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「やる気」の出る職場は、従業員満足度ではなく、従業員幸福度を上げてつくる

2021/09/21
 
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

「やる気」の出る職場は、従業員満足度ではなく、従業員幸福度を上げてつくる

 

「やる気」の出る職場は、従業員満足度を上げてもつくれない

「従業員満足度を上げて『やる気』を出させる」
「従業員満足度を上げれば『退職者』が減らせる」
「働き方改革で、従業員満足度を上げる」
従業員満足度(ESEmployee Satisfactionは、従来こう理解されていました。
では、ESを上げるには、
1)職場の環境を整備する
2)給与や地位を向上させる
3)労働条件や負荷を改善する
などの対策が効果的と言われます。ところが、これだけでは社員の「やる気」を出させたり「退職者」を減らしたりはできません。

私のいた職場で、数年前から職場環境の整備として居室やトイレのリニューアルに取り組みました。残業禁止日を設け、無理やり労働時間の削減をしました。オフィスの環境整備は、当初喜ばれたのですが、今では「当たり前」になっています。残業時間の削減も当初は好評でしたが、しばらくすると「残業代が減った」と必ずしも好評ではありません。

世の中には、もっと綺麗なオフィスがあります。残業が無くても、もっと給料のいい会社があります。やった対策の効果は、一過性でした。ES調査における職場環境という項目のポイントは、確実に上がりましたが、「やる気」や「退職率」という点では、あまり変化がありませんでした。従来のESを向上させるために職場環境や労働条件を改善しても、その満足度は長続きしません。もっと長期的な満足どを改善をする必要があることに気付きました。

こんな、問題点に対しての答えの一つが、「従業員幸福度」(EH=Employee Happiness)という指標です。従業員個人が仕事に対してどの程度やりがいや喜びを感じているかに重点を置き、職場環境や労働条件といったES指標のみならず、従業員の「主観的指標」を考慮に入れて、従業員の幸福度を測ろうというものです。以下、従業員幸福度(EH)を上げることにより、「やる気」を上げ、「退職者」を減らすことができることを書きます。(なお、この記事は、前野隆司他著「幸福学×経済学」内外出版を参考にしています)


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幸福は2種類ある。「従業員幸福度」は、長期でみる

幸福は、2種類あります。短期的な幸福と長期的な幸福です。米国などで確立している「幸福学」によれば、前者は、「Happiness」、後者は「Well-being」ということで区別されています。目指すのは、Well-beingの方の幸福です。(従業員幸福度を以後、HPで表しますが、あくまでWell-beingです.)

従来、従業員満足度(ES)で問題にされた職場環境や給与、労働条件は、Happinessです。おいしいものを食べて「幸せだ」と感じるのと同じです。一過性で、すぐにその幸せに慣れてしまいます。いくら環境や給料を改善しても「もっといい会社がある」という相対的なものです。一方、長続きする幸せは、安全、健康、信頼関係、心などが良好である場合です。究極は、「自分の人生に満足しているか」ということになります。「従業員幸福度」は、この長期の幸福度です。

 

「従業員幸福度」の高い会社は業績が良い

まだ「従業員幸福度」という尺度での統計がありませんが、「働きがい」という幸福度での企業ランキングがありましたので紹介します。Great Place to Work Institute JapanGPTWジャパン)「2020年版日本における『働きかいのある会社』ランキング155社

 このランキングで上位に紹介されている会社は、業績が良いばかりでなく、驚くほど家族的な雰囲気を持っています。その会社の社員ではありませんので、内部までは分かりませんが、掲載されている写真やインタビューを聞く限り、かなり「従業員幸福度」は高いようです。

海外の調査ですが(Glassdoor社の研究)、職場での満足度の高い会社は株価上昇率が市場平均を大きく上回り、満足度の低い会社は市場平均を下回っているという結果です。従業員の幸福度が上がることによって、モチベーションの上昇とともに創造性や生産性が向上するため、会社の業績も上がっていくのではないかと考えられています。これらから「従業員幸福度」は、会社の業績に影響すると考えら始めています。

感覚的にも、業績と「やる気」は比例し、「やる気」は、会社だけでなく個人的な幸福が大きく影響していると思います。体調が気になって「仕事をしたくない」とか、「家族の問題」で仕事どころではない状況は、誰しも経験するところです。

 

 「従業員幸福度」を決める要因

「幸福学」では、人の「幸せ度」は、4つに因子に分類できると言います。その4つは、
1)自己実現と成長の「やってみよう!」因子
2)つながりと感謝の「ありがとう!」因子
3)楽観と前向きの「なんとかなる!」因子
4)独立と自分らしさの「あなたらしく!」因子です。
これは、長期的な幸福についてアンケートを取り、クラスター分析によって得られてた結果です。(前野隆司他著「幸福学×経済学」より)

それぞれの因子について、ポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかで、幸福感の差が出ます。
たとえば、「やってみよう!」をネガティブに捉えれば、「やる気がない」と言うことです。一方、ポジティブに捉えれば、「やりたいことをやっている」となります。同様に、「なんとかなる!」では、「なんともならい」と悲観するか、「なんでもなんとかなる」と楽観視して幸せ気分になります。

会社や家庭にある様々な問題についてこの4つの因子をポジティブ側にできれば、全体として「幸福度」が上がります。

 「従業員幸福度」を上げる方法

「従業員幸福度」は、仕事や労働環境への満足などの部分的なものではなく、仕事を超えた私生活も含めて、その個人の人生全体の幸福を指しています。つまり、人生において幸せを感じている人こそ、企業の戦力になるということです。

これを測り、これを改善する方法が、コミュニケーションです。直接会話をする、アンケートを取るなど方法はありますが、人と人とが繋がることが重要です。この先は、「心理学」の分野になりますが、方法は話しを聞くことになります。(「コーチング」はこの手法です。)

残念ながら今の職場では、公私混同をどんどん排除していく傾向があります。うっかり、「彼氏(彼女)できた?」なんて言えません。ハラスメントを気にして会話をしなくなり、コロナ禍もあって飲みに誘うこともできません。どんどん人間関係が薄くなる傾向にあります。

しかし、リモート会議の前後に声を掛ける、チャットを使うなど、気持ちを知りコミュニケーションを取る方法はあります。この際、幸福の4つの因子のレベルを確認してみてください。自分の気持ちの課題、部下の気持ちの課題が、わかります。

健康や家族問題で「幸福度」が落ちていれば、まずそこから修正することです。「退職願い」を受理したとき、はじめて本人が介護の問題で苦しんでいた。職場の異性関係で悩んでいたなど、私的なこととされていることが仕事に影響しています。従来は、私的なこととして、表にでない「幸福度」について避けることは賢明ではありません。私的と言われた課題について、様々な形で知り職場で支援していくことが「従業員幸福度」を高めます。

 

まとめ

従来言われていた「従業員満足度」を向上させても、社員の「やる気」や「退職」は、改善しない。「従業員幸福度」を向上させる必要がある。幸福には、短期と長期があり、長期であるWell-beingを高めること。このためには、会社と私生活両面で幸福度を上げること。従業員幸福度が上がれば、社員の「やる気」や効率など向上が期待できる。

参考記事:もしかしたら「チャンス」かも、「無能な上司」に当たった時の対処法

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