店内のお客様視線を誘導して売上アップを図る脳の「注意」システム
店内のお客様視線を誘導して売上アップを図る脳の「注意」システム
売上アップには、お客様の「注意」を商品に向けさせること
「店に張られた数々のPOP」
「店の入口に並べた特売の旗」
「地域に配る大量のチラシ」
これらは、お客様の視線を集めて商品を売ろうという手法です。スーパーやドラッグストア、飲食店などでモノやサービスを売るために様々な努力がなされています。同じモノやサービスでも、その売り方で売上には、大きな差が生まれるからです。POP(Point of purchase advertising=購買時点広告)を並べたり、旗を掲げたりすると、店の人は努力している気になります。しかし、実際に売上増に繋げるには、お客様の心理や行動にあったものでなければ、有効にはなりません。例えば、商品棚の上、見上げるような所にPOPが張ってあっても、多くの人は気づくことがないでしょう。
マーケティングの分野では、AIDMA(アイドマ)やAISASなど、消費者が商品を購入に至るまでの心理的プロセスが知られています。
例えば、AIDOMによれば、お客様が商品を購入に至るまでには、以下の5つのプロセスがあると説明されています。
1)Attention(注意)
2)Interest(関心)
3)Desire(欲求)
4)Memory(記憶)
5)Action(行動)
このプロセスの示すところは、商品を買ってもらうには、まず商品(モノやサービス)に注意を向けてもらわなければ始まらないということです。お客様に、「商品に気づいてもらう」というAttention(=注意)のプロセスを絶対に飛ばすことはできません。スーパーであろうと、ドラッグストアであろうと、飲食店のメニューであろうと、商品が目にとまらなければ、買ってもらう確立はゼロです。どんな売り方にせよ商品を買ってもらえない理由の多くは、Attention(注意)段階でのつまずきです。言い換えれば、売上増のためには、お客様の「注意」を売りたい商品に向けさせることです。
ところで、人の脳には2つの「注意」システムがあります。
1)トップダウン注意
2)ボトムアップ注意
簡単な例では、暑い日にコンビニの飲み物コーナーで、「冷たいさわやかなモノ」を思い浮かべて炭酸飲料を探すようなことが「トップダウン注意」です。一方、コンビニの同じコーナーに初めて見るボトルを見つけて、思わず買ってしますようなことが「ボトムダウン注意」です。お客様は、このいずれかの注意システムを働かせて店内を見渡しています。お客様の視線を売りたい商品に集めることが、売上増の第一歩です。
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売上を3倍にする マーケティング革命 消費者の意外な購買心理メカニズムとは;
「トップダウン注意」とは?
「トップダウン注意」とは、「概念駆動処理」とも言われ、その人が既に持っている知識や考えを基に、脳が自分自身にかける注意フィルターとことです。
暑い日にコンビニに入り、飲料棚の前で数ある商品の中から、スポーツドリンクや炭酸飲料に注目するのは、「トップダウン注意」が働いているからです。コンビニ内で飲料を買いものにおける「トップダウン注意」は、目的のものを素早く見つけるためのショートカットの役目をしています。
地域に配るチラシは、お客様に前もって情報を流し、店内での「トップダウン注意」の基になります。ただし、チラシを見てもらえるか、チラシの中で売りたい商品に「注意」を向けてもらえるかが大切です。
店の入り口にある旗もお客様に前情報を与えます。ただし、見ている時間は、1秒にも満たないものです。長いメッセージを書いてもムダです。
「本日、たまご特売日」
といった程度です。これでも、お客様には「トップダウン注意」を促し、卵の「値札」には視線が向きやすくなります。
「ボトムアップ注意」とは?
「ボトムアップ注意」とは、「データ駆動処理」とも言われ、視覚や聴覚などから入力された外からの情報の中から、顕著なものに対して注意を向ける自動的な反応のことです。
例えば、コンビニの飲料棚に見たことがない色のボトルが目に留まり、
「買ったことがないけど、なんだか美味そう」
とその商品を手に取り買うことがあります。「飲み物を買おう」としか思っていない時に、その目新しいボトルに目を向けさせたのが、「ボトムアップ注意」です。コンビニ内での買い物における「ボトムアップ注意」とは、店頭で意図していなかった商品に目を向けさせ、その商品への変更を起こさせるきっかけとなります。
お客様の注意を売りたい商品に向けさせるには?
お客様が、販売店や飲食店に入るということは、「商品を買う」「飲食をする」という意思が働いています。お客様の基本的な「トップダウン注意」は「商品を見る」、「メニューを見る」ことであり、視線はそこに集中しています。商品やメニューが見やすく比較検討しやすい状況に配置されていないと、お客様はイラ立ちを覚え、選択しにくくなります。
「トップダウン注意」は、その店やお客様の状況により変わります。日用品や食品であれば、商品そのものを見て、次に価格といった順に「トップダウン注意」が働きます。商品と価格が近くにあることが必須です。家電や薬など商品によっては、機能や効能などが「トップダウン注意」となります。
他の商品と大きく異なるパッケージやカラフルなPOPは、「ボトムアップ注意」を誘発します。しかし、来店した人は、まず「トップダウン注意」が働いて商品や値札に視線が向いています。POPが、商品から離れ過ぎた所では、お客様の目に入りません。逆に商品や値札を隠すように置いてあっては、お客様にイラ立ちを覚えさせるだけで、中身を読んでもらえません。スーパーなどで、販売員が直接商品を説明したり、いつもと違う商品の並べ方は、「ボトムアップ注意」を誘発します。
新商品の販売、拡販を考えると、お客様の「いつも通りの商品」を買うという「トップダウン注意」から、「いつもと違う商品」を見つけて買うという「ボトムアップ注意」を引きだすことが重要になります。
まとめ
売上増の為には、お客様の「注意」を売りたい商品に向けてもらうことが必要です。この際、人の脳にある2つの「注意」システム
1)トップダウン注意
2)ボトムアップ注意
を活用することです。お客様は、このいずれかの注意システムを働かせて店内を見渡しています。お客様の視線を売りたい商品に集めることが、売上増に繋がります。
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