。外国人に広まった「融通が利かない日本人」のイメージを払拭し、生産性を大いに上げたいものです。

参考記事:「仕事が出来る人」の特徴は、すぐ分かる、すぐ決める、すぐ行動する

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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