「生産管理」にみる「マネジメント」と「コントロール」の違い
「生産管理」にみる「マネジメント」と「コントロール」の違い
「生産管理」にみる「マネジメント」と「コントロール」の違い
製造工場では、様々な「管理」と言う言葉が使われています。例えば、「生産管理」「技術管理」「製造管理」「品質管理」「在庫管理」「品質管理」「原価管理」等々です。とにかく「○○管理」と言う言葉氾濫し、「○○管理部」「△△管理室」「××管理課」などと、会社の組織名としても良く使われています。しかし、どうも漠然としていて、外部の人や異動してきた人には、一体何をやる部署なのかよくわかりません。学生や転職向けのガイドブックには、よく
「生産管理の仕事は、工場の『なんでも屋』」
と書いてあり、体験談まで載っている記事を読んだことがあります。
日本語の「管理」という言葉は、英語のマネジメント(Managements)に対応する言葉として使われていますが、実際には2つの意味があります。
一つ目が、「マネジメント」であり、もう一つが「コントロール」です。日本語で「管理」という言葉を使うとき、マネジメントなのか、コントロールなのかを注意する必要があります。
例えば、「経営管理」はマネジメント(”business management” “business administration”)の意味合いが強く、「品質管理」はコントロール(“quality control”)の意味合いです。
「マネジメント」と「コントロール」の違い
日本で使われている「管理」という言葉を英語に当てはめると“manage”や、”control”の意味になります。ちなみにウエブスター辞典で“manage”を引くと
“be in charge of (a company, establishment, or undertaking)”
“to succeed in doing or dealing with something, especially something difficult”
と載っています。「何か困難なことを遂行すること」を意味しています。また、”control”については、
“the power to influence or direct people’s behavior or the course of events”
「人々の行動や出来事に影響を与えたり方向付けたりする力」とあります。
マネジメントとコントロールを工場における「生産管理」に当てはめると、
「マネジメント」とは、
「目標を定める、必要な資源を集め・活用して、その目標を実現する行為」
「コントロール」とは、
「与えられた条件の下、様々な値を目標とする範囲に収める行為」
と考えることができます。日本で「生産管理」といえば、納期管理、在庫管理、品質管理、コスト管理など、「コントロール」が中心になっています。
工場におけるマネジメント
「工場長」「製造部長」などと呼ばれる製造工場の責任者が行うマネジメントは、経営資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」を活用して、企業利益の利益と価値の最大化を図ることです。このためには、リーダーシップを発揮し、計画、組織、指示、業績評価などを行う必要があります。マネジメントは、長期的なビジョンや戦略の策定、リソースの配置、チームの構築など、広範な業務を包括しています。
「どんなモノ」を「どんな組織(人員配置)」で、「どんな工程」で、「どうコントロールして」作るかといった「マネジメント」を「生産管理」として、実施していくことが大切になります。
会社によっては、「マネジメント」を製造工場の責任者に与えていない、或いは責任者自信が認識していないことがあります。
例えば、生産量目標を達成するのにどうしても人手不足。これを補うのに、社内から人を配置転換することや、新たに人を雇う、外注するといったことができない状態の工場です。
私は、工場の管理職になった若手に
「管理職になったら、ヒトとカネをうまく使いなさい。その権限が与えられているのですから」
と言っていました。経営資源のうち、モノや情報は、平社員でも使えます。うまく使うことができたから、管理職に昇格したのでしょう。ところが、ヒトとカネを集め、利用することは、管理職になって始めてできることです。(勿論、権限を大幅に委譲した会社ならできますが。)
工場におけるコントロール
工場におけるコントロールは、定められた基準や目標に対する進捗状況を監視し、調整するプロセスです。これには、目標達成度の測定、成果物の品質管理、予算の管理、スケジュールの管理などが含まれます。コントロールは、現実の生産が計画に合致するよう制御するために行われます。コントロールは計画の実行と進捗の監視を担当しています。典型的なコントロールの手法が、PDCAサイクルです。
「品質管理」「在庫管理」「品質管理」「原価管理」は、典型的な「コントロール」としての管理です。これらコントロールでは、
1)PDCAサイクルの活用
2)作業標準(マニュアルや規程)の作成と遵守
3)異常時の対応
が重要になります。
例えば、品質管理では、目標の品質基準と許容範囲を決め(P)、生産し(D)、検査し(C)、許容範囲から外れていれば修正(A)します。この時、マニュアルや規程が、バラつきを防止するのに絶対必要です。また、異常時における対応をして、目標からのずれを修正することを忘れてはいけません。
コスト、在庫管理も同様にPDCAを使ってコントロールすることが有効です。しかし、品質管理ほど、マニュアルや異常時の対応策が用意されていない工場が多いようです。
まとめ
日本で使われている「管理」という言葉には、「マネジメント」と「コントロール」という2つの意味があります。工場における「生産管理」では、
「マネジメント」:目標を定め、必要な資源を集め・活用して、その目標を実現する行為
「コントロール」:与えられた条件の下、様々な値を目標とする範囲に収める行為
と考えることができます。日本で「生産管理」といえば、「コントロール」が中心になっていることが多く、注意が必要です。