対話型生成AIは、ユーザーに「忖度」するかも知れないので要注意
対話型生成AIは、ユーザーに「忖度」するので要注意
対話型生成AIは、ユーザーの認知バイアスの影響を受ける
近年、対話型生成AIは文章作成支援の領域において急速に普及し、ビジネス文書、学術的な分析文、企画書、報告書など、多様な場面で活用されるようになりました。代表的な対話型生成AIとしては、ChatGPT や Microsoft Copilot が挙げられます。これらのAIは、ユーザーが入力する文章をもとに、短時間で課題を分析し、まとまった文章を生成する能力を持っています。
ところで、AIが優れた内容の文章を生成するには、ユーザーの入力する「プロンプト」が極めて重要です。プロンプトとは、AIに対して「どのような文章を作成してほしいか」を指示するためにユーザーが入力する文章です。これは、AIが文章を構築する際の論理構造、前提、評価軸、論調などを規定する「設計図」のようなものです。
このプロンプトとして入力される内容は、どんな文でもAIは反応してくれて便利です。しかし、それゆえに危険性を含んでいます。たとえユーザーが、中立な文章を作成しようとしても、プロンプトに無意識で認知バイアスが混入してしまうことがります。AIは、それを「ユーザーの意図」として忠実に反映した文章を生成します。この結果、偏りや誤った内容を生成してしまう可能性が生じます。これは、「AIの忖度」とも言うべき現象です。
例えば、ある就職アドバイザーが、AIに「気の弱いKさんに向いている仕事を探してください」と入力すれば、実際のKさんがどんな人であれ、「Kさんは気の弱い」という前提で仕事を探します。こんな風に就職アドバイザーの認知バイアスが、AIの出す結果に反映されてしまいます。
この記事では、対話型生成AIを利用して文章を作成する際に生じる認知バイアスの問題を整理し、プロンプト設計の重要性と、AIを安全かつ効果的に活用するための方法についてご紹介します。また、AIは単なる文章生成ツールではなく、対話を通じて書き手の思考を深める役割も果たすことを示し、AI活用の価値をより広い観点から捉え直します。
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分析的文章の作成におけるAIの価値
対話型生成AIは、分析的な文章を作成するには、非常に有用なツールです。特に、文章の初期段階において、AIは以下のように役立ちます。
1)論点の抽出と構造化
AIは、ユーザーが提示したテーマに対して、関連する論点を短時間で抽出し、文章の構造を提示することができます。これは、分析的文章のたたき台を作成する際に大きな助けとなります。人間がゼロから論点を整理する場合、時間がかかるだけでなく、視点が偏る可能性がありますが、AIは多角的な視点を提示することができます。
2)背景情報の整理
AIは、テーマに関連する背景情報を要約し、文章の基礎となる知識を提供します。これにより、書き手は分析に必要な情報を効率的に把握することができます。
3)思考の初速を高める「補助的な道具」としての価値
AIは、文章の骨格を短時間で提示することができるため、書き手の思考速度を速める効果があります。特に、分析的文章の初稿段階では、構成案や論点の候補を提示してくれることが大きな助けとなります。
ただし、AIは「分析する主体」ではなく、「指示された分析を模倣する主体」であることを理解する必要があります。AIはユーザーの意図を忠実に反映するため、プロンプトに偏りがあれば、その偏りを強化した文章を生成してしまう危険性があります。
プロンプトは文章の方向性を規定する
プロンプトは、AIに対して「どのような文章を作成するか」を指示するための文章です。文章作成を依頼するプロンプトには、以下のような情報が必要です。
1)文章の目的
2)論調(肯定的、批判的、中立的など)
3)評価軸
4)想定読者
5)前提となる事実や解釈
などです。AIはこれらを「ユーザーの意図」として解釈し、作成文章に反映します。つまり、プロンプトの内容が、文章の方向性を決定づけるということになります。
プロンプトには、認知バイアスが混入しやすい
プロンプトとして、書き手が自由に入力するため、認知バイアスが混入しやすいものです。認知バイアスとは、人間が情報を解釈する際に生じる偏りのことで、代表的なものに確証バイアス、感情バイアス、単純化バイアスなどがあります。
AIはプロンプトに含まれる語彙、感情、前提を「ユーザーの意図」として受け取るため、認知バイアスが混入したプロンプトからは、偏った文章を生成する可能性があります。
例えば、次のようなプロンプトを作成したとします。
「Aプロジェクトは失敗したが、何が原因か分析して」
このプロンプトには、書き手の認知バイアスが明確に含まれています。すなわち、「Aプロジェクトは失敗した」という前提がすでに固定されており、AIはこの前提を「ユーザーの意図」として受け取ります。
その結果、AIは偏った分析を行う可能性があります。例えば、成功面を無視する、中立的な評価を排除する、失敗を前提とした原因分析を行う、といったことです。本来であれば、Aプロジェクトには成功面も失敗面も存在する可能性があり、どちらも検討したうえで分析を行うべきです。しかし、プロンプトが偏っているため、AIは偏った分析を生成してしまいます。
正しいプロンプト設計
プロンプトに含まれる書き手の認知バイアスの影響を避けるためには、次のような段階的にプロンプトにすることをお勧めします。
1)「Aプロジェクトの成功面と失敗面を網羅的に列挙して」
2)「その中から重要な点を抽出して」
3)「抽出した点について詳細な分析を行って」
といったステップです。このように、まず多面的な評価を提示させ、その後に分析を行わせることで、認知バイアスの影響を抑制できます。
AI利用時に必要な姿勢
AIを安全かつ効果的に利用するためには、プロンプト設計において次の姿勢が重要です。
1)まず網羅的評価を提示させる:
いきなり結論や評価を指示するのではなく、まず対象についての評価を網羅的に提示させることが重要です。これにより、AIは偏った前提に基づく分析を行うことなく、多角的な視点を提示できます。
2)自分自身の意見(評価)を再構築する:
AIが提示した網羅的評価を受けて、書き手自身が改めて自分の意見や評価を再構築することが重要です。AIは多角的な視点を提示しますが、最終的な判断は人間が行うべきです。
3)再構築した意見をもとに、AIに深掘り分析を依頼する:
自分の意見を再構築した後、その意見をもとにAIに深掘り分析を依頼します。これにより、AIは書き手の意図を反映しつつ、より精緻な分析を行うことができます。
この段階的なプロンプト設計により、AIは聞き手の認知バイアスに過度に忖度することなく、より客観的で精度の高い分析を行いやすくなります。
AIは対話を通じて思考を深めるための道具でもある
AIは単に文章を作成するだけのツールではありません。対話型生成AIは、ユーザーとの対話を通じて、ユーザー自身の思考を深める役割を果たすことができます。
例えば、
1)自分では気づかなかった視点を提示してくれる
2)論点を整理し、思考の構造を明確にしてくれる
3)自分の意見を言語化する過程で、考えが深まる
4)対話を通じて、思考の盲点を発見できる
といったことです。このように、AIは文章生成ツールであると同時に、思考を深めるための「対話の相手」としての価値を持っています。AIを活用することで、書き手はより深い洞察を得ることができ、文章の質も向上します。
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まとめ
対話型生成AIを利用して効率よく文章を作成することができます。しかし、注意しないとプロンプトの中にユーザーの認知バイアスが入り込み、偏ったり誤ったりした文章が生成される懸念があります。対話型生成AIを利用する際は、まず網羅的な評価を提示させ、その後に自分自身の意見を再構築し、深掘り分析を依頼するという段階的なプロンプト設計をすることをお勧めします。
