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企業の購買に関する購買部門と要求部門(製造部など)の4つの課題

2021/09/26
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

企業の購買に関する購買部門と要求部門(生産部部など)の4つの課題

 

購買に関する購買部門と要求部門の4つの課題

「購買部門がもたもたしているので、資材が希望納期までに届かない」
「資材の購入コストが高い」
「発注部門から届いた仕様を曖昧で、購入先を決めようがない」
購買部門と購買要求部門(生産部門など)の間で、よく起きる摩擦です。卸売業や小売業など「仕入れ」が、企業活動そのものである業種はもちろんのこと、製造業などでも購買業務は大切な仕事です。売上高に対する利益率が5%程度の製造会社において、資材費が50%あると仮定すると、それが10%上がれば利益がなくなります。逆に10%下げられれば、利益は倍になります。資材の購入額が大きい自動車会社や電機会社などは、購買管理というより「購買戦略」が経営そのものとも言えます。
そんな大事な購買ですが、専門の購買部門のない会社、あっても十分に役割を果たしていない会社が多くあります。

そもそも「購買管理」とは、生産や販売など企業活動に必要なモノやサービスを最適な、
品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery
で調達することです。購買部門が、品質を無視して価格だけをみてモノを安く買いたたくものでもなければ、要求部門の短納期につられてサプライヤー(供給者)の言いなりの価格で購入するものでもありません。この3つの要素を最適化した調達をすることが購買管理の目標です。

今、多くの企業において、購買に関して4つの課題があります。
1)会社としての購買戦略欠如
2)購入要求部門の購入業務に対する理解不足
3)コンプライアンス違反対策
4)DX対応の遅れ
品質、納期、価格を満足するような購買管理を行うには、購買部門がその役目を果たすと同時に購買要求部門の理解と協力が必須です。
従来、サプライヤーを会社に呼んで購買を行っていたスタイルが、コロナ禍を機に変化しています。リモート商談やインターネット経由での購買が広がっています。そんなDXが進む時代、購買業務のDXも求められています。

会社としての購買戦略欠如

購買において、どのサプライヤーから買うか、どんな価格交渉の手段があるか、どんな関係を築くのかなど、「購買戦略」とりわけサプライヤー戦略を考えることは、有効な購買を行う上で重要です。ところが、実態は、
「長年、取引関係があるから」
「先輩から、教えられたから」
といった理由でサプライヤーを決めているケースが多いようです。初めて購入するものでも、自ら出向いて購入先を開拓するような人は、コロナ禍もあって少ないようです。大抵、代理店や商社に問い合わせて購入先を紹介してもらうことが多いようです。その結果、なかなか満足出る購買が出来ずにいます。

購買戦略の中には、競合サプライヤーの活用、相見積もりで購買力を高める手法があります。逆に、サプライヤーを絞り込み購買量を増やすことで安くすることも可能です。グループ会社での共同購入、長期契約などもあります。また、自社に対する貢献度によって、サプライヤーをランク付けして納入シェアを決める自動車会社の例もあります。
毎年、部品サプライヤーに価格ダウン目標を示す方法が自動車会社などで採用されて効果を上げています。

私の韓国での経験をご紹介します。勤め先の会社は、韓国大手半導体メーカS電子に材料を収めていたのですが、毎年厳しい価格ダウン目標がありました。世界的な資源の高騰で値上げせざるを得ないと購買担当にお願いしました。するとこんな言葉が返ってきました。
「弊社の購買システムは、前期より単価が高いとエラーが出て、受け付けられません。」
「これを解除するには、常務への特別申請が必要で、時間と手間がかかります。」
本当にこんなシステムになっているかどうかは、今でも分かりません。しかし、会社としての徹底した購買戦略に感心しました。その後、自社に戻って購買部門に
「値上げを受け付けないシステムに改造しよう」
と提案したのですが、
「日本には、『下請け法』があります」
拒絶されました。

