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IT投資が、必ずしも生産性向上や売上増につながらない理由

 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

IT投資が、必ずしも生産性向上や売上増につながらない理由

 

IT投資が、必ずしも生産性向上や売上増につながらない?

「IT投資をしても生産性が、ほとんど上がらない。」
「売上増や収益増に繋がらないIT投資」
企業が行うIT投資は、「業務の正確性が向上した」「事務処理が楽になった」といった各業務の合理化を達成できます。しかし、冒頭に挙げた「生産性や売上増に繋がった」と実感できない事例も見受けられることがあります。
2025年2月1日付けの日経新聞に「IT投資 生かせぬ日本」と題する記事がありました。この記事では、日本のソフトウエアを中心とするIT投資が増えているにも関わらず、日本企業の生産性が低迷していることが報じられています。日本経済が長期に渡ってのデフレによりGDPがほとんど拡大していないという背景があるものの、IT投資の成果について考えさせられるものがあります。
また、内閣府のHPには、国別のIT投資の状況が紹介されています。この資料では、日本がこれまでIT投資をしてこなかったことが分かります。また、IT投資と生産性の向上をみると、IT投資が必ずしも生産性に直結しているようには見えませんが、それでも日本のIT資本生産性が低迷している現実が分かります。

IT投資の国際比較

     IT投資の国際比較 出典:内閣府HP

これらIT投資に関する国際比較は、各国の産業構造などに影響されています。日本の場合、従業員の少ない中小企業が多くあります。その上、IT投資が従業員の多い大企業に偏っています。令和5年度製造基盤技術実態等調査 「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」によれば、IT投資をしているのは、全企業の半分程度です。元々生産性の悪い中小企業が、IT投資やDXから取り残されている実態があります。

IT投資と会社規模

     企業従業員数とIT投資比率   出典:内閣府)令和5年度製造基盤技術実態等調査

IT投資が、生産性の向上や売上増に繋がりにくい原因は、3つが考えられます。
1)IT投資が「守り」に偏っている
2)業務改革を伴わないIT導入
3)IT導入で生まれた時間の有効活用ができていない
生成AIを始め近年益々、ITの新技術が生まれその導入の必要性が強調されています。IT技術に便利さや新しさは感じても、企業の生産性向上や売上増に繋がるかどうかは、他の要素が大きいことを考慮した投資計画が重要です。

 

IT投資が「守り」に偏っている

IT投資には、「守り」「攻め」があります。「守りの投資」とは、システムの保守や更新、業務の効率化やコストダウンなどに使われます。「攻めの投資」とは、業務改革や新ビジネス創出といったことに使われます。日本のIT投資の多くが、既にIT資産を持っている大企業によってなされています。これらの企業は、既存のシステム(いわゆるレガシーシステム)に縛られた保守や更新に追われている現実があります。IT投資のうち、何が「守り」で、何が「攻め」かは、正確に分離することはできせんが、おおよそ8割が「守りの投資」と言われています。参考記事:「実にくだらない「守り8割・攻め2割」の議論、所詮はIT部門の予算ではないか」
システムのサーバーを世の流れに従って、クラウド化しても、機能そのものが変わるわけではありません。より大量のデータを使えたり、その後のシステム変更や更新が楽になったりするのでしょう。しかし、それで大きく全社の生産性や売上が伸びるものではありません。
守りのIT投資から「攻め」のIT投資へシフトし、新規事業創出や顧客満足度を高めるなど売上に結び付く投資にしていくことです。
また、IT投資におけるKPI(Key Performance Indicators)を設定し、投資効果を定期的に検証すること。データの収集・管理体制を整備して、「守り」のIT投資を使って、データの収集・分析・管理を充実させ売上増、顧客増に繋がるような工夫、体制作りを行うことです。

 

業務改革を伴わないIT導入

IT投資を行いDXに繋げていく上で、重要なことは業務の改革です。そもそもIT投資とは、業務改革を行う手段です。
IT導入が単なるツール導入に留まり、業務プロセスの抜本的な見直しがされず、現状の業務フローをシステムの置き換えるだけでは、生産性の向上や売上増には、貢献しません。
官庁の申請手続きのシステム化するために投資をしたにも関わらず、内容は手書き(ワープロ書類)がスマホのインプットに変わっただけ、また書類の申請も継続という例が沢山あります。業務効率化ではなく、単純なデジタル置き換え、しかも従来の方法も残すといったことです。
IT導入に当たって、業務フローのみならず、企業風土や組織体制の見直しが必要な場合もあります。情報の伝達や組織管理の為にいく層にもなった組織は、情報伝達や管理がデジタル化やリモート化によって、もっとシンプルにできる可能性があります。多くの人が階層に関わらずデータに接する機会が増えれば、イノベーションを起すことも期待できます。ただし、どんな層からの提案も会社として受け入れる企業風土が必要でしょう。

 

IT導入で生まれた時間の有効活用ができていない

IT投資をすることで、効果の大小はありますが、システム対象の業務は、速くなり楽になります。IT投資の効果を評価するにあたって、各作業の時間短縮やコストダウン効果などのデータが使われ、それなりに投資効果が確認できます。しかし、その効果はシステムの扱う業務であって、会社全体に対する効果の評価は、あまりなされないようです。
また、現実には、IT投資で対象業務が時短され、空いた時間が生まれても、パーキンソンの法則である
「仕事は、完成までに利用可能な時間を使い果たすように拡大していく」
に従って、他のことに必要以上の時間をかけることになり、IT導入前と同じような繁忙感で1日を過ごしてしまいがしになります。IT導入を期に仕事量を増やすか、省人でもしないと生産性は向上しません。
IT投資やDX推進で生産性や売上増を生み出すには、IT技術で生まれる時間をどう活用するかを計画時に検討しておくことが重要ではないでしょうか。

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まとめ

IT投資が、生産性の向上や売上増に繋がりにくい原因には、
1)IT投資が「守り」に偏っている
2)業務改革を伴わないIT導入
3)IT導入で生まれた時間の有効活用ができていない
といったことがあります。IT技術に便利さや新しさは感じても、企業の生産性向上や売上増に繋がるかどうかは、他の要素が大きいことを考慮した投資計画が重要です。

参考記事:DXに必要な経営資源は、「ヒト」「モノ」「カネ」より「データ」「コト」「時間」

日本企業が、DXを推進するために乗り越えるべき3つの壁

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