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法人営業を成功させるためのお客様タイプ別のアプローチ方法

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

法人営業を成功させるためのお客様タイプ別のアプローチ方法

 

法人営業を成功させるためのお客様タイプ別のアプローチ方法

商品(モノやサービス)をお客様に売り込みでは、商品の性能や価格といったことだけでは、うまく行きません。モノやサービスをシビアに評価する法人相手の営業であっても、商品の性能や価格以外のことで売り込みに成功したり、失敗したりします。
その大きな要素が、お客様のタイプです。人には、新しいことや前向きなことに関心を示すタイプと、安全に敏感でリスクを回避することを優先するタイプがいます。どちらのタイプが良いとか悪いとかは、ありません。しかし、商品を勧めるにあたって、お客様の関心は異なることを心得ておくことが重要です。
例えば、新規なことに前向きタイプ(積極派)のお客様なら商品の新規性を訴え、慎重なタイプ(慎重派)ならリスクの少ない提案をするといった具合です。
お客様を積極派と慎重派にわけましたが、人をこの様な2つのタイプに分けて説明する理論を制御焦点理論といいます。制御焦点理論(Regulatory Focus Theory)は、コロンビア大学の心理学者エドワード・トーリー・ヒギンス(E. Tory Higgins)によって提唱された、「人が目標を達成しようとする際の心理的な志向性」を説明する理論です。
この理論では、人間の動機づけを大きく「促進焦点」(積極派)「予防焦点」(慎重派)の2つのタイプに分類しています。
ところで、法人営業を行う際、お客様には3つの立場があります。まず、当事者。当事者は、商品を選定する立場の人です。設備やサービスであれば、実際に使用する人でしょう。次に登場するのが、購買担当者。契約をし、お金を払う立場の人です。会社によっては、購買担当を置かないところもあります。そして、決定者。多くの場合が、当事者の上司や経営者です。
それぞれの立場の人は、立場によらず促進焦点が予防焦点の心理を持っています。担当者が促進焦点で、決定者が予防焦点であることが多いこともありますし、逆のこともあります。これらを見極めて、営業することが、売り込み成功のポイントとなります。
この記事では、制御焦点理論を説明し、
・ケースA:担当者・購買が防止焦点、上司が促進焦点
・ケースB:担当者が促進焦点、購買・上司が防止焦点

という2つの典型的なケースを例として、それに適した営業アプローチを考えます。

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制御焦点理論とは

制御焦点理論(Regulatory Focus Theory)では、人間の行動は主に以下の2つの焦点によって方向づけられるとされます。
1)促進焦点(Promotion Focus)
促進焦点の人は、成長・成果・理想の達成を重視します。
「得をしたい」「チャンスをつかみたい」「新しい取り組みを進めたい」といった動機が強く、ポジティブな未来像に反応しやすい傾向があります。
2)防止焦点(Prevention Focus)
防止焦点の人は、安全・責任・リスク回避を重視します。
「失敗したくない」「損を避けたい」「現状を維持したい」といった動機が強く、ネガティブな事態の回避に反応しやすい傾向があります。

法人営業においては、立場によって焦点が異なることが多く、担当者・購買は防止焦点が多く、上司は促進焦点が多いという構造が、私の経験では多いように思えます。(経営者が一番積極的という例が多いかも)

 制御焦点とメッセージの適合(Fit)

制御焦点理論の応用として、相手の焦点に合わせたメッセージを提示すると、相手は「しっくりくる」と感じ、意思決定がスムーズになります。これを 「適合」(Regulatory Fit)と呼びます。
促進焦点の相手には、成長、効率化、競争力、新しい価値といったことを強調します。
防止焦点の相手には、リスク回避、現場負荷ゼロ、安全性、コスト確実性を強調。
「適合」は、営業活動において「相手の心を開く」効果を持ちます。

  制御焦点抑制(Non‑fit)の役割

一方で、あえて相手の焦点と異なるメッセージを提示することで、相手の自動的判断を抑制し、熟慮を促す効果があります。「不適合」(Regulatory Non‑fit)と呼びます。
・「適合」:気持ちよく意思決定しやすい
・「不適合」:立ち止まり、深く考える
営業では、「適合」⇒ 「不適合」の順で提示することで、安心と熟慮の両方を引き出すことができます。

 

