「なりたい姿」に向かって変えていく「改革志向」の意見満載

職場(工場)の「断捨離」(整理・整頓)を実施する上での5ステップ

2023/07/05
 
職場の断捨離のイラスト
記事一覧

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

職場(工場)の「断捨離」(整理・整頓)を実施する上での5ステップ

 

職場の「断捨離」目的と5つのステップ

モノが散乱し、床面が見えない作業現場
作業台の上は、作業中の部品と工具だらけ
いつ使うかわからない治具が押し込められた保管棚
これは、ある機械品組み立て工場の風景でした。職場リーダー(班長)のAさんは、これまで職場の整理・整頓をやってきました。しかし、少々整理しても、引き取りの悪い製品や治具などで直ぐに作業場はモノであふれてしまいます。また、チーム員もこの風景に慣れてしまい、「整理・整頓」と言われても、それほど不自由を感じていないのが本音でした。ところが、事件が起きました。お客様から預かった特殊部品を紛失させてしまったのです。
現場を確認に来たお客様から
「こんなに整理・整頓の悪い職場なら、モノもなくなるでしょう。このままでは、今後発注先として適切か検討も必要になります」
と脅されました。怒った工場長が、
「作業場の『断捨離』をしろ」
と班長のAさんに号令をかけ、職場の「断捨離」がスタートしました。
Aさんから「断捨離」つまり「整理・整頓活動」の進め方相談を受け、このチームの根本的問題点に気付きました。Aさん達の思う「断捨離」(整理・整頓)は、職場を美しくすることでした。これが、そもそも間違いです。
職場の断捨離は、モノを紛失させないようにする、生産性を上げる、安全な職場にするといった実目的です。単に「きれいにすること」ではありません。限られたスペースを有効に使い、無駄なく無理なく生産活動をするための環境をつくるのが職場の「断捨離」です。
日本の職場では、5Sとか3S活動が行われてきました。「断捨離」は、このうちの整理・整頓の部分といえます。整理・整頓ができれば、5Sとか3S活動の8割は、「出来た」ことになります。Aさんたちは、ながく5S活動として整理・整頓をしてきましたが、人からみて「きれいな職場作り」に励んでいたのです。
職場の断捨離(整理・整頓)には、3つの目的があります。
1)探す時間をなくす
2)作業を速くできるようにする
3)職場を安全にする
これらが、達成された結果、品質が向上する、職場がきれいになるなどの効果も生まれます。
「家庭の断捨離」と「職場の断捨離」の決定的違いは、目的の違いです。家庭の断捨離は、快適な生活ができるようにすることです。要、不要の基準は、自分にとって必要か不要かです。捨てる判断基準に「気持ちよさ」「思い出」などが含まれます。職場の断捨離では、捨てるかどうかの基準は、それで生産性が向上するのかなど実務的な効果です。
家庭の断捨離と職場の断捨離とでは目的が異なりますが、実行する手順は同じです。具体的に職場の「断捨離」には、以下の5ステップがあります。
1)断捨離をする場所を決める
2)不要品を捨てる
3)職場を作業場、保管場、準備場に分ける
4)置き場を最適化する
5)職場環境を維持する仕組みを作る
このステップで、断捨離を限定された範囲から徹底的に断捨離を進めていくのがコツです。狭い範囲で自信つけ、広い範囲に広げていくことです。Aさんは、このステップで6か月ほどかけて、20mx60mの工場内の断捨離を断行。モノがあふれて、まともに床が見える場所さえなかったところが見事によみがえりました。その後、モノが紛失したことはありませんし、生産性は格段に上がっています。

 

断捨離をする場所を決める

職場全体を断捨離するのは、ハードルが高いものです。狭い範囲を区切って始めるのが、確実です。薄く広く断捨離するより、狭い範囲を徹底的にやる方が、効果的です。それは、狭い範囲でも徹底的に断捨離すると、その効果が見えます。断捨離に自信がつき、勢いがつきます。

実際に、Aさんは、初めの週は1つの作業台だけ、次の週は幅1メートルほどの棚1つだけと決めて断捨離を実施していきました。

不要品を捨てる

断捨離の場所を決めたら、その場所にあるモノの内、不要品を捨てます。たぶん、賞味期限のすぎたようなゴミというべきモノが大量にでるはずです。
次に、判断が必要なモノが現れます。その時の判断基準は、
「そのモノが、その場所(エリア)に置いておく必要があるかどうか」
です。会社にとって必要であっても、そこに置いておく必要がないものを見つけたら、そのエリアからどかします。(後で、そのモノの処置は考える)

職場を作業場、保管場、準備場に分ける

不要品を捨てたあとエリアを3つに分けます。エリアが狭い作業机でも、広い工場建屋でも同じ考え方です。
① 作業場とは、実際に作業する場所です。組み立てを行う場所、書物をする机の上
② 保管場所とは、工具(筆記用具)を置く場所。製品を置く場所。材料や部品を置く場所
これらの保管場所は、さらに分けておくと便利です。机の引き出し、棚の下段中段上段、床のAエリア、Bエリア、Cエリアといった具合です。場所を分けるのは、モノの出し入れを速くするためで、アマゾンの倉庫のように、モノと場所をつなげるシステムなどで出し入れがスピーディにできるなら混在しても構いません。
③ 準備場とは、次の仕事をする場所
そこには、次の組み立ての材料や治具が用意する場所です。外段取りをする場所です。

 

置き場を最適化する

モノの置き場を最適化するとは、探す作業をなくすこと、モノを出し入れする時間を短くすることです。Aさんは、こんな目標をたてました。
「モノは3分以内、データは30秒以内で、出し入れできるようにする」
モノを探している時間はムダです。Aさんの職場では、断捨離が進むと
「モノは1分以内、データは10秒以内で出し入れできる」
までになっていきました。Aさんは、更に作業を速くするために作業場所や保管棚の配置換えに行いました。作業者の動線を短くする狙いです。
そして、その効果を測定するために、チーム員に万歩計をつけてもらいました。作業時間中、何歩歩くかで配置換えの効果を確認しました。記録をつけていくと期待したとおり、30%ほど歩数が減少していました。
安全の観点から、棚の下段に重量物、よく使うものは、中段といった適正配分も有効です。

職場環境を維持する仕組みを作る

断捨離を行って、モノが少なりなり、適正配置になってもその状態が維持されなければ意味がありません。職場としても定期的に断捨離をする日、時間を決めておくことです。また、方法もルール化しておきます。例えば、
① 場所ごとに管理者を決める
② モノ毎に置き場を指定席化する
③ モノの保管期間の設定する 
製品の引き取りが悪い、余った材料や部品がたまるなどの理由で、モノは直ぐに増えます。特に、製品や顧客の支給品など、職場サイドで捨てることを判断できないモノは困りものです。
① 毎週、毎月など定期的に保管しているモノを見直し、所有者の判断を仰ぐ。指示なきものは、例えば「3か月で捨てる」と通告する。
② 事前に製品や余剰材料、部品の保管期限を決めておく。期限が過ぎたら、「捨てる」「保管料を徴収する」等の処置をきめておく。そんな対策が、必要でしょう


人生を変える断捨離

まとめ

職場の断捨離(整理・整頓)には、3つの目的があります。
1)探す時間をなくす
2)作業を速くできるようにする
3)職場を安全にする
これらが、達成された結果、品質が向上する、職場がきれいになるなどの効果も生まれます。
「家庭の断捨離」と「職場の断捨離」の決定的違いは、目的の違いです。実行は、狭い範囲を徹底的に断捨離し、範囲を広げていくことがコツです。

参考記事:労働生産性を確実に向上させる5つのステップ(製造編)

生産性は、探す時間を省くと上がる。Googleもアマゾンも「探すビジネス」で成功

この記事を書いている人 - WRITER -
長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。
スポンサーリンク




スポンサーリンク




Copyright© 改革志向のおっさんブログ , 2021 All Rights Reserved.