労働生産性は、能率と効率とで決まる。日本は、効率が課題。(日本の生産性3)
労働生産性は、能率と効率とで決まる。日本は、効率が課題。
労働生産性は、能率と効率とで決まる。
生産性は、「能率」と「効率」で決まりますが、これを混同して議論されていることが、よく見られます。日本の生産性を議論する時には、国民一人当たりのGDPでみるのか、労働者一人当たりのGDPでみるのか、実労働時間当たりでみるのかを区別する必要があります。国民一人当たりのGDPは、日本の「効率」と考えることができます。女性や高齢者の就業率が上がるなどして、働く人が増えれば、増加します。長時間労働をしても上がります。一方、労働時間当たりのGDPは、「能率」に当たります。これを上げようとすると、仕事を速くするか、モノやサービスの単価を上げる必要があります。OECD報告によれば、2018年国民一人当たりのGDPは18位、労働者時間当たりのGDPは、21位です。(日本生産性本部資料より)
以下に、生産性の基本要素である「能率」と「効率」を説明します。
能率と効率の違い
「能率」は、アウトプット(生み出した付加価値)を投入した労働時間で割ったものです。労働時間は、モノやサービスを提供するために使った直接の時間です。一方、「効率」は、アウトプットを総労働時間で割ったものです。モノやサービスを提供するのに、一人の人が会社に拘束された総時間です。直接のモノづくりやサービス提供以外の会議や連絡、掃除等すべての時間を含みます。
例として、東京から大阪まで車で行った時の能率と効率を見てみましょう。8時に東京を出て、途中合計2時間休憩して17時に500Km走行して大阪に着きました。「効率」である平均時速は、500÷9=55.6Km/時です。「能率」である走行速度は、休憩を除く実際に走行した時間ですので500÷7=71.4Km/時となります。
理髪店の例でみる能率と効率
理容師が一人だけの理髪店の生産性を考えてみます。普通の理髪師の能率は、カットという仕事量からみると、個人差は小さいものです。1000円でやってくれる店も3500円の店も1万円以上の店もカットそのものは、10分ほどで終わります。つまり、仕事量からみた理髪師の能率は、どの店にも差がありません。
一方、効率をみると大きな差がでます。1日、2人しか客の来ない店では、1日あたり2単位しか仕事ができません。(一人分のカットを1単位とします)5人来てもらえば5単位、10人来てもらえれば10単位です。つまり、客の多く来る店は、効率がいいのです。
ただし、10人のお客さんが、一度に来られると、一人10分ですから最大1時間40分待ちとなり、お客さんが帰ってしまう可能性が高いことになります。
実際の生産性は、付加価値を労働時間で割りますから、単価を上げることが生産性向上となりますが、ここでは仕事量だけの話をしました。
究極の「効率」事業、個人タクシー
効率がものをいう事業にタクシーがあります。特に個人でタクシー事業を営んでいる場合は、効率がすべてです。タクシーは、定めれた走行距離当たりの運賃ですので、走行距離に応じて料金をいただく事業です。いくら頑張っても一人で1台しか運転できませんので、どれだけお客さんを乗せて走ったかで収入が決まります。能率の入り込む余地は、ありません。(洗車と給油、整備が、少しはありますが)
究極の「能率」事業、溶鉱炉
製鉄所の溶鉱炉は、能率がすべての仕事です。溶鉱炉は、一度火入れをすると1年365日24時間操業します。基本、効率は100%です。能率の部分が生産性を決めます。能率は、設備の規模と性能、そして操業技術で決まります。設備は、15年から20年の周期でしか更新することができませんので、原料と技術がベースの能率勝負です。
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まとめ:日本の労働生産性が低いのは、効率の悪さにある
今、日本の多くの企業がぶつかっている低い生産性の問題について、「効率の悪さ」に注目する必要があります。連続して仕事がこない、同一企業や組織内で仕事の多い職場と少ない職場が混在しているような例です。最近のITを活用した新しいビジネスは、ITで効率を高めた成功例が、多くみられます。タクシーの配車サイト「ウーバー」やアマゾンの通販は、ITを主として「効率」を高めるために使った例です。これまで、システムを使って仕事を速くする「能率」向上としての使い方は、日本でも徐々に普及してきました。しかし、ITを使って仕事の「効率」を高めることが不十分なようです。今後、ITを使って効率を高めることで、ビジネスチャンスが無限に広がることが期待します。