「あるべき姿」を実現する「バックキャスティング」を使う3つのステップ
「あるべき姿」を実現する「バックキャスティング」を使う3つのステップ
「バックキャスティング」を使う3つのステップ
「2030年CO2排出ゼロ!」
「3年後の営業利益50%増!」
「今年度末の労働生産性30%増!」
華々しい目標は、世間で歓迎されます。しかい、実行する当事者からみると
「とても達成できると思えない」
「どうせ社長の株主向けアピール」
そんな不満が出そうな話です。しかし、そんな目標を出す背景は、抜きさしならぬ環境問題と世論。厳しい経営で突破口を切り開きたいという危機感があります。実現できそうなことを積み上げても、危機を乗り越えれられないという現実があり、「あるべき姿」としての目標が立てられたのです。
目標を達成するには、「改善」ではなく「改革」が必要です。達成困難と思えるような高い目標を実現するには、「バックキャスティング」という思考法があります。未来の「あるべき姿」「ありたい姿」から、現在に接続する「やり方」を考える方法です。
「バックキャスティング」という思考法
「バックキャスティング」は、環境保護の分野から広まった考え方です。自然保護やCO2ゼロを訴えても既存技術では実現不可能ということで、産業界では相手にされませんでした。しかし、環境問題が深刻化するにつれ、「未来のあるべき姿」を共有し、その達成のために革新的な技術や事業を進めていこうとの発想が生れ、提唱されるようになりました。
目標を先に決めて、そこに至る方法を後から計画することは、これまでにもなされています。米国大統領のジョン・F・ケネディが、「10年以内に人類が月面に行き、無事に戻って来る」と宣言したことに始まる、アポロ計画は、今でいうところの「バックキャスティング」の考え方で作られました。膨大な予算と人員を投入し、1人乗り宇宙船、2人乗り宇宙船、ドッキング、3人乗り宇宙船、月周回と地球帰還、月面着陸と各ステップをこなし、1969年にケネディの宣言した目標を達成しました。
地球環境問題や宇宙開発のような巨大なプロジェクトでなくても、企業の事業計画、個人の目標計画でも「バックキャスティング」の考え方は適用できます。
バックキャスティングで考える計画には、3つのステップ
1)目標と現状のギャップから課題を見つける
2)課題に対する実行案を考える
3)個々の実行案を合わせて目標達成を見通す
があります。バックキャスティングは、現状にこだわらず到達点にいくための具体的行動を決められることが大きなメリットです。自由な発想で目標達成の取り組むことがポイントです。ただし未知のやり方を使うことも多く、途中で頓挫してしまうなど失敗のリスクもあります。上記の3つのステップは、これらを考慮した私の実践した「バックキャスティング」の活用法です。
目標と現状のギャップから課題を見つける
まず「目標」である将来の「あるべき姿」(To Be)を見定めて、それと現状(As Is)を対比することで、取り組むべき課題を明確にします。目標と現状の間には、差があります。この差を、改善活動の教科書では、「ギャップ」と呼びます。このギャップは、「問題」ですが、そのうち取り組むことを「課題」といいます。従い、課題とは、問題としての差を埋めるためのアクションを必要としていることです。
例えば、大学合格を目指す受験生が、合格レベルの学力と現状の学力を比較したとします。その差がギャップであり、問題です。詳しくみると、学科によってギャップの大きさが違います。英語の学力が絶対的に不足しています。これをレベルアップさせることが課題です。現状のままでは、少々勉強時間を増やしても追いつけない。そこで、バックキャスティング的発想が必要です。英語学力のギャップを課題としてとらえ、達成のための方法を探ることになります。
参考記事:「問題と課題の違い」スライド講義
課題に対する実行案を考える
課題に対する実行案を考えるのは、苦痛でもありますが、楽しいものでもあります。チャレンジする精神が重要です。
「なぜ課題解決が困難なのか」
と考えることです。課題解決が困難なのは、そこに意識・無意識の「前提」が潜んでいるからです。企業の課題であれば、人的壁、金銭的壁、法律、習慣や慣習などです。
「なぜ、できない?」「なぜ、これが使えない?」「なぜ、増やせない?」等々
課題に対して、「なぜ」をどんどん投げかけてみるといかに「前提」に縛れているか分かります。
先ほどの受験生の例では、暗黙の内に「自分は、この程度」といった精神的な前提。地方にいるから、金銭的負担をかけらえないなどの「前提」があります。「自分は、この程度」といった精神的に限界を作る「前提」が、成長の壁になっていることがあります。前提を覆すような挑戦する精神があれば、ネットの動画活用、塾の特別講座、個人教授、短期留学、合宿など課題解決法が広がります。
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個々の解決策を合わせて目標達成を見通す
目標達成に向けて課題を見つけ、その解決策を出した後に、目標達成ができるか見通すことが重要です。大きなプロジェクトでは、これが仕事の中心といえます。
先ほどの受験生の例では、「英語が大幅アップして、数学は現状維持、国語は5%アップで合格ライン到達」と見通すことです。
自分が関わった実例で「年度末までに労働生産性を30%アップ」と目標を掲げて10人ほどの事務処理チームで活動したことがあります。課題として能率(作業スピードが遅い)、資料の段取り時間がかかる、会議や移動などムダ時間が多いことがあげられました。その解決策が以下のようなものでした。
① 作業が遅い新人の教育・訓練を実施する(2人が20%能率アップ)
② 資料を整理・整頓し、極力電子化する(全員10%能率アップ)
③ 会議の削減。社内外のリモート会議拡大。(5人の間接労働時間の大幅削減)
チーム労働生産性=総作業量/総労働時間(間接労働時間+直接労働時間)
でみると、総作業量は同じであれば、直接作業時間が減り、間接労働時間が減り、結果労働生産性が上がります。①から③まで達成した時のチーム労働生産性を予想します。具体的には、各対策のチーム労働生産性に対する寄与率を合計します。
この手順で計算して、目標達成が見込めるのか、もし見込めないなら、新たな対策を考える必要があります。あるいは、実行しながら後で考えるのも有りです。この例では、実行しながら新たな対策を考え1年後には、目標を達成しました。
まとめ
達成困難と思えるような高い目標を実現するには、「バックキャスティング」という思考法があります。未来の「あるべき姿」「ありたい姿」から、現在に接続する「やり方」を考える方法です。
バックキャスティングで考える計画には、3つのステップ
1)目標と現状のギャップから課題を見つける
2)課題に対する実行案を考える
3)個々の実行案を合わせて目標達成を見通す
があります。バックキャスティングは、現状にこだわらず到達点にいくための具体的行動を決められることが大きなメリットです。自由な発想で目標達成の取り組むことがポイントです。ただし未知のやり方をとることも多く、途中で頓挫してしまうなど失敗のリスクもあります。