安く買うだけが購買戦略ではありません。非常時の対応を含め、サプライヤーとの信頼を築くような総合的な購買戦略を構築していくことが重要です。  

購入要求部門の購入業務に対する理解不足

購買部門が困るのは、
「月曜日までに、○○(商品名)を買ってください。Aメーカで販売してます。」
といった漠然としていてサプライヤーを決めつけたような購買要求です。これでは、購買部門の力を発揮しようがありません。購買部門が買うのは、商品ではなく機能です。どんな機能が必要なのか、わかりません。また、Aメーカ以外に作っているところ、販売しているところがないのか疑問もわきます。購買要求部門からは、
① どんな機能のモノやサービスが欲しいのか
② 納期は、どんな理由から決まっているのか
③ どこに納品するのか
④ 今後も購入予定があるのか...等々
の情報を仕様書などで伝える必要があります。購買部門は、これらの情報に基づき、納期までの時間的余裕を考慮して、最適な購買手法を使います。
「購買要求部門が、購買に必要な情報を伝えること」
が重要です。このためには購買部門がどんな業務プロセスを持ち、どんな購買戦略のもとに活動しているのか、購買要求者は理解しておく必要があります。ところが、購買部門の業務プロセスや伝えるべき情報、注意点などを要求部門の社員に教育をしている会社を知りません。購買要求を作成するたびに先輩や購買部門に文句を言われて、購買の仕事を覚えていく人がほとんどです。購買要求の担当者に対する教育を是非すべきです。
また、買うプロセスを学ぶことで、
「どう売るか」
「売れるモノやサービスをどう作るか」
を理解するという副産物も得られます。
社内に優秀な購買担当のAさんがいました。前職を聞くと、小さな商社に勤務して10個で1円にも満たないような電気部品の営業をしていたとのこと。売る側の気持ちが分かるから、どう買うべきか分かると言います。

コンプライアンス違反対策

購買部門は、不正の温床になりやすい部門です。サプライヤーが仕事欲しさ故に購買部門にコンタクトし、不正が起こります。サプライヤーはそれらのお金を購入価格に上乗せしますので、結果として価格優位性が全くないことになります。
また、通称「下請け法」と呼ばれる法律があります。資本金によって区別されていますが、大きな企業の支払い遅延、買いたたきを禁止しています。購買部門が熟知していることは当然ですが、購買要求者が知らずに支払いが遅れて違反になるケースがあります。
また、購買要求者と検収者(受け取り承認)とを分けることが推奨され、社内ルール化しているところもあります。要求者と検収者が同一であると、不正の温床になり易いことからです。

数年前ですが、外部の会社に研究委託をして、期末である3月末に委託費を払いました。年度契約で、例年どおりに期末支払いをしていました。ところが、これを税務署から「脱税」とみなされ、追徴金を払ったことがあります。速報ベースの電子メールは受け取っていたのですが、書類など「委託先が仕事を遂行した証拠がない」のに経費として支払いをし、利益を隠したとのとの解釈でした。
他にも、口頭での発注の禁止、個人による立て替え行為の禁止など注意すべき点があります。これらを社内ルールとして定めている会社もあります。
購買部門は、コンプライアンス違反を起こし易い部署であることを自覚して、教育や業務遂行が必要です。

DX対応の遅れ

従来は、営業マンから話を聞いて、購入先を決め手形や銀行振り込みで支払いをしていました。ところが、購入先を決めるのにネット検索をし、クレジットカードでの支払いもできるようになってきています。
モノやサービスの購入も単純な買い切りから、リース、レンタルになり、最近ではサブスクリプション方式(定期一定料金制)の方がお得なケースが出てきています。また、機械品にはIoT機能が負荷され、サプライヤーが使用状況を把握、メンテや機種交換の推奨をしてくれます。

これらは、DX(デジタル改革)といわれ、サプライヤーのモノやサービスの供給方法が大きく変化しつつあります。既に穀物や資源を世界市場で取引する会社では、気候変動、運賃の変化、市場価格変化などをデータ化し、AI分析と組み合わせて細かい予想を立てて仕入れと販売を行っています。
供給側と同じように、購買する側もDXを進め、利便性とコスト削減するなど、品質、納期、価格を最適化した購買管理をしたいものです。

まとめ

企業における購買活動に関して4つの課題があります。
1)会社としての購買戦略の欠如
2)購入要求部門の購入業務に対する理解不足
3)コンプライアンス違反対策
4)DX対応の遅れ
品質、納期、価格を満足するような購買管理を行うには、購買部門がその役目を果たすことと同時に購買要求部門の理解と協力が必須です。

参考記事:日本企業が、DXを推進するために乗り越えるべき3つの壁
「コンプライアンス違反」の防止対策と発生時の対応

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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
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