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怪しい「ラーニングピラミッド」の「学習定着率」と、学習方法の多様性

 
ラーニングピラミッドについて考える人のイラスト
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長年、大手鉄鋼会社及び関連企業、米国鉄鋼会社に勤務。仕事のテーマは、一貫して生産性の向上。生産部門、開発部門、管理部門、経営部門において活動。何事につけても「改革しよう」が、口癖。日本経営士会会員。 趣味:市民レベルのレガッタ、ゴルフ。

怪しい「ラーニングピラミッド」の「学習定着率」と、学習方法の多様性

 

怪しい「ラーニングピラミッド」の「学習定着率」

教育の研修で、「ラーニングピラミッド」なる図を見せられて、衝撃を受けたことがあります。「学習定着率」は、「講義で5%」、「読書で10%」とあり、一方で「他者に教える90%」です。その場では、「目から鱗」といった気持ちになったのですが、後になってこの数字に疑問がでてきました。「学生時代に受けた講義や読書がそんなに効率の悪い学習法だったのか」と思うと納得できません。下にラーニングピラミッドとして広まっている図を示します。(図:ウィキペディア「ラーニングピラミッド」より作成)

ラーニングピラミッド

そこで、ラーニングピラミッドの出典元と書かれていた「アメリカ国立訓練研究所」の文献を当たってみたのですが、数字の根拠となるものが見つけられませんでした。
その後、ネット等で調べると、ラーニングピラミッドについて、数値の根拠の欠如、出典の不明瞭といった点から、「信用できない」つまり嘘ということが、欧米では定着しているようです。
ラーニングピラミッドの図で示される、定着率の数字に信憑性はなさそうですが、アクティブラーニング(能動的な学習)の有効性をアピールするには分かり易く、今でも研修や講演で使用されているのが実態のようです。
ラーニングピラミッドの数値に信憑性はありませんが、学習のスタイルを知り、「能動的な学びの果的」を活用して、教育方法(学習方法)を考え選択するには、有用な図ではあります。
具体的には、ラーニングピラミッドの学習方法別の定着率について、学習する内容や学習する人のよって変ることを考慮した学習方法を選択することが重要ということです。
学習定着率に影響を与える因子は、いくつか考えることができます。例えば、以下のようなものです。
1)学習したい内容の性質
2)学習者のモチベーション
3)過去の学習体験
4)学習方法の選択
これらの要因によって、同じ学習方法でも効果は大きく変動します。例えば、体に覚えさせるスポーツでは、「やってみること」が効果的であり、モチベーションが低ければどんな学習法を行っても効果は期待できません。
この記事は、ラーニングピラミッドに示される学習方法に関して、その効果に影響を与える因子を考えます。

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 学習内容に合った学習方法の選択

学習する対象が「身体的技能」「認知的知識」かによって、ラーニングピラミッドの構造が当てはまる度合いが異なります。以下、具体例を挙げてみます。

スポーツ選手や職人教育の場合
スポーツや工芸などの身体的技能を中心とする教育では、ラーニングピラミッドの下層に位置する「実践」「教える」が極めて重要です。例えば、サッカー選手が戦術を理解するだけでなく、実際に走り、蹴り、ポジショニングを体得することで初めて技能が定着します。職人も、道具の使い方や素材の扱い方を「見て」「やって」「教える」ことで技術を磨いていきます。
このような分野では、ピラミッドの構造が比較的忠実に学習効果を反映していると考えられます。

学術研究者の場合
一方で、学術研究者のように高度な認知的作業を行う職種では、「読書」が非常に重要な学習手段となります。研究者は膨大な文献を読み、理論を比較し、仮説を構築する必要があります。ここでは、読書が単なる情報収集ではなく、思考の素材であり、知的対話の起点となるため、ピラミッド上層の学習でも深い定着が可能です。

モチベーションの影響

学習者のモチベーションが高い場合、ラーニングピラミッドの構造に関係なく、どの学習方法でも一定の効果が得られます。
合格を強く願う受験生は、講義や読書といった受動的学習でも高い集中力を発揮し、記憶の定着率を高めることができます。例えば、資格試験の参考書を繰り返し黙読するだけでも、強い目的意識がある場合には高い効果を発揮します。子どもが何かに興味を持ったときは、図鑑を見ているだけで「恐竜博士」や「鉄道博士」と呼ばれるような沢山のことを自然に覚えてしまうといったことは珍しくありません。
このように、モチベーションが高いときには、学習方法の選択よりも「学習への姿勢」が効果を左右します。

過去の学習体験の影響

学習者が過去に成功した学習方法があると、再びその方法を選択する傾向があります。そして、その方法が再び効果を発揮することも多いものです。
例えば、ある学習者が高校時代に「メモを取りながら読む」ことで成績が向上した経験がある場合、大学や社会人になっても同様の方法を使い続けるでしょう。成功体験が学習方法の選択に影響を与え、心理的な安心感と集中力を高めるためです。ただし、この場合、ラーニングピラミッドの「読書」が単なる黙読から、能動的読書に変化していることに注意する必要があります。
学習者が過去の成功した学習方法を再び使うのと同様に、指導者(教育者)が、過去の成功方法を使いたがることがあります。過去に成功したからと体罰による指導を現在に持ち込んだり、親が自分と同じ学習方法を子どもに押し付けたりといったことがあります。指導者は、時代による状況の変化、学習者の個人差などを見極めて、学習方法を選択することが重要です。

 

学習方法の違いによる学習効果の変化

ピラミッド上位にある学習効果が低いと言われる学習法でも、工夫次第で効果は大きく異なります。例えば、同じ「読書」でも、やり方によって学習効果は大きく異なります。「黙読」は静かに読むことで集中しやすく、速読も可能です。しかし、記憶に残りにくいとことがあります。
「音読」は聴覚と発話を使うため、記憶の定着が高まる傾向があります。語学学習では、推奨されています。
「メモを取りながら読む」ことは、情報の整理と再構成が行われ、理解が深まります。
このように、学習方法の工夫によって、ピラミッドの上層にある学習でも、下層に近い効果を得ることが可能です。

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まとめ

各種学習方法の有効性を示すために「ラーニングピラミッド」が活用されることがあります。このピラミッドに示される各種学習方法による学習定着率は、信憑性が低く「傾向を示す」モデルとすべきです。
同じ学習方法でも、学習定着率は、学習者や学習内容によって変わります。学習効果は、
1)学習内容の性質
2)学習者のモチベーション
3)過去の成功体験
4)学習方法の工夫
などによって変化します。
教育者は、学習者のモチベーションや過去の学習体験を丁寧に把握し、それに応じた学習方法を提案することで、より高い学習効果を引き出すことが期待できます。

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