「友達が少なくても」「親友がいなくて」も「孤独感」を生まない人間関係の心得
「友達が少なくても」「親友がいなくて」も「孤独感」を生まない人間関係の心得
「孤独」と「孤独感」は違う。孤独感を生まない人間関係の心得
「3人で仲良く遊びに行っていたのに、最近他の2人だけで行動しているようだ」
「定年退職後、家で妻に煙たがられている」
そんな時、「自分は孤独だ」とか、「自分には友達がいない」と感じるものです。
核家族が進んだ現代、一人世帯、二人世帯が多くなり、一人暮らしの若者やリタイヤした高齢者の中には、「孤独」と感じる人が少なくありません。
ここで重要なのは、「孤独」そのものと「孤独感」は同じではないという点です。孤独とは物理的に一人でいる状態を指しますが、孤独感は、周囲に人がいるにもかかわらず「自分は受け入れられていない」「価値観が合わない」といった心理的な疎外感から生まれる感情です。要するに、「孤独感」とは気持ちの問題であり、実体がないものです。
その著書「声に出して読みたい日本語」(草思社)などで知られる教育学者の斎藤孝氏によれば、「一人ぼっちの時に心に忍び寄る孤独感は、どんなケースも同じようなものである」と言います。ちなみに失恋の歌、小説、ドラマなどの多くに出てくる主人公の孤独感には、共通したパターンがあると言います。
実際、日常的に接する人が少なくても、SNSを使いこなすデジタルリテラシーの高い高齢者は、孤独感をあまり抱かないといわれています。これは、物理的な繋がりが少なくても、自分のペースで交流できる場を持ち、心理的な満足感を得ているためと考えられます。一方で、毎日多くの人と接している人でも、人間関係の距離感を誤ると、かえって孤独感が強まることがあります。距離が近すぎれば依存や摩擦が生まれ、遠すぎれば疎外感が生まれるためです。
ところで、孤独には本来、価値があります。一人で過ごす時間は、思考を深めたり、感情を整理したり、自分の内側にある能力を育てたりするための大切な機会です。創造性や判断力、感受性は、他者との関係だけでなく、静かな孤独の時間の中でこそ育まれることが多いのです。孤独を「欠落」ではなく「成長のための時間」と捉えることで、孤独そのものへの恐れは大きく減少します。
このように考えると、私たちが大切にすべきなのは「孤独を避けること」ではなく、孤独感を生まない関係性のあり方です。そのためには、いくつかの視点が重要になります。
1)友達の人数が少ないことを気にしないこと
2)人間関係には適度な距離があることを理解すること
3)人間関係や友達の数は変化するのが当たり前だと受け入れること
これらの視点を持つことで、孤独そのものを恐れる必要はなくなります。むしろ、自分に合った距離感で人とつながり、孤独の価値を理解し、必要なときには小さな行動を積み重ねることで、孤独感を抱かずに充実した人間関係と豊かな内面を育てることができます。孤独を避けるのではなく、孤独感を生まない生き方を選ぶことが、生き方のコツではないでしょうか。
広告
友達の人数が少ないことを気にしないこと
人間関係に生じる孤独感は、「親友と呼べる友達が欲しい」という欲求が背景にあります。また、若者やリタイヤした人に対して「なんでも相談できる友人を持ちなさい」などとアドバイスするネット記事や本があります。確かにそうですが、「自分には友人が少ない」、「親友がいない」と感じている人には、強いプレシャーとなります。
友達の人数が多かろうと、少なかろうと、自分らしくいられる関係の人がいたら、十分に満たされます。毎日誰かと顔を合わせることがないような山奥のぽつんと一軒家に住む人は、孤独であっても、それほど孤独感なく暮らしていることが、TV番組などで紹介されています。「友達が多くいなければいけない」「親友を持つべきだ」といったことを気にすることが、孤独感を生むことになることを理解すべきです。
人間関係には適度な距離があることを理解すること
心地よい距離感は人それぞれ異なります。無理に近づきすぎず、離れすぎず、自分にとって自然な距離を保つことが、関係の安定につながります。
人間関係の距離が近過ぎると、見なくてもいい相手の「欠点」「我がまま」「無理解」「無神経」などが見えてしまいます。恋人時代は、仲がよくても、結婚すれば違います。定年後の元サラリーマンが、家で夫婦一緒にいる時間が長くなり、互いに煩わしく思うのは、人間関係の距離が近過ぎるからでしょう。
孤独感から逃れようと、むやみに誰かに近づいたりすると、逆に孤独感が強まることもあります。人間関係には、程よい距離というものがあることを理解することです。
人間関係や友達の数は変化するのが当たり前だと受け入れること
ライフステージや価値観の変化に伴い、関係が変わるのは自然なことです。変化を否定せず、流れとして受け止めることで、孤独感は軽減されます。
学生時代は学生時代の人間関係があり、会社や組織で仕事をすれば、そこでの人間関係が生まれます。リタイヤすれば、会社や組織の人間関係は、自然になくなります。
「学生時代や社会人駆け出しの頃から現在まで続く親友を持っている」といった話が、マスコミ等で見聞きすることがありますが、これらの話は、例外と言った方がいいかも知れません。
よくあるのは、むしろ学生時代にことさら仲が良かったわけでもないのに、60歳を過ぎてから親しくなったといった話です。30代、40代では、互いに離れた場所で仕事をしていたり、その後の出世などで差がついたりで、何となく付き合いづらかったのが、互いにリタイヤしてしまうと、気軽に付き合うことができるようになったといったことです。
人間関係は、変化することがあたり前と捉えることが、孤独感から離れるのには重要です。
孤独感を減らすためには、理解だけでなく行動
孤独感を減らすためには、理解だけでなく行動が必要です。孤独感とは、気持ちの問題です。気持ちの問題とは、それを考え過ぎて、拘ることです。行動することで、その拘りから離れることが重要だとは、心理学の教えるところです。
行動といっても、新しい人間関係を作ったり、既存の関係を深めたりすることに拘る必要はありません。読書をしたり、SNSで自分の興味に合うコミュニティを覗いてみたり、日記を書いて自分の感情を整理したりすることも立派な行動です。外に向かう行動だけでなく、内側を整える行動も、孤独感を和らげる大切な手段になります。
友人にリタイヤ後、低山専門の登山を趣味にした人がいます。友人とワイワイするのが苦手な人で、一人で山に登っています。本人は、「孤独な登山ではなく、単独登山」と言っています。山に登れば、道中会う人は、「こんにちは」と挨拶をします。そんな挨拶だけで、一人ボッチで登っているとう孤独感はなく、「皆で登っている」との感覚が得られるとのことです。
広告

文庫 声に出して読みたい日本語 1 (草思社文庫 さ 1-1)
まとめ
孤独と孤独感は、異なります。
孤独感で不安を覚えることを避けるポイントがあります。それは、
1)友達の人数が少ないことを気にしないこと、
2)人間関係には適度な距離があることを理解すること、
3)人間関係や友達の数は変化するのが当たり前だと受け入れること。
これらの視点を持つことで、孤独そのものを恐れず、自分に合った距離感で人とつながり、孤独の価値を理解し、必要なときには小さな行動を積み重ねることで、孤独感を抱かずに充実した人間関係と豊かな内面を育てることができます。