法人営業における関係者の構造とアプローチ方法

法人営業では、以下の3者が典型的に関与します。
1)担当者(使用者):
現場で実際に製品を使う立場であり、作業負荷、使いやすさ、現場の反応を重視します。
防止焦点のことが多いが、改善意欲が高い場合は促進焦点になります。
2)購買担当:
コスト管理、契約リスク、社内説明責任を担います。基本的に防止焦点が多く、「安全な投資」であることが最重要と考えます。
3)上司(決裁者):
組織全体の成果や競争力を重視する立場であり、促進焦点であることが多い。「未来の姿」「成長ストーリー」に反応しやすい傾向にあります。
このように、法人営業では複数の制御焦点が混在するため、単一のメッセージでは不十分です。

 

ケースA:担当者・購買=防止焦点、上司=促進焦点の例

ケースAは、現場と購買が慎重で、上司が前向きという典型的な構造です。
営業としては比較的進めやすいケースですが、慎重派の不安を取り除かない限り、上司の前向きな姿勢が意思決定に反映されません。

担当者(防止焦点)へのアプローチ
担当者は「現場が混乱しないか」を最も気にする傾向にあります。
アプローチのポイントは、現場負荷を増やさない、作業手順が変わらない、教育コストが低い、トラブル時の対応が明確、既存システムとの整合性が高いといったことです。

購買担当(防止焦点)へのアプローチ
購買は「コスト」「契約リスク」「社内説明」を重視します。
アプローチのポイントは、費用対効果の確実性、契約リスクの低さ、段階導入でリスク最小化、他社導入実績、ROIの明確化などです。
例えば、
「まずは小規模導入で効果を確認し、問題がなければ拡大できます。」
といったトークが有効です。

上司(促進焦点)へのアプローチ
上司は「成長」「競争力」「未来の姿」を重視します。
アプローチのポイントは、競合との差別化、業務効率の飛躍的向上、次世代オペレーションの基盤、組織の成長ストーリーといったことです。

ケースAの全体戦略としては、
担当者・購買には、「適合」(防止焦点)で安心を与える
 → 現場負荷ゼロ、リスク最小化、段階導入、実績
上司には 「適合」(促進焦点)で未来を描く
 → 成長、効率化、競争力
最後に、「不適合」で意思決定を促す
例えば、
担当者・購買には「導入しないリスク」、上司には「現場負荷の少なさ」を訴え、
慎重派の不安を取り除き、前向きな上司の意思決定を後押しする
という流れを作ることです。

ケースB:担当者=促進焦点、購買・上司=防止焦点の例

ケースBは、現場は改善意欲が高いが、購買と上司が慎重という構造です。
営業としては最も難しいケースであり、担当者の熱意だけでは決裁が進みにくいケースです。

担当者(促進焦点)へのアプローチ
担当者は「改善」「効率化」「新しい取り組み」に前向きです。
アプローチのポイントは、作業効率の向上、現場改善のリーダーシップ、新しい取り組みの価値、現場のモチベーション向上といったことです。
購買担当(防止焦点)へのアプローチ
購買は慎重で、担当者の熱意だけでは動きません。
アプローチのポイントは、コストの確実性、契約リスクの低さ、段階導入、他社実績、ROIの確実性を伝えます。
上司(防止焦点)へのアプローチ
上司が防止焦点の場合、新しい取り組みはむしろ不安材料になります。
アプローチのポイントは、現場負荷を増やさない、リスク最小化、既存業務との整合性、トラブル時の対応策等を示します。

ケースBの全体戦略
① 担当者には促進焦点で味方を作る
→ 改善意欲を刺激し、社内での推進役になってもらうことです。また、営業サイドと担当者が一緒になって、上司を説得するといった関係が目指します。
購買・上司には防止焦点で安心を与える
→ コスト・リスク・現場負荷の最小化を徹底提示
最後に 「不適合」で意思決定を促す
購買・上司には「導入しないリスク」、担当者には「現場負荷の少なさ」を強調し、
促進焦点の担当者の熱意と、防止焦点の上層部の慎重さを橋渡しする
といった構造を作ることです。
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まとめ

法人営業においては、担当者、購買、決裁者といった複数の相手がいます。
この相手には、行動の動機付けが、「促進焦点」(積極派)と「防止焦点」(慎重派)の2つのタイプがあります。
営業活動では、相手のタイプに合わせて、「誰に何を言うか」だけでなく、「どの順序で言うか」が極めて重要です。

参考記事:提案型営業におけるプレゼンテーション手法の3ステップ

会社向け営業(B to Bビジネス)では、まず購買に関わる人を見つけること

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