「ゼロベース思考」で考える「行き詰った状況」からの脱出法
「ゼロベース思考」で考える「行き詰った状況」からの脱出法
「ゼロベース思考」で暗黙の「前提」を崩す
・行き詰った事業やプロジェクト
・行き詰った職場改革
・何度やってもうまくいかない取り組み
そんな「行き詰った」ときは、考え方を変えることです。その一つが「セロベース思考」です。ゼロベース思考とは、今まで持っている前提知識や思い込みを一旦リセット(ゼロ)にして、基礎(ベース)がない状態から物事を考えることです。赤字続きの事業、行き詰った開発、何度やってもうまくいなかい職場改革を打破するのが、セロベース思考です。
問題を解決しようとしても進まない、改善・改革案が出ないのは、思考の中に「前提」が存在しているからです。その「前提」をゼロにする「ゼロベース思考」で解決案を考えることで、行き詰った状況を突破できます。やることに躊躇していたことが、出来るようになります。「ゼロベース思考」には、以下の3つのポイントがあります。
1)問題を他人の視点で考える
2)現在に至った過去の情報を一旦忘れる
3)現在に至るスタート地点に戻る
「ゼロベース」といいますが、全く情報なしに考えるという意味ではありません。問題解決に当たって、暗黙の内に「前提」となっていることを「ゼロ」にすることです。この3つのポイントは、「前提」を崩すポイントです。「ゼロベース思考」で前提を崩せれば、解決案の幅が広がり、「行き詰った状況」から脱出することが期待できます。
問題を他人の視点で考える「セロベース思考」
直面している問題に対して、「前提」を持たない他人の視点で考えると、新鮮な解決策が浮かぶ可能性が高まります。
自分を第三者に見立てて考える
例えば、自分が坂本竜馬だったら、松下幸之助だったら、ホリエモンだったらと考えてみます。改革的なことをした人をモデルにしてみると面白い発想がでるかもしれません。行き詰った事業をもし有名経営コンサルタントの助言を求めたらと想像することもできます。
もし今の事業にGoogleが参入したら、もしAmazonが参入したらと考えるのも面白い発想ができるかもしれません。
インテル社が、メモリー半導体事業に行き詰り、「ゼロベース思考」の議論を創業者のアンディ・グローブとゴードン・ムーアがして、CPU半導体に軸足を移す話が、本で紹介されています。(アンドリュー・S・グローブ 著:「パラノイアだけが生き残る...」)
「我々がクビになって新しいCEOがきたら、どのような決断をするのだろうか?」
「そりゃ、もちろんメモリーチップ事業からの撤退だろうよ」
そんな会話の中からCPU事業への注力が始まったそうです。
パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのか
関係者の視点で考える
事業であれば、お客様の立場、納入業者の立場、役所など規制する立場などから直面している問題点を考えてみることです。「やらなくてはいけない」と思い込んでいることが、実は迷惑だったりしていることに気付くことがあります。
今、山間の古びた旅館にも人が行きます。(コロナ禍で、現在は状況が異なりますが)少し前までは、資金を投入して建て替えるか事業撤退しかないと経営者は考えていました。ところが、SNS等で直接お客様の声が聞けるようになり、経営方針を見直して成功した事例があります。お客様は、必ずしも立派な建物、料理を期待しておらず、何もない山の中のポツンと建つ旅館に興味をもつ人がいることがわかり、そんな人の視点で旅館を見直しました。
現在に至った過去の情報を一旦忘れる「ゼロベース思考」
もう一つの「前提」を崩す方法は、現在に至った経緯を一旦忘れることです。「忘れる」といっても、すべての過去というわけではありません。赤字続きの事業であれば、その事業における過去の投資や意思決定に使った情報をなかったことにするのです。何度やってもうまくいかなことに取り組んでいるのであれば、その取り組みの歴史をきれいさっぱり忘れた状態にして考え直すのです。
大きな努力や投資は、サンクコストの意識が働き、簡単に捨てることができません。これまでの努力や投資を「前提」として物事を考えてしまうので、解決策が縛られます。サンクコストの問題に対してP・ドラッカーのいう「体系的廃棄」が使えます。「体系的廃棄」とは、
① 今あるものを「ない」と仮定する
② いまでもそれを手に入れようとするか考える
③ 「手に入れなくてもいい」と判断したら即刻廃棄する
これは、事業という大きなものから、部屋の片隅においてある家具や家電まで適用できる考え方です。この言葉は、ある証券マンが、「値下がりした株式をどうするか考えるとき、この言葉がつかえますよ」と教えてくれました。値下がりした株を「今なら買う」と思えば手放さない、「今は買わない」と思えば手放すというのです。過去に買った株の損失を抱えこんで身動きできなくなっている人への名言だと言っていました。
「ゼロベース思考」で、現在に至るスタート地点に戻る
「ゼロベース思考」ですべてを消し去ると現在に至るスタート地点に戻れます。いわゆる「原点に戻る」ことです。そもそもこの事業は、「何のために始めたのか」「誰のために始めたのか」といった原点が、見えてきます。
ある老舗の企業の例です。この会社、創業を開始した場所に工場があり、高級な看板商品を製造しています。ところが、黒字ではあるものの決して生産性はよくありません。この工場をどうするか、長年経営陣が迷い続けていました。そんな時、80歳を超えリタイヤした2代目が、経営幹部達に声をかけました。
「創業者のおやじは、この地に工場を作ったのは、戦後ここに空き地があったから。高品質の鉄製品を作って、お客さんに喜んでもらうのが目的。どこでどう作るかは、現役が考えること」
そう言ってくれました。この会社は、会社名に地名が入り地元でも名の売れた会社です。だから、地元に本社と工場があることが、経営陣は暗黙の「前提」になっていました。創業者の原点は、GHQの調達部が驚くほどの品質で勝負することでした。結局、現役の幹部たちは、本社や工場をより効率的な場所に集約しました。
抱えている問題の原点は何かをゼロベース思考で考えると本質的な解決策がでてくることが期待できます。
まとめ
問題を解決しようとしても進まない、改善・改革案が出ないのは、思考の中に「前提」が存在しているからです。その「前提」をゼロにする「ゼロベース思考」で解決策を考えることで、行き詰った状況を突破できます。「ゼロベース思考」には、以下の3つのポイントがあります。
1)問題を他人の視点で考える
2)現在に至った過去の情報を一旦忘れる
3)現在に至るスタート地点に戻る
問題解決に当たって、暗黙の内に「前提」となっていることを「ゼロ」にすることです。