日本企業が、DXを推進するために乗り越えるべき3つの壁
日本企業が、DXを推進するために乗り越えるべき3つの壁
日本企業が、DXを推進できない3つの壁
大手メーカーの社長とこんな会話をしたことがあります。
「社長、アマゾンは、なんで儲けているか知っていますか?」
「知ってるよ。通販で儲けているのだろう。コロナでガッチリだろ」
「違いますよ。利益の60%以上は、AWSですよ」
「AWSってなんだ?」
「アマゾンウエブサービスの略で、クラウドサービスのことですよ」
社長は、技術系の方です。続いて
「では、キントーンは知ってますか?」
と聞くと、
「最近事務処理に便利だというので、導入したサイボウズ社のソフトだろう」
「それって、AWSのクラウドサービス上に構築されているんですよ」
「...」
これでも、技術者出身でシステムに理解ある社長です。営業や管理系出身の役員は、社長以上にクラウドにもAIにも縁がありません。それでいて、
「当社もDXに力をいれなくては」
と役員会で発言され、システム予算の確保に協力をしてもらっています。これが、日本のDXの受け止め方の実情かも知れません。
日本の既存企業が、クラウドやAIなどを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル改革)を推進できていない要因が3つあります。
1)企業トップ層の問題意識が低い
2)ITをお抱えベンダーに丸投げしている
3)アプリケーションソフト仕様へのこだわり
従来から強固な基幹ソフト(レガシーソフト)を持っている企業ほど、DX推進でこの3つが壁となっています。これらの、壁を乗り越えるのことが重要です。
企業トップ層の問題意識が低い
DXの必要性は、企業トップ層でも知っています。しかし、ITのこと、DXのことは、「専門部署に任せてている」「長い付き合いのITベンダーが対応している」といった具合です。DXとは、デジタル技術を使って既存のビジネスモデルを変革することが目標です。今のビジネスの裏も表も知っている人が参加し、デジタル技術の支援を得て新しいビジネスの形を作ることができます。
ある会社にスマホの写真撮影、QRコード読み取りアプリ、通信機能とクラウドで画期的な在庫管理システムを提案したA君がいました。ところが、システム部の上司にこの案を説明すると、「セキュリティは大丈夫か?」「従来システムとスマホを接続するのか?」と疑問が出ました。A君は、疑問に答えるために情報を集めて再度説明しましたが、結局従来システムに専用の読み取り端末をつけることで決着しました。
「お前は、システムにスマホを使ってみたかっただけだろう」
そう担当役員に言われたA君は、大きな失望感を味わいました。A君の上司は、長い間付き合っている大手システム会社の従来システムの拡張案を選びました。この上司は、長年従来システムに関わり維持管理してきた人です。担当役員は、この上司の意見に従っただけです。
日本の企業トップ層は、いくつかの選択肢からバランスを考えながら物事を決めていきます。ITの技術、ましてはクラウド、AIなど新しいデジタル技術については、ほとんど知らないと言ってもいい状況です。A君の技術やその可能性を評価したのではなく、専門家の上司の意見を選んだのです。まだまだ、会社のトップ層は、DXを推進するデジタル技術の破壊力を過小評価しています。
ITをお抱えベンダーに丸投げしている
日本企業の多くは、システムの企画はするが、実際のシステム構築や維持管理をお抱えベンダーに丸投げしてきました。自社にいるシステム技術者は、従来型のIT技術知らない、従来型の開発手法しか知りません。クラウド、APIエコノミー、アジャイル型開発といった新しいテクノロジーを習得するには、ハードルがあります。同様にお抱えベンダーの技術者も従来型IT技術しか知りません。新技術の習得と、新技術を思いきって使う勇気が必要です。
IBMは、かつての花形であったサーバー事業からすでに撤退しています。クラウドが、主流になることを早々に予測しての行動です。従来IT技術で生きているベンダーが、新しいテクノロジーに対応できなければ、気が付くとお抱えベンダーがクラウド活用やアジャイル型開発の抵抗勢力になってしまいます。DX推進の足かせが、自社のシステム担当やお抱えベンダーとなりかねません。
アプリケーションソフト仕様へのこだわり
日本企業は、アプリケーションソフト仕様へのこだわりが強く、自前でスクラッチからソフトウエアを開発してきました。
「ソフトは、ユーザーの要望をもとに作るべし」
との考え方のもと既存の基幹システムには、ユーザーの要望がフルに盛り込まれています。ところが、機能を維持するためのデータが取れていない、社会環境や社内状況が変わり不要になっている、そもそも使うユーザーがほとんどにないなどの理由で、使われていない機能が沢山あります。ところが、事情を知らないシステム部門は、毎年多大なコストをシステム機能の維持管理に払っています。
使い易いかどうかは、ユーザーの慣れによるところが大きいものです。スマホの機種交換で戸惑うようなもので、慣れると「使い易い」と思うものです。大切なのは、システムの思想や構造が、これからのビジネス対して本当に有効であるかどうかです。
「ソフトに仕事を合わせる」
というと日本では、まだ抵抗感があります。しかし、経理ソフトなどではパッケージソフトが普及し、ソフトに合わせる形で仕事がなされています。経理ソフトを変えてもビジネスモデルとしての差別化とは言い難いものです。アプリケーションで差別化をすべきものと汎用でいいものとを組み合わせていくことです。そして、本当に差別化すべきソフトの開発は、従来のウォーターフォール型ではなく、アジャイル型が威力を発揮します。
まとめ
日本企業が、クラウドやAIなどを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル改革)を推進できない要因が3つあります。
1)企業トップ層の問題意識が低い
2)ITをお抱えベンダーに丸投げしている
3)アプリケーションソフト仕様へのこだわり
従来から強固な基幹ソフト(レガシーソフト)を持っている企業ほど、DX推進でこの3つが壁となっています。これらの、壁を乗り越えるのことが重要です。