会社が儲からなのは、モノやサービスの価格が安過ぎるから
会社が儲からなのは、モノやサービスの価格が安過ぎるから
会社が儲からないのは、モノやサービスの値決めが悪いから
「売上が、じり貧で儲からない」
「忙しい割りには、儲からない」
そんな、低迷している会社が日本にあふれています。日本の赤字企業は、2020年で66.1%(東京商工リサーチ調べ)あります。
会社が儲からない理由は、いろいろです。その中で、最も大きいのが、
「モノやサービスの値決めが悪い」
ことです。簡単に言えば、値段が「安過ぎ」ということです。人件費が高い、生産性が悪い、原料が高いなど儲からない理由は沢山あります。しかし、モノやサービスを高く買っていただくお客様がいれば、儲けは出ます。他の問題をカバーしてくれます。
「高い値段を付ける」ことで儲かるのは誰にでもわかることです。しかし、これが出来ません。いや、出来ないと思い込んでいます。
バブル期以降(1995年位)入社した社員に聞くと
「消費税以外で値上げした経験がありません」
口をそろえて言います。多くの会社には、値上げのノウハウがないのです。拡販キャンペーンと言えば、「値下げ」か「おまけをつける」ことだと思い込んでいます。
世の中には、高級車、ブランドバッグ、豪華旅行、高級料理店(今は、コロナで止まっていますが)など高価格をものともせず儲かっている会社があります。それほど高いと思わないですが、「健康食品」や「水漏れ修理一律7000円」なども、実は結構高い価格です。それでも、盛況で儲かっています。
価格が高いがどうかは、そのコストに対してでも、ライバル商品の価格でもなく、
「お客様に受け入れていただけるかどうか」
で決まります。お客様が、対価を払う気になってもらえれば、適正価格です。
努力の方向を「より良いモノをより安く」から、「より良いモノをより高く」へ発想を転換する必要があります。高く売ることが、罪悪のように感じることから脱却することです。
一度、「より良いものをより安く」の発想から脱却すると、世の中の成功例が違って見えます。「高くても買ってもらえる」アイデアが生まれます。
儲からないのは、「より良いものをより高く」の発想がないから
「良いものをより安く」
これは、これまで日本企業が成功してきた王道でした。日本製の車や家電の快進撃は、高品質低価格が原動力でした。スーパーマーケットは、大量仕入れ安価大量販売により全盛を極めました。ところが、バブル崩壊後、この手法がうまくいかず儲かっていません。その後、車は低価格路線を取らなかったことで今も元気ですが、家電やスーパーマーケット、家電量販店は苦戦を強いられています。一方で、登場してきたのが、ダイソンなど高価格の家電です。コンビニの高級スイーツなどです。これらの企業は、
「良いものをより高く」
との発想で儲かっています。お客様には、そう言えませんので、
「少し高くても良いもの、便利なもの」
と思わせています。いや、そもそも購入者に値段を意識させていません。
「うちの業種では、そんなことが出来るか!」
「ブランド力もない自社にそんなことは無理」
多くの方が、そう思われるでしょう。私もそう思っていました。ところが、ご紹介するような例を見つけ、どこでも儲かる高価格戦略は見つかるのではと思うようになったので紹介します。
私の勤務先に分析試験部門があり、企業や大学、役所から分析や試験の依頼を受けています。このビジネスは、典型的なB to B(組織対組織)で、お客様が衝動買いや情緒買いをしないシビアな世界です。お客様から厳しい値段要求があり儲かるどころか、年によっては赤字に転落する儲からない部門です。ところが、そんな中でも長年コンスタントに高収益案件を受注し続ける営業マンがいました。その営業マンに話を聞いてみると、彼のモットーは、
「高く売ること」
です。そのためには、
「懐にお金を持っているお客様に、お金があるうちに訪問すること」
といいます。彼は、年度始めの4,5月盛んに顧客訪問をします。お客様の懐にお金(予算)を持っている時期に商談をしに行きます。他の時期は、それほど忙しそうではありません。もう一度、彼が忙しくなるのは、年末から年始です。それは、お客様である大企業や大学において、翌年度の予算を作る時期だからです。彼は、自社の技術をストレートに売り込むのではなく、
「自社の分析や試験によって何かできることがありませんか」
とお客様に相談に行きます。お客様の翌年度の活動計画や予算を聞き出し、そこに自社のモノやサービス価格を織り込んでもらいます。時には、お客様の予算獲得に資料作成などで協力します。
そして4、5月になり、お客様が予算を執行するころ、年末年始に提示した分析試験費用を少しだけ値引いて受注していました。お客様は予算より少し安く発注でき、彼は受注を獲得し、会社は儲かり皆ハッピ―な気分になれます。
大方の分析試験予算の使い道が確定した夏以降、企業や大学、役所に行ってもお客様には金がありません。それでも受注しようとすると無理難題を押し付けられた上、安い金額しかもらえず儲からない商売となります。
彼は、顧客が出せる金額を常に意識しています。懐に金のありそうなお客様を「高価格」で攻めます。お客様の懐に金がなさそうなら、懐に金が入る方法をアドバイスしています。分析試験で得られるメリットがいかに大きいかを訴え、企業や大学関係者の予算獲得のための企画書も作ります。時には、国や自治体からの補助金のもらい方をアドバイスし申請書まで用意します。彼のモットーは、「高く売ること」ですが、実際は「顧客中心」の活動そのものです。高く売ることは、高いと感じさせない付加価値をお客様に感じてもらえることです。
値下げで儲けるには、圧倒的な販売数量増が必要
かつてマクドナルドやヤマダ電機が、大幅値下げで儲けたことがあります。皮肉なことにこれに対抗してライバルたちも値下げを仕掛けました。あらゆるところで、この現象が起き日本全体がデフレです。
デフレの時代、値下げ戦略は有効に思えますし、生き残るにはライバルに対抗する値下げが必須に感じます。
先ほど上げた、分析試験で失敗した経験を紹介します。(数字は、簡単化するように変えています)その当時、単価5万円の試験サービスを月100件ほど処理していました。売上500万円。固定費100万円(1件当たり1万円)変動的人件費は、300万円(1件あたり3万円)光熱費などの変動費は、ほとんどゼロ。つまり、売上500万円で100万円儲かっていました。
これを20%値下げしました。数量は30%増えて130件の受注、売上も増えて520万円で喜んだのですが、計算すると儲けは70%減の30万円です。内容は、固定費100万円は変わらず。人件費は1件あたり3万円ですので、390万円。儲けは、30万円(=520万-100万-390万)となります。
計算すると分かりますが、変動費(変動的人件費を含めて)が60%だと、20%の値下げで同じ利益を確保するには、2倍売上数量を増やす必要があります。30%値下げなら3倍の販売数量増が必要です。
マクドナルドが210円のハンバーガーを100円で売った時は、18倍の数量増であったとの記録があります。(1994年)その後、何度も値下げキャンペーンがされましたが、こんな数量増はなく、価格戦略は大きく変更されました。
値下げで儲かるには、値下げでよほど販売数量が増えるか、固定費比率が高い業種だけです。儲けるには、「どんなモノならいくらまで払っていただけるか」を見つけることが、やはり有効です。
良い値決め 悪い値決め きちんと儲けるためのプライシング戦略 (日経ビジネス人文庫)
まとめ
収益低下に直面している会社の多くは、モノやサービスの価格が低過ぎることが原因です。値下げ作戦では、値下げで大幅な販売数量増にならない限り儲けは増えません。「より良いモノをより安く」から「よい良いものをより高く」売る発想に転換することが必要です。お客様が、「どんなモノならいくらまで払っていただけるか」を見極めて、顧客対応し値決めをすることが儲けに繋がります。
参考記事:歴史的に見て、儲かり続けている5つの普遍ビジネスモデル
